第二十二話 神の使徒
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ヒナタの衝撃的に会場の全員が混乱している。
前例のない発言なだけど、理解するのにも時間がかかる。しかしいち早く落ち着いたバングラが叫ぶ。
「ふざけるな! 聖女が教皇を決めるのではない! この教会にいる関係者で決めるのだっ!」
息巻くバングラにヒナタは表情を変えない。
「……いえ、関係者が決めるのではありません。決めるのは――――神々です。または神の代行者です」
しかしバングラは鼻を鳴らす。
「ふんっ、神々が決めようが、私たちに声が届かなければないと一緒だっ!」
「――――だそうです」
ヒナタの言葉と同時にステージが光り輝き白い光が会場を覆いつくす。
誰もが視力を一瞬で失い、悲鳴が響き渡る。
目を伏せた者たちの視界が回復しヒナタに視線を向けると、その横には白いローブを頭から被り、同じような真っ白い仮面をつけた者が立っていた。
被っている白いローブは金糸に彩られ枢機卿よりも上質感があり豪華だと誰が見ても感じるほどである。しかもローブからは白い光が薄っすら纏っている状態になっていた。
「――神の代行者としてこの場こさせてもらった」
男性とも女性ともとれる中性的で響き渡る澄んだ声に、この場にいたもの全員が魅了される。
中にはローブから発せられる神気を感じ、その場で膝をつき祈り始めた者もいる。
枢機卿の四人のうち、デンターとサムタムの二人は真っ先に膝をついて頭を下げた。
しかしバングラは気にせず息巻いた。
「な、な、何者だっ!?」
「――使徒様、ありがとうございます」
「しし、使徒様だとっ!? そ、そんなバカな……」
ヒナタの言葉にバングラは使徒だとわかるとあからさまに動揺する。仮面の男――カインはバングラに視線を一瞬だけ送るが、気にした様子もなく集まっている教会関係者を見渡す。
「私は神々の意思をこの場に伝えに来た。その役目を果たさせてもらおう。神々は全てを見て、全てを知っている。そして――この教皇選挙で失われたいくつもの命を憂いている。どういう意味だかわかるか? ……バングラ枢機卿」
カインは今回の教皇選挙で盗賊行為を行い、何人もの教会関係者や商人が命を落とした。それについて許すつもりもなかった。
視線をバングラに送ると仮面で表情が読めないカインに身震いさせ後ずさる。
「私は知らない。下の者が何をしようが私は関与してない。そんな証拠もない!」
「だから言っているだろう。神々は全て見ていたし知っていると。オリバー司祭のことも含めて」
オリバー司祭の名前を聞いて、少しずつ下がっていくバングラはカインを指さす。
「こいつは偽物だっ! 神の使徒様を名乗るなど神々を侮辱する行為だ。即刻捕らえるのだっ!」
バングラ枢機卿の言葉に神殿騎士たちは身構えるが、ヒナタが気にせず横に立っており命令を聞いていいのか動揺していた。
カインは小さくため息をつくとアイテムボックスから宝玉を取り出した。
手のひらに乗せ、高々と右手を掲げ魔力を流し込んでいく。
宝玉は光はじめその頭上には立体的なフォログラムが映し出された。
その立体画像を見た者すべてが目を見開き即座に跪く。
立体画像に映し出されたものは――七柱の姿だった。
『この者は我ら七柱の代理である』
立体画像からはゼノムの声が大神殿の中に響き渡る。
誰もが初めて聞く――神の声。
身震いさせ祈りを捧げる者。
感激から涙を流している者。
この場にいる者は一生に一度もないだろう機会に巡り合ったのだ。
しかし認められない者もいる。いや、認めたくない者。
「こんなの信じられるかっ! 私は認めないっ! 死ねっ」
バングラ枢機卿は魔法を唱え一メートル位の大きさの火球を浮かべ、カインに向けて放った。
「危ないっ!」
デンター枢機卿は立ち上がるが、火球の勢いよくカインへと向かった。
しかしカインは左手を火球に向け軽く振りかざしただけで――一瞬にして消えた。
「なんでだっ!」
「神の使徒様に攻撃するなど言語道断! この者は神の代理に向けての反逆者だ! 捕らえろ!」
デンター枢機卿の怒声に、我に返った神殿騎士たちはバングラ枢機卿を捕らえた。
「私が、私が教皇になるはずなのにっ! なぜだっ!」
叫ぶバングラ枢機卿を神殿騎士四人で連れ出していく。
バングラ枢機卿の姿が見えなくなり、カインは宝玉をアイテムボックスに仕舞うと教会関係者を見渡した。
「興がそがれたが続き始めたい。神々の意思は――――デンター枢機卿、あなたに次の教皇を任せたいとのことだ」
「ははっ!」
デンター枢機卿はカインの前に移動すると膝をついて頭を下げる。
「これは神々からの贈り物だ」
カインはアイテムボックスから神から預かったローブを取り出した。教皇に相応しいであろう白に金糸が彩られたローブ。
デンター枢機卿は恐る恐るカインから受け取る。
「ありがたく受け取らせていただきます。誠心誠意、教皇の職を務めさせていただきます」
再度頭を下げたデンター枢機卿は大切そうにローブを抱え下がっていく。
カインは口元を少しだけ緩ませて、ヒナタに視線を送った。満面の笑みを浮かべたヒナタは頷く。
「あとは聖女に任せる。新しい教皇とともにマリンフォード教に繁栄を」
その言葉を最後にカインは転移魔法で泊まっている客室へと転移する。
ローブを脱いで仮面を外しソファーに体を預ける。
「本当に疲れた……。もう用事済んだし帰っていいかなぁ……」
実際はまだ帰路の護衛という依頼はあるが、転移魔法でさっさと帰りたいとさえカインは思っている。
ハーナム司教が戻ってくるまでのんびりしようとソファーに転がり目を瞑るのであった。
いよいよ明日は発売日です。
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