コロナ禍の日常を後世に伝える 自粛、アベノマスク…博物館が資料集める
2020年7月27日 13時50分
新型コロナウイルスの感染拡大で用いられたマスクやチラシなど身近な品々を集め、コロナ禍の日常や社会の様子を記録して後世に残す取り組みが、各地の博物館で広がっている。背景には、約100年前にスペイン風邪が流行した時代の生活を伝える資料がほとんど残っていないことへの反省がある。
祭りの中止を伝えるチラシやテークアウトのクーポン券、政府が配布した布マスク―。北海道浦幌町の町立博物館に並ぶ「資料」は、普段の生活で何げなく手にしている物ばかりだ。2月から地元住民に提供を呼び掛け、既に約200点が集まった。
「日々の動きが歴史になる。捨てられてしまわないうちにできるだけ多く集めたい」と学芸員の持田誠さん(47)は意気込む。「今後この時代を振り返るときに、物があれば客観的に検証できる」と話す。
大阪府吹田市立博物館では保健所から譲り受けたガウンやフェースシールド、薬局でマスクを買い求める人々の行列を収めた写真も収集。学芸員の五月女賢司さん(46)は「何が起こっていたかを残し、今の時代を知るすべを将来に提供したい」と語る。
国立国会図書館では、新型コロナ関連情報を扱った行政機関などのウェブサイトのデータを保存。早稲田大演劇博物館は、劇場や劇団に延期や中止になった公演のパンフレットや台本などの提供を呼び掛ける。
コロナ禍の資料を収集する山梨県立博物館学芸課長の森原明広さん(54)は「スペイン風邪の市民レベルの記録が残っていれば、現在の感染対策のヒントになったかもしれない」と指摘。「災害や疫病は繰り返し起きるが、意外とすぐに忘れられてはいないか。展示や特集で今の時代を振り返る機会をつくりたい」としている。
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