尖閣の緊張 日中対話を促進せねば
2020年7月27日 07時58分
沖縄県・尖閣諸島周辺での中国公船の活動が活発化し、日中間の緊張が高まっている。日本漁船を追尾するなどの挑発は厳に慎むべきだ。海域の平穏を維持するには、日本側の冷静な対応も必要だ。
海上保安庁によれば、尖閣諸島周辺の接続水域での中国海警局公船の航行は二十二日、四月中旬から連続百日に達した。二〇一二年の尖閣国有化後最長である。領海侵入も繰り返され、七月上旬には三十九時間超と過去最長の侵犯をした。
付近で操業する日本漁船を追う危険行為も繰り返している。五月には五千トン級の中国船が与那国島の漁船に数十メートルまで接近。海上保安庁の巡視船が急行し漁船を保護する事態になった。
その際、中国外務省は「中国の領海で違法操業をしていた」と漁船を非難した。最近は外交ルートを通じて日本側に漁船などを尖閣周辺に立ち入らせないよう要求したというが、受け入れ難い。政府が拒否したのは当然だ。
中国は、尖閣に対して少しずつ圧力を強めて日本の支配を崩す「サラミスライス戦術」を実行しているともされる。
近年は海保に相当する海警と軍との一体化も進めており、その実力を示そうとしている側面もあろう。しかし、そうした力を背にした挑発行為は日本国民に大きな脅威を与える。強く自制を求める。
日本側も冷静に対応する必要がある。中国公船の活動活発化に伴い、自民党の有志議員や国防議員連盟から、尖閣諸島での資源・環境調査や自衛隊の訓練実施により、日本の施政権を明確にするよう求める声が上がっている。無人の尖閣には、日本の行政官も民間人も上陸しないことで中国側への刺激を避けてきた経緯がある。その均衡を崩すのは早計過ぎる。
尖閣を行政区域とする石垣市が十月から、島の字名に「尖閣」を加える決定をしたことにも中国は反発している。自治体の判断とはいえ、慎重を期すべきだった。
双方が領有権の主張と示威行動を強めるばかりでは、緊張を解くことはできない。
一四年十一月、日中両政府は尖閣の緊張に対して「対話と協議を通じて情勢の悪化を防ぐ」など四項目で合意。直後に国有化後初の首脳会談を行い関係改善を確認した。
以降四年余にわたり、中国は尖閣周辺の活動を抑制していた。コロナ禍で習近平主席の国賓来日は延期されたが、日中は今こそ対話を重ね、双方の自制を信頼に結び付けるよう努めねばならない。
関連キーワード
PR情報