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転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第七章 マリンフォード教国編

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第二十一話 聖女の宣言

いつもありがとうございます。

本日はコミック3巻の発売日になります。書籍も首都圏の早い店舗様では午後あたりから並んでいるかもしれません。

よろしくお願いします。

 

 数日はあっという間に過ぎ去り教皇選挙当日を迎えた。

 カインとヒナタの二人は事前に今回の手順について、深夜に密会をしながら話し合っていた。

 一度行った場所なら問題なく転移魔法で移動できるカインは、ヒナタとシスターが同室していない時間に転移していた。


「カイン様、そのまま同衾しても問題ないですよ。朝まで誰も部屋には入ってきませんし」

「…………部屋には戻るよ。司教様と同室だし」

「隣の部屋ですよね? まさか同じベッドに……?」

「それはないから」


 ヒナタは久々にカインと一緒にいれることから積極的であった。ライムからも何か入れ知恵されたようで所々で誘惑され、カインは顔を引きつらせる。

 しかしこの大事な時期で(うつつ)を抜かすわけにもいかない。理性をフル回転させ上手く躱していた。


 カインはここ数日のことを思い出しながら出番を待った。


 ◇◇◇


 本殿の大神殿は熱気に溢れていた。

 各国から司教、司祭が帰国し、マリンフォード教国内の司祭も戻ってきている。

 全ては新しい教皇を選定するために――。

 数百人にあがる教会関係者が一堂に集まるなど教皇選挙以外はない。ヒナタが聖女としてお披露目した時でも国内の司祭以上で業務に問題ない者だけが集まっただけだった。

 ヒナタに関しては、教会関係者へというより住民に接するように当時の教皇が指示をしていた。

〝聖女〟というのは住民にとっては一番わかりやすいシンボルになる。枢機卿や司教、司祭などいろいろな階級はあるが、知識のない者からすればすべて〝教会の人〟で終わってしまうのだ。

 だが、聖女だけは違う。たった一人しかいないシンボルに住民たちは歓喜するのだ。

 それに比べ今回の教皇選挙については、国民は蚊帳の外になる。あくまで教会関係者しか決定権はないのだ。

 教国内に住む国民も正直誰が教皇になっても同じだろうと考えている。顔を合わせる機会がないものに興味など沸かないのも頷ける。所詮酒のつまみにしかならないのだ。

 しかし教会関係者は全く違う。自分の所属する派閥の長が教皇になれば、自分たちの役職が上がる可能性がる。逆に他の派閥であった場合、老齢を理由に強制的に引退させられたり、辺境の地の教会に異動させられる可能性もある。

 だからこそ自分の将来のため票集めに必死になるのだ。


「それではこれから教皇選挙を開始したいと思います」


 司会の言葉に大神殿内は歓声に沸く。


「まずは教皇候補であらせられる四人の枢機卿に登場していただきましょう」


 同時に舞台の脇から四人の枢機卿が登場した。

 服装は枢機卿用で統一されており、教会内にいる場合は基本的にその服装でいることになっている。

 最初に出てきたのは恰幅が良く如何にもふてぶてしい態度の男。

 次は眼鏡を掛け、経典を片手に出てきた細目の男。

 そして笑顔で無駄に手を振って現れたデンター枢機卿。

 最後は一人だけ他とは違い若く美青年の男。

 シスターたちからは黄色い声援が沸いた。


「改めて紹介したいと思います。左から主席であられるバングラ枢機卿、サムタム枢機卿、デンター枢機卿、最後がエトワール枢機卿になります。皆さま拍手をお願いします!」


 司会の言葉に拍手が一斉に沸く。


「それではこれから投票に入ります。事前にお配りした投票用紙に投票先を書いてもらって集計箱にお入れいただく形になります。では投票前に候補者から最後の一言をいただきましょう」


 司会に促され、最初に出てきたのは恰幅の良いバングラ枢機卿。


「主席をしているバングラだ。マリンフォード教国はこれまでとは違う取組みをするつもりだ。他国に派遣している司教、司祭はお飾りではいけない。各国の中枢にも入り政治的にも発言権を持つつもりだ。マリンフォード教は他の国とは違う盟主であるべきなのだっ!」


 ワァァァァァァァ!! と大きな声援が沸く。片手を上げ声援の大きさに満足した表情をしたバングラ枢機卿が下がっていく。

 次に登場したのは経典を手に持った眼鏡をかけたサムタム枢機卿。


「候補のサムタムです。私の理想とするマリンフォード教は全て神が、経典が教えてくれる。祈っているだけでいいのだ。経典を一字一句記憶しそれを広める。この世界中の人が全員経典を読み満足するであろう。そうすれば――」


 本人の理想なのだろうか、退屈な言葉が続けられる。人一番長く語ったサムタムは満足したように自分の場所へと戻って行った。

 拍手に関しては少数であったのは仕方ないことであろう。

 次に登場したのはデンター枢機卿。


「デンターだ。この世界に住む人に誰でも最低限の生活を送れる環境を教会が主導することだ。親が亡くなった子供はどうすればいい? 放置するのではなく育て、教育をすることできっと将来自分たちのためになることを信じている。私たち神に仕える者は贅沢する必要はない。余裕があるなら無いものに分け与えよ。きっとそれが将来につながるはずだ」


 自分の言いたいことを言いきったデンターは満足したように自分のいた場所へと戻る。拍手についてはサムタム枢機卿と同程度だった。

 最後に出てきたのは一番若いエトワール枢機卿。

 登場しただけでシスターたちの黄色い声が飛び交う。

 まず前髪をかき分け満面の笑みを振りまく。それだけで何人かのシスターが気絶していた。


「エトワールです。この世界に笑顔を振りまきたい。私が各地を赴いてそれを叶える。子猫ちゃんたちを愛でながら僕は世界を幸せにするんだ。わかったかな? ハニーたち」


 裏で聞いていたカインはドン引きした。


「なんか全員とんでもないな……。こんなのが枢機卿だってのも信じられない。ハーナム司教がいっそ教皇になったほうがまとまる気がする……。そろそろ出番か」


 カインは技能神グリムから受け取ったローブを纏い。創造神ゼノムから受け取った仮面をつける。


「あー、あー、あー。確かに声が変わっているな」


 準備ができたことでカインはステージに視線を送る。


「それでは全員の紹介が終わりました。投票の前に聖女ヒナタ様からお言葉をいただきたいと思います」


 司会の言葉にヒナタはゆっくりと立ち上がり、舞台の中央に立った。

 その姿は凛として、気品があり神々しさを感じさせる。教会関係者たちも生唾を飲み込む。

 振り向いて神々の像に一礼したあとに舞台から教会関係者を見回して口を開く。


「ヒナタです。最初に話しておく必要があります。今回は投票などいたしません」


 えええええええぇぇぇぇぇぇ!!


 ヒナタの宣言に一番大神殿が沸いた。








ありがとうございます。

16日までは毎日投稿になります。

(今は召喚された賢者の4巻作業してます・・・)

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