第二十四話 ハーレム?
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新しくデンターが新教皇に就任してから一週間後、ハーナム司教たちはエスフォート王国へと帰国することになった。
デンター教皇は就任の次の日から襲撃事件に関与している者の捕縛に努め忙しい日々を送っていた。
時間があるときはカインと会談を行っていたが、デンター教皇が護衛のカインに頭を下げているのを見せるわけにもいかず、個室での会談が基本となっていた。
ハーナム司教も枢機卿となってマリンフォード教国で手助けをしてほしいとデンター枢機卿から勧誘をされていたが断固として拒否していた。
本人は「エスフォート王国でカイン様の所業を見て過ごすのが楽しみ」と言っていた。
帰りは何事もなく安全で旅路であった。途中、ジェナシーの街で宿泊したが、行きの際に迎えてくれた司祭も襲撃事件に関与していたらしく、捕縛されて代理の司祭が派遣されていた。
そして一番の問題だったのはエスフォート王国に帰国し、一つ目の街、シルベスタであった。
ラグナフ伯爵はハーナム司教の兄であるデンター枢機卿が新しい教皇になったことで凄い喜びようであった。派手に祝勝会を開催しようとしていたので、ハーナム司教が宥め、質素にしてもらうことになった。
カインはハーナム司教にラグナフ伯爵を任せゆっくりと休んだ。
数日後、カイン達は無事に王都へ到着し、護衛の任務を完了することになった。
「……それで何か申し開きはあるのかな? のぉ、カイン」
王城の応接室には国王、エリック公爵、マグナ宰相に囲まれたカインが肩をすくめながら座っていた。
「……いえ、神々の言葉を少しだけ誇張して伝えた、だけです……」
ハーナム司教がマリンフォード教国内での出来事を全て国王に話してしまい、カインは事情聴取として呼ばれることになった。
「それで……転移の姿見をつくったと。そんなものが広まったらどうなるかわかっているんだろう?」
実際にカイン以外が創れる代物ではないので安心しているが、その存在自体が問題となった。
絶対に口外しないことをカインは約束させられた。
「もう二度と創りませんから大丈夫です」
「いや、そうなんだがな……。もしかしたら必要になるかもしれないだろう。ほら、わしらが避難する時とか。だからな……」
カインは二度と創らないというが、転移の姿見は緊急時には大変助かるものであるということは理解していた。
国王としてもいざというときに安全に避難できる保険があるというのは大きい。
だからこそ国王の気持ちも揺れ動いていた。
「……陛下。素直に言ったらどうです? 必要に応じて創ってほしいと……」
呆れたようにマグナ宰相から助言が入る。
「まぁ、なんだ、カイン……。何かの時のためにあと一対だけ創ってもらえるか? もちろん誰にも口外することはしない」
「……わかりました。陛下の頼みですから」
カインは一対の姿見を創り出しその場に置いた。
「うむ。見事だ。国の予算からは出せんが、わしの私財から支払うように手配しておく」
本当なら怒られる予定のカインであったが、国王が誘惑に負けたため、無事に乗り切れることができたのだった。
◇◇◇
王都にあるシルフォード邸の執務室では三人の美女がソファーに座り寛いでいた。
テレスティア、シルク、リルターナの三人が久々に通学したカインに無理を言ってカインの屋敷へと同行することになった。
カインが執務をしたいのを無理を行って押し掛けたので、応接室ではなく執務室にあるソファーでお茶会を開いていた。
しかも新たにカインの婚約者となったリザベートまで呼び出すことになり、カインは一度ドリントルまで転移して連れてくることになった。
女性が四人集まると話題は尽きない。
キャーキャーと盛り上がる声を聴きながらカインは執務を行っていた。
「……カイン様……あれ? えっ!?」
「どうしたの、テレス。えっ!?」
カインの執務机の横に立てかけてある姿見からいきなり現れたヒナタに、女性陣が驚く。
「あ、カイン様。来てしましました……」
「あ、ヒナタ……」
このタイミングの悪い時にと、カインは額に手を当て天を見上げる。
「カイン様。どういうことだけ聞かせてもらえますか?」
「カインくん、ちゃんと話してくれるよね?」
「カイン、聖女様だよね? どうして?」
「あははっ、カインのハーレムメンバーか。これは面白いのぉ」
テレスティア、シルク、リルターナに囲まれているカインを眺めながら笑っているリザベートの声が執務室に響いたのだった。