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転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第七章 マリンフォード教国編

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第二十話 恐妻は強い?

いつもありがとうございます。コミック3巻発売日は明日になります!


 教皇選挙まではまだ数日間あるので、デンター枢機卿には派閥を固めるように促すことになった。本人は嫌そうな顔をするが、新しい教皇になるために仕方ないことだと諦めた。

 ハーナム司教も以前とは違い協力的になった。これは神の使徒としてカインが神託を下ろしたためであった。

 いくら兄弟とはいえ、本人がやる気がないのに推しても仕方ないと思っていたのだ。

 それとは別にカインは個別に街へと出かけている。これについてはクロードたちに頼むしかない。

 カインはクロード達が泊っている宿へと訪れていた。食堂でクロード達四人とテーブルを囲む。


「それでカイン、お願いってなんだ? この場所は俺たちもそこまでは知らない。できることは限られているぞ」

「それはわかっています。クロードさんたちには今回の教皇選挙で誰が住民から望まれているのかを調べてほしいかなと」

「それなら問題ないわ。色々なところへ赴いて情報を集めればいいのね?」

「さすがリナさん。その通りです」


 クロードよりもリナの方が話が理解できている。ミリィとニーナの二人もわかっているようで頷いている。


「それで……ついでに推しを推薦するように噂を流せばいいのね。あとは……あの私たちを襲わせた……なんだっけ? あぁ、バングラってやつの評判をついでに落としておくわ」


 にやりと笑みを浮かべるリナにカインは苦笑しながらも頷く。


「でもね、カイン。これでも私たちはAランク、Bランクの冒険者なの。色々なお店とかに赴くのよ。わかる?」


 カインはリナの言いたいことはわかっていた。冒険者であれば宿屋、酒場くらいしかいかないだろうが、リナたち女性が三人もいればもっと行動範囲は広がる。

 デンター枢機卿が新しい教皇になることは既定路線ではあるが、住民の反発があってはどうにもならない。

 カインは懐にある小袋から金貨を八枚並べると、予想以上の金額にリナは目を見開いた。 


「経費で一人金貨一枚。報酬として一人金貨一枚で合計八枚でどうですか?」


 にこりと満面の笑みを浮かべるカインにリナも頬を緩める。


「……さすが辺境伯様ってことね。わかってる」


 リナはミリィとニーナの前に金貨を二枚ずつ渡し、残り四枚は自分の懐へ入れた。


「…………えっ? ちょっと待ってくれ。俺の分は……?」


 予想外の声を上げたのはクロードだった。

 確かに言いたいことはカインもよくわかっている。クロードには金貨が一枚もいくこともなくリナが受けとっているのだ。

 クロードは物欲しそうな視線をリナに送るが、横を向いて気にしていない。がっくりと肩を落とすクロードを放置してこれからの方針を話すことになった。


「それにしてもそんなみんなひどいの?」

「正直候補者全員が色々な意味で破綻しているかもしれません」


 今回の四人の枢機卿についてカインは説明する。

 力に便り、今回の襲撃事件を主導した主席のバングラ。

 理想的なことを語るが、どれもこれも現実不可能なことばかりのサムタム。

 一人だけ他の枢機卿より若く、色気を振りまいてシスターを口説き、ヒナタに婚姻を迫るエトワール。

 そして自分の生活を破綻させて孤児を育てるデンター。


 消去法で考えたらデンターしかいなくなってしまうことに全員が苦笑いになるのも仕方ないことだろう。


「滞在もまだ数日あるから、冒険者ギルドに寄るつもりだし私たちもがんば――」

「ちょっといい女がいっぱいいるなぁ」


 リナの言葉を遮るように声をかけてきたのは、白いローブを着た三人だった。まだ二十歳位で誰がみても教会関係者だとわかる。


「男一人に小僧一人。それだと寂しいでしょ? こっちには男三人いるしそんな奴ら放っておいて一緒に飲まない?」


 エスフォート王国でクロードがいる前でリナをナンパする者などいない。Aランクの冒険者であり氷炎の二人組といえば、ある程度の腕がある冒険者なら誰でも知っているのだ。

 しかしここはマリンフォード教国。二人のことを知らないのは仕方ないことだろう。


「生憎男は間に合っているからさっさとあっちに行きな? ここの二人よりいい男なんてどこにもいないよ」

「ちょっと、リナ。今俺のこと〝いい男〟って言ったよな?」


 声をかけてきた男たちにまったく気にせず盛り上がるクロードに、三人の男たちは苛立ちを覚える。


「おい、そこに男。見てわからねぇのか? 俺たちは全員〝司祭〟だぞ。しかも次の教皇になられるバングラ枢機卿様の派閥だ」


 その言葉にリナは大きなため息をつく。


「……やはり上の枢機卿がクソだと、その下にいつのもクソなのかね」

「リナ。それ面白い」

「うまいこと言うねぇ」


 リナの言葉にニーナとミリィが同調して笑い出す。しかしコケにされた司祭たちの顔には青筋が浮かんでいた。


「おい、てめぇら。この教国内で俺たちを侮辱するってことはわかっているんだろうな?」


 このままでは終わらないと思い、諦めてカインは席を立つ。


「この教皇選挙の時に、わざわざバングラ枢機卿の名前を貶めるようなことをやっていていいのですか? それとも今から本殿に一緒にいきましょうか。ちなみに私たちはエスフォート王国の人間ですし、ハーナム司教の護衛でこの教国に訪れているので、何かあればデンター枢機卿に伝えてもらえますかね? それとも呼びましょうか? 司教様か枢機卿様を」

「な、な、なんだと……。お前ら護衛なら冒険者か……」

「そうよ? ほら。ギルドカード」


 カイン以外の四人がギルドカードを掲げる。

 Aランクの証であるゴールドカードを掲げるクロードとリナ。

 Bランクのシルバーカードを掲げるミリィとニーナ。


「武力行使するなら、もちろん死ぬ覚悟はできてるよね? Aランクを相手にするんだから」


 自分たちの実力を示して、指先には氷を浮かべる。尚且つあおるリナにカインは苦笑する。


「おおおお前ら、お、覚えてろよっ!! みんな行くぞっ」

「ちょっと待てよっ」


 一人逃げ出すとそれを追って逃げ出す二人。その後ろ姿をみながらリナがクククと笑い出す。


「あぁすっきりした。よし、もう一回乾杯しよっか」


 何事もなかったようにリナはジョッキを掲げる。全員が軽くジョッキを当てて飲み始めた。

 その日は酒場では誰もカインたちに絡む者はいなかったのだった。




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