第一話 衝撃的な三人
いまさらながらあけましておめでとうございます。
すみません、1か月ほど忙しい日々が続いてました。
まだ少しの間色々と忙しいのですが気軽にお待ちください。
そしていよいよ新章突入です。
拡大したドリントル領の統治の今後についてアレクと打ち合わせを重ねていく日々が続いていた。
カインは上級貴族に分類される辺境伯と言っても、自分の派閥があるわけでもない。アレク以外に統治を任せられる人材が皆無であった。
エスフォート王国上層部としてもそれは理解しているので、国から代官を派遣することになっている。
現在はその代官がイルスティン共和国から分割された領地の確認作業を行っている。実際にカインに引き渡されるのはもう少し先になる。
そんな時、王城から急遽カインに招集が掛かった。
「一体何だろう……」
気軽に王城へと呼ばれていたカインだったが、今回は正式な使者によって蝋で封がされた封筒を持ってきたことに首を傾げる。
「これは正式な招集状ですね。普通の貴族は大臣でもない限り王城へ行くことはないんですよ」
封筒を手渡したコランの言葉にカインは頷く。
「とりあえず城に行ってくる。屋敷は任せたよ」
カインは馬車に乗り王城へと向かった。
◇◇◇
王城に到着するとすぐに従者によっていつもと違う応接室へと通された。
部屋には国王を始め、エリック公爵、マグナ宰相、そして父親であるガルム。しかし今回は一人見知らぬ人が座っている。
獣人のようで頭部からは尖った狼のような耳がついていた。その獣人はカインの顔を見て少しだけ目を見開いたが表情を隠すように軽く頭を下げて前に向き直った。
「お待たせしました」
「おぉ、待っておったぞ。そこに座れ」
カインは入室すると国王は待っていたかのように手招きする。
指定された席に座ると、マグナ宰相が話し始めた。
「これから謁見の前に行う事前交渉を行う。カイン辺境伯は初めてだったな。先に紹介しておこう、わが国にケルメス獣王国大使として滞在しているハグネス殿だ。実はケルメス獣王国がバイサス帝国から――侵略を受けた」
マグナ宰相の言葉にカインは顔を
実際にケルメス獣王国も何度か侵略を受けていたが、獣人が主になっている獣王国は人族よりも身体能力が高く、毎回返り討ちにし撤退させていたと、カインの呼んだ歴史書にも記載されていた。
しかもエスフォート王国とケルメス獣王国は隣国ではないが、同盟を結んでいる。
陸路からの交易は途中にバイサス帝国があるためできないが、海路を使い交易を行っていた。エスフォート王国にも多くの獣人が住んでいるのは、ケルメス獣王国から可能性を探し移り住んできたものも多い。
実際にサラカーン商会の会頭も親の代に移り住んでいる。
「……それで今回はどうして……? 戦力的にはケルメス獣王国の方が強いとお聞きしました」
「ハグネス殿、説明していただけるか?」
マグナ宰相から促されるが、ハグネスは少しだけ納得のいかない表情をする。
「まず、こんな時に申し訳ない。国家上層部が集まると聞いてお待ちしておりましたが、何故この場所に子供が……? 陛下すら貴殿を待ってからとおっしゃっておられましたし」
カインの実力はエスフォート王国の上層部なら理解しているが、神の使徒の力は秘匿しており、大っぴらにすることはない。
だからこそ初対面のハグネスからしたら、ただの子供がなぜこの場所に? と悩むのは仕方がないと思うだろう。
「ハグネス殿、それは仕方ないと思う。しかし、このカイン辺境伯はガルム辺境伯の息子でありながら武勇に優れ、辺境伯として領地も治めている。さらに言えば陛下のご息女や、エリック公爵、リーベルト公爵のご息女とまで婚約している。それだけ聞けばどれだけ重要人物だか理解してもらえると思う」
「だからといって……」
マグナ宰相の言葉に理解を示すが、ハグネスは納得できない。
「ちなみにこの国で一番強いぞ? うちの騎士団長を知っているだろう。リーベリト公爵の娘の。それよりも強いのだ」
「…………えっ?」
国王の言葉にハグネスは唖然とする。
武勇に優れると言っても所詮は子供であると思っていたハグネスにとって〝国で一番強い〟という言葉は衝撃であった。
獣人国家は一般的に〝力が正義〟という傾向があり、王族は代々獅子獣人である。だからこそハグネスにとっても驚きであった。
「確かに、エスフォート王国とカインくんが戦ったら負けちゃいそうですしね」
エリック公爵からも軽口のように言われる衝撃的事実にハグネスは固まる。
「それは正解だろうがな……。まぁこのままでも仕方ない、話を続けよう」
気を取り直したハグネスは現状を説明していく。
突然始まった侵略。当初は数年毎にある侵攻だと考え対応したそうだが、いつもと違い強い戦士、強い魔法使いが出てきたことでいくつかの街が堕とされ占領された。
特に強いのは二人の戦士と女性魔法使いの三名。
この三人にケルメス獣王国は敗北していった。
「我が獣王国でも将軍クラスでも歯が立たない強さに、こうしてエスフォート王国に助力を願い出たわけで……」
「……そうは言っても表立ってバイサス帝国と敵対するわけにもいかない。回復魔法が得意の者を派遣するのには問題ないだろうが……」
ケルメス獣王国は食料自給率も高いので食料については問題ないが、獣人には魔法の素養があるものが少なく、ポーションを製作するか、少ない回復魔法が使える冒険者が対応するしかなかった。
撤退を繰り返すうちにポーションも残り少なくなり、命を落とす者も増えた。
だからこそ今回エスフォート王国に願い出たのだ。
「エスフォート王国からは同盟国としてポーション、回復魔法が使える者を出そう。さすがに前線に立たせる兵士を派遣することはできん。それにしても三人のそこまで被害が及ぶとは……」
国王は腕を組みうなり声を上げた。
「斥候からの情報では、その三人は〝勇者〟〝聖騎士〟〝賢者〟と呼ばれているようです」
ハグネスの言葉にカインはテーブルを叩き勢いよく立ち上がったのだった。
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