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転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第七章 マリンフォード教国編

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第十六話 再会

いつもありがとうございます。

 

 二回の襲撃はあったが無事に教都に到着することができた。

 ハーナム司教はここまで執拗に襲撃を計画しているとは思っておらず、終始申し訳ない表情を浮かべている。


「皆さん、ありがとうございました。色々とありましたが、全員が無事で何よりです。これで帰りまではゆっくりとしてください。宿泊する宿は騎士を案内につけますので」

「いえいえ、司教様。このこともあってAランク、Bランクの俺たちが護衛についたんですから気にしないでください」


 クロードは胸を張って答えると、後ろでリナは呆れたようにため息をつく。しかしカインを除くとクロードとリナが最上位の冒険者であり、そのリーダーはクロードなのだから代表して答えるのはあっている。

 カインはこの後、着替えてから本殿内でも護衛につくことになっている。ただし、冒険者の恰好をしていたも注目を浴びてしまうので助祭のローブを借り受けることになっている。

 あくまでハーナム司教の駒使いとして同行することになった。護衛としてハーナム司教とこの後ヒナタとの会談の予定も入っている。

 クロード達は神殿騎士に案内され、宿へと向かう。

 久々に会えることを楽しみにしながらカインはハーナム司教の後を追い本殿へと入っていった。


 本殿勤めの助祭に案内され、ハーナム司教と一緒に一室に案内された。部屋は質素ながら適度に大きく、打ち合わせを行う部屋と大小の寝室が一つずつある。大きい部屋が本殿に来た司教が使い、小さいもう一部屋が小間使い用のであろう。

 ハーナム司教はカインに大きな部屋を勧めてきたが丁重に断り小さい部屋へと入った。


「あと二時間か……。本当に久々だなぁ……。元気にしてればいいんだけど」


 数時間後に会えることを楽しみにしながら、リビングに戻る。

 ハーナム司教とゆっくりするつもりであったが、司教宛の来客が続くことになった。カインは表向きは小間使いとしているので、来客への紅茶を出したりと忙しく働くことになる。

 来客のたびに紅茶のカップを置くとハーナム司教が申し訳なさそうな表情を浮かべるが、カインは笑顔で仕事をこなしていく。

 ハーナム司教とすればエスフォート王国の上級貴族であり、教皇より上位である神の使徒に紅茶を淹れさせるなど恐れ多いことだと理解している。

 来客はすべて今回の教皇選挙についての話ばかりになる。来客によってはストレートに投票する枢機卿を聞く人もいれば、濁しながらも暗に勧めてくる人もいる。

 ハーナム司教は毎回言葉を濁しながら対応していた。

 二人になるとハーナム司教も疲れたようで、ソファーに深く座り大きなため息をついた。


「それにしても大変そうですね……。やはり教皇選挙はそれだけ重要だということですね……」

「カイン様の言う通りですな。カイン様が〝お前が次の教皇だ〟と決めてもらえれば楽なのですが……。そのままカイン様が教皇をされても構わないと。それなら私も全力で支援いたします」


 カインはハーナム司教の言葉に苦笑する。教皇などマリンフォード教すべての頂点などもちろんするつもりもない。


「さすがにエスフォート王国での役目もありますからね」

「確かにそうですな。陛下に叱られてしまう」


 二人で笑っていると、扉がノックされ、一人の助祭が部屋に入ってきた。


「聖女様との面会の時間になりましたのでご案内いたします」

「わかりました。では行きましょう」


 カインは助祭の案内のもと、ハーナム司教のあとをついていく。いくつかの通路を歩き一際豪華な扉の前に止まった。

 案内した助祭がノックをする。中から許可する声が聞こえるとゆっくりと扉を開けた。


「司教様、どうぞ中へ」

「うむ、ありがとう。では」


 ハーナム司教とカインの二人は部屋へと入る。

 広い部屋の中央に設置されているソファーにはヒナタが一人で座っており、二人のシスターが部屋の端に控えている。


「ようこそ。ハーナム司教様、お久ぶりでございます。席へどうぞ」 


 ハーナム司教は席に座り、カインはその後ろで控えるように立つ。シスターが紅茶の用意をし、ヒナタとハーナム司教の前に置いていく。

 もちろん後ろで控えているカインの分はない。


「二人とも少しの間外してもらえるかしら」

「「はい」」


 シスター二人は一礼した後に部屋を退出する。

 扉が閉まり三人だけの空間になると、ヒナタはゆっくりと立ち上がり、一歩一歩カインへと近づいていく。

 その表情は頬を赤く染め、目には涙が溜まって今にも零れ落ちそうであった。


「カイン様……」


 ヒナタはカインの前に立つと、そのまま胸に顔をうずめるように抱き着いた。


「ずっと、ずっとカイン様に会いたかったです。毎日神々に祈りながら、再開できる日をずっと待っていました」


 背中まで手を回され、逃げられないカインは笑みを浮かべる。


「ヒナタ、久しぶりだね。思ったより元気そうでよかった。手紙をもらって心配していたんだよ」


 ゆっくりとヒナタの背中に手を回し、優しく背中を撫でる。

 二人の姿を眺めソファーに座ったままのハーナム司教は破顔するのであった。



いつもありがとうございます。ヒナタとの再会です。

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