20世紀来の覇権大国である米国と、新興国・中国との対立が深まってきた。世界は再び冷戦期のような陣営に二分されるのか、懸念が高まっている。
ポンペオ米国務長官は先日の演説で、抜本的な政策の転換を唱えた。中国は豊かになれば、自由で友好的になる、と期待した歴代政権の関与政策は「失敗に終わった」と断じた。
総領事館の閉鎖、南シナ海での軍事力の誇示、高速通信規格をめぐる中国企業の排除……。最近のつばぜり合いは、外交、軍事、経済の各分野に広がる。
世界史で繰り返されてきた新旧勢力の衝突に向かうのか。国際社会の深い憂慮を、両国の指導者は真剣に考えるべきだ。
問題は主に、専制色を強める中国共産党政権にあるのは確かだ。新疆やチベットで少数民族の人権が抑圧され、香港の自由は奪われ、南シナ海での軍事拠点化が続いている。
既存の秩序に挑むような中国の行動を看過せず、法の支配と人権尊重を求めるのは当然だ。中国をどうすれば平和共存の道に導けるのか。その難題は今後も続くだろうが、少なくとも、かつての冷戦型の思考では答えを見いだせない。
米ソの東西両陣営が交わりを断って対峙(たいじ)した当時と違い、今の米中は深い相互依存の関係にある。08年のリーマン・ショックのように、国際的な経済危機を米中が協調で乗り切った蓄積もある。
なのにトランプ政権は、場当たり的な取引と、対決の演出の間で揺れ動くばかりだ。歴代の関与政策の功罪両面を踏まえ、めざすべき米中関係とは何かを描く姿勢が欠けている。
ポンペオ氏は演説で「新たな民主主義国家の同盟」づくりを示唆した。価値観を共有する国々で結束して中国に向き合うのは必要な手立てだろう。
ただ、その呼びかけに実効性を持たせたいならば、米国自身が国内外で民主主義の価値を体現せねばなるまい。
貿易や核軍縮、地球温暖化問題などでの自国第一主義を改め、国際協調の枠組みに立ち戻る。それがないままでは中国への要求も説得力を持てない。
ほとんどの国にとって、米国か中国かの陣営の選択は不可能な話だ。グローバル化した世界の安全保障と経済を考えれば、もはや力による対決は非現実的であり、協調による共存が望ましいのは自明のことだ。
日本は米国の密接な同盟国であるとともに、中国とは歴史的につながりの深い隣国である。アジア、そして世界の不安を和らげるためにも、米中の対立悪化を防ぐための固有の役割を、もっと意識すべきだろう。
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