論文に対する私的見解

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海水魚の飼育はマリンアクアリウムとして確立されてからある程度の歴史はあるものの、適切な飼育方法については未だに正確な統一見解となされていない、云わば不確定要素の多い分野であるとかなり以前から思っています。
当サイトでは今まで常識論とされていた幾つかの事項を観点を変え非合理的な内容 と立証した上で、合理的な見解を発信して参りましたが、過去の飼育関連について記された論文について、当方の飼育理論に適合しない項目を改めて記してみます。
ここで記す内容は約5年前に公開した当サイト「飼育雑記>白点病~発症させない無投薬飼育」と重複する内容が殆どではありますが、間違った情報によって結果を上手く残せなかった方、またはこれからマリンアクアリウムの飼育術向上を願う方達へ参考になればと思います。
 
①白点虫を水槽へ持ち込まない為にトリートメントは重要であり、新規導入個体は必ずトリートメント作業をおこない、発病の無い事を確認して水槽に導入する必要がある。このトリートメントはGFGを用いバケツ等の容器にて隔離の上トリートメントをおこない、換水を繰り返す事によって白点虫の全てが流されるので発症を抑制させる事が出来る。
 
Ans ⇒ GFGは海水の殺菌作用はあるものの、白点虫は死滅しない。
また、白点予防の一環としてのトリートメントは、一切効果が期待出来無い無駄な行為である。
この他、過去に掲載した「トリートメント(検疫)の重要性?」は下記URLからご確認下さい。 
 
②トリートメントと殺菌灯設置によって白点を発症させないことは可能である。
 
Ans ⇒ 幾らトリートメントを慎重におこなっても目視不可能な白点虫が魚体に付着したまま水槽内に混入してしまう。また殺菌灯は白点虫に直接の効果は期待できず、殺菌灯を設置してもその他の設備が確立されていなければ確実に発症する。
殺菌灯は感染症などの病原菌減退には効果が期待できる為、これに因って白点病発症の元となるする体力低下を軽減させることに対して有効である。
 
③何度も白点に罹り、その都度治療をおこなった個体は免疫力がつく。または免疫力を付ければ発症は抑えられる。
 
Ans ⇒ ③の理由として、同じ水槽の同居魚は発症しているものの、その個体は症状がみられないという事だけの様である。
先ず「免疫力」というこの言葉の意味合いは「体内に入ったウイルスや細菌、異物などから自分自身の体を守る力。低下すると多くの疾病を引き起こす。」と辞書には記されている。
白点病発症の対策として頻繁に使われている免疫力という言葉は、「自耐力を以って防御する」という意味合いである。白点病の発症原因は設備機能不適切による「水質の悪化」や同居魚からの「無言の威圧」によって体力が低下した個体が発症するものであり、そもそも「免疫力」という言葉は不適切な表現である。
ここでの原因は過去に発症した個体はただ単に先住者で水槽環境に順応していたもので、その他の同居魚は新参者で水槽環境や同居魚に順応せず、他魚からの無言の威圧(ストレス)によって体力が低下し白点病が発症したものと判断するのが妥当である。
 
④硫酸銅治療は白点原虫だけを死滅させ治療する方法であり、その他の処置として白点病が発症した水槽は魚を出し直ぐに掃除によって白点虫を洗い流す。
 
Ans ⇒ 銅の投入によって白点虫減退は多少期待出来ると思われるものの、発症に起因するその全ての死滅は不可能であり、銅投入による白点病の完治は銅の効果によって水槽内の雑菌を精錬、一時的に水質悪化が改善し、この効果に因って魚体の体調が回復した結果白点虫が離れていったものと考えた方が妥当である。
 
上記①~④の見解を有効手段と信用して実践した方は非常に多いのではないかと思います。
但し、その結果は実際どうだったでしょうか? 
 
 上記の内容はこの記述者が自ら生み出した見解として論文を公表した訳でなく、それ以前から一つの常識論と言われ続けていた事項を上記記述者が習っていただけに過ぎず、これを正攻法と判断したうえで実践していただけのものです。
他のでも自己発見でない上記と同様な記述を机上にて習っただけであろうと思われる内容を公開しているサイト等は多数存在し、その記述に習って実践したものの、記述通りに長期に亘って結果が継続できている者がどれだけいるのかと疑問に思った事が多々ありましたが、その殆どの方が一定期間経過のその後も発症を繰り返していることと思います。
私はこれまでに何人からも相談事項とて応じてきましたが、その記述内容全てが無効とまでは言わないものの、抜本改革されていない状態(設備機能が不充分)で再発している現状から、今まで正論と信じてきた上記①~④の知識は無かったものとして、「白点病~発症させない無投薬飼育」に記している事だけを参考にする様にアドバイスしたところ、今までの矛盾点が全て繋がったという個人アクアリストや水産試験場などの関係職員からも数多くのご意見を頂きました。
 
各々の飼育者が何を習って飼育していくのかは、各人の判断となりますが、スタートラインから進んでいく方向に因って成否が決まってしまうこの現状から、正しい方法論の見極めというものが問われる分野でもあります。