第十九話 神々との再会
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朝日がステンドグラスを通し大聖堂の中を照らしている。ホールは天井も高く数百人が同時に集まれるほど広い。
中央には創造神、左右に三柱ずつの神々の像が飾られている。それはどこの教会よりも立派な像であり、五メートルを超える大きさであった。
そして立派な像の前の祭壇で四人膝をついていた。
「全員行けるかわかりません。それだけは理解していてください」
カインの言葉にヒナタ、デンター枢機卿、ハーナム司教は頷いた。
全員が手を合わせ祈りを捧げると世界は真っ白に染まっていくのだった。
「やはり来たか」
「はい、相談したいこともありましたので」
ゼノムの言葉にカインは返事を返す。振り返るとそこには――祈りの状態でいるヒナタ一人がいた。
やはりハーナム司教とデンター枢機卿は無理だったかとカインはため息をつく。
「ヒナタ、立ってこっちに」
カインの言葉にヒナタを目を開けると、神々の間にいることに気づき慌てたように立ち上がった。
「ご無沙汰しております」
ヒナタとカインの二人は席につく。
「四人の会話は聞いていた。かといって四人ともここに呼ぶわけにはいかんのじゃ。それは理解しておいてくれ」
ゼノムの言葉に二人は頷いた。
「カイン、ゼノム様は言葉にしないですが、カイン一人ここに呼ぶだけでもそれなりの神力を使うのです。カインとヒナタは神との相性がいいのでなんとか二人までなら呼ぶことはできますが、四人を呼ぶとなるとそれなりに消費してしまいます。それにまだあの二人は格が足りないのです」
ライムがゼノムの代わりに説明を始める。カイン一人を神の世界に呼ぶのに世界全人口の魔力を全てを使うよりも消費量は多いと聞くと、さすがにカインも恐縮した。
「わかりました。無理いってすみません。それよりも本題です。ライム様から言われたことは本人に伝えました。しかしながらデンター枢機卿の派閥は一番少なく、投票数での勝利は見込めません」
「カインよ。どうして投票数など気にする必要があるのだ。そんなものすべてひっくり返せばいいだけであろう」
「ひっくり返すと言ったって……」
実際にカインとヒナタが何を言っても投票先が変わるわけではない。全てをひっくり返すには何をすればいいのかカインは考える。
「悩んでるのぉ……。簡単なことじゃ。
「…………あっ」
ゼノムの言葉にヒナタが気づいたように声を上げた。
「ヒナタ?」
「カイン様、私とカイン様だからダメなのです。それがもし――聖女と神の使徒の言葉だったら?」
「……っ‼ そうかっ‼」
ヒナタの言葉にカインも気づいた。ヒナタとカインとして言っても、ただ一人の戯言にしかならない。しかしそれが聖女と神の使徒としての言葉だったら、誰もが納得するしかない。
特にマリンフォード教国は七柱の神を崇拝している。その使徒の言葉であるならば、派閥よりも優先になるはずだとカインは理解する。
「でも、どうやって神の使徒だとわかってもらえるか……」
「それについてもわかっておる。ほれ、早く出さんか」
ゼノムが催促をすると、技能神であるグリムがテーブルの上にローブ二着と宝玉を置いた。
「これを渡しておく。これはな――」
グリムから使用方法を聞き、カインはアイテムボックスにしまい込む。
「あ、そうじゃな。これも渡しておこう」
ゼノムは右手を掲げると、手のひらが光り輝き、一つの仮面が現れた。目と鼻を覆い目の場所だけ穴が開いている。
「この仮面をつければ自動的に声も変わるようになっておる。使徒だと顔を公開するわけにもいかんだろう」
「助かります。これなら何とか……」
「それでじゃ。せっかくの新しい教皇誕生なのだからな……。――――こうした方がいいだろう」
笑みを浮かべるゼノムと神々であったが、カインは苦笑しかできない。
カインが隣を向くと、ヒナタは嬉しそうな表情を浮かべている。
(それは本当に恥ずかしい……。できるのか……)
「ここから楽しみに見ておるぞ。カイン、わかっておるな?」
「…………はい。できるだけがんばります……」
カインも諦めたように頷く。
「そろそろ時間じゃな。任せたぞ二人とも」
ゼノムの言葉と同時に二人の視界は暗転した。
気が付くと祭壇で祈りをささげている状態だった。カインとヒナタは同時に立ち上がる。
それに気づいてデンター枢機卿とハーナム司教も祈りを中断した。
「……どうだった?」
恐る恐る聞くデンター枢機卿にカインは笑みを浮かべて頷いた。
「神々とお会いしてきました。色々と制約があるようでお二人を呼べなかったみたいです」
残念そうな表情をする二人であったが、カインとヒナタの表情が明るいことに気を取り直す。
「きっと大丈夫です。神々は私たちを見守ってくれてますから」
ヒナタの言葉に全員が頷くのであった。