第二話 宝玉の行方
すみませーーーん!!
ご無沙汰しております。色々と忙しい日々を送っていた関係で更新をさぼってました。
私生活も少し落ち着いたので、これからは頑張れる予定?
カインはその勇者、聖騎士、賢者の三人の役職に耳を疑った。
勇者は初代エスフォート王国の国王であり、カインの師匠でもあるユウヤである。残り二人はカインの両親であった。
(もしかして誰かが召喚された? でもバイサス帝国で召喚されるなんてことは……。一度ヒナタに確認しないと)
「カイン、どうした?」
勢いよく立ち上がったカインに国王から声が掛かる。
「いえ、勇者、聖騎士、賢者は……普通では現れないはずです。もしかしたら――。一度確認させてください。あと、その三人が相手でしたら私がケルメス獣王国に赴きます」
カインは力強く言うが、国王は首を横に振る。
「未成年の兵役が認められないのは初代様からの決まり事じゃ。それを覆すわけにもいかん。いくらお主が強かろうがな」
「前線には立たない。回復魔法に専念するということではどうでしょう? それならば危険もないはず」
エリック公爵が助言を出す。実際にカイン一人で敵戦力をせん滅することは可能であるが、カインが前線に立ち、立場が発覚してしまうと、バイサス帝国とエスフォート王国の開戦に繋がりかねない。
エリック公爵の言葉に少し悩んだ国王であったが、渋々ながら許可を出す。
「わかった。カインの他に冒険者数名に声を掛けよう。もちろん、お主の監視も含めてな……。一人にしたら何しでかすかわからんからの」
国王の言葉に皆が苦笑する。実際にカインのやらかしたことは数えきれない。国内だけならまだしも、今回は他国での活動となる。
「わかりました。それでは私の方も準備を進めておきます」
いくつかの取り決めを行った後、解散となったカインはそのまま屋敷へと一度戻った後、服装を変える。
召喚の宝玉について教皇やヒナタに聞く必要があった。カインの恰好では教皇には簡単に会うことはできない。
マリンフォード教国で自由に動きまわるために、白いローブを羽織り、仮面をつけた。
「この恰好なら自由に動けるだろう」
中性的な声が部屋に響き渡る。
神の使徒という立場を利用しなければ、自由に教会本部を歩けないし教会騎士に追われるのは目に見えている。
だからこそ立場を利用し、教皇や聖女であるヒナタに会おうとした。
カインが転移した先は教会本部のすぐ近くだった。
実際にヒナタの部屋まで直接転移することもできたし、ヒナタは何も言わないだろうが神の使徒として堂々と赴くことにした。
ローブを頭まで被り、仮面をつけたカインに入り口を警備している教会騎士に緊張が走る。
「怪しい奴めっ! この先は許可がないと通すことはできん」
腰に下げている剣の柄に手を掛けた教会騎士に、もう一人の教会騎士が手で制す。
「も、もしかして……し、使徒様でしょうか……?」
緊張した騎士にカインはその言葉に小さく頷いた。
「やはり、少々お待ちくださいっ! すぐにご案内するように致します。おい、無礼のないように! この方は使徒様だぞっ」
「えっ!? 使徒様!?」
一人の衛兵は教会の中へ駆けていく。
すぐに司祭の一人が出迎えのために外に出てきた。
「使徒様、ようこそいらっしゃいました。教皇様も聖女様もおられますのでご案内いたします」
「……助かる」
カインから発せられる声に騎士は直立不動になり、カインが中に入るのを見送った。
司祭の後を歩くカインを見た教会関係者は、カインの姿を見ると全員が膝をついて頭を下げ、手を組んで祈り始める。
その姿にカインは顔を引きつらせるが、今の立場は神の使徒だということを自覚し、司祭の後をゆっくりと歩く。
「先だって教皇様と聖女様には伝令を走らせております。教皇様のお部屋でお会いになることになっております」
思った以上に簡単に通ることができたが、逆にカインは心配になる。
少しだけ豪華なローブに仮面をかぶった怪しい男をこんなに簡単に通していいものかと。
「使徒ではないと疑わないのですか?」
カインの言葉に案内している司祭は振り向き満面の笑みを浮かべた。
「すぐに使徒様だとわかります。ローブからあふれる神気ともいえるものが見えておりますので。私も教皇様選出の際にはあの場におりましたし」
「……そうでしたか、ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ使徒様とお話することができて感謝の限りでございます。現教皇様になってから教会の中も風通しがよくなりましたから……。これも使徒様のおかげでございます」
一度頭を下げた司祭は前を向いて歩き始める。
カインはそのあとをゆっくりと追っていく。いくつかの階段を上った最上階の豪華な扉がある前で司祭が足を止める。
「こちらでございます。少しお待ちください」
司祭は扉をノックし、使徒がきたこと伝えると勢いよく扉が開かれた。
「久々ですっ! 使徒様っ!」
デンター教皇が勢いよくカインに抱き着いた。
「えっ!?」
驚くカインに笑顔で抱きしめるデンター教皇の後ろから声がかかる。
「教皇様、そんなことをしたら使徒様に失礼ですよ。使徒様、ご無沙汰しております」
「おぉ。そうだったな。使徒様、申し訳ない」
カインから離れたデンター枢機卿は頭を掻きながら頭を軽く下げる。
「いえいえ、少し驚いただけですから……」
「わたしもっ」
デンター教皇から離れた隙にヒナタもカインに抱き着いた。
「えっ!?」
三人の行動に唖然とする司祭に「下がってよろしい」とデンター教皇から声がかかると、頭を下げて戻っていく。
「ほら、ヒナタ。こんな廊下で抱き着くもんではない。あとでゆっくり時間をとればよかろう」
少しだけ頬を赤くしたヒナタも名残惜しくカインから離れる。
「……失礼しました。では、中へどうぞ」
カインはヒナタに促され部屋に入る。部屋にはデンター教皇とヒナタの二人しかおらず、カインは空いている席に座る。
「それで急にどうしたのだ? まぁ
デンター教皇は何かを察しているかのように話す。
「実は、バイサス帝国がケルメス獣王国へ侵略をかけました。それで、そこに勇者、聖騎士、賢者の三人が現れたとのことです。しかし、召喚の宝玉はこのマリンフォード教国の宝物庫にあるはずだと……。それでお聞きしたく」
「やはりそうか。その話はすでにこの教国にもあがってきておる。それで急遽、宝物庫を探してみたのだがな……。前教皇の暗殺時に宝物庫が荒らされたのだが、亡くなった一つが召喚の宝玉だったのだ」
デンター枢機卿の回答にカインは眉根を寄せたのだった。