第十一話 襲撃の真相
6巻発売日は12月15日になります。
首都圏の店頭に並び始めるのは13日の午後あたりからになると思います。
よろしくお願いします。
神殿騎士の言葉にカインたち冒険者は口を紡ぐ。
「……やはりそうでしたか」
そんな中、カインだけが言葉を返す。その言葉に他の冒険者達は驚いた表情をしカインに視線が集まった。
「どういうことだ?」
「実は馬車の中で司教様から聞いていたのですが、腑に落ちない点があったので……」
「カイン、説明してくれるか?」
「えぇ、実は今回の教皇選挙において各国から司教様が本殿に向かってますよね。マリンフォード教国内の司祭も選挙のために向かっているとか。それで盗賊の被害が教会関係者にも多く及んでいると聞きました。だからそこからーー」
選挙において最多投票数を獲得した者が新しい教皇に就任すること。
敵対候補の枢機卿への投票数を減らせれば自動的に自分が優位になること。
途中不慮の事故や事件で投票当日に間に合わない場合は無効票となること。
他にもいくつもカインは教会関係者への襲撃理由を挙げていった。過去を遡ると盗賊でも熱心な信徒は多くおり、教会関係者には暗黙の了解で襲わない事が多かったのに、今回の場合のみ適用外になっていることから、カインは答えを導き出した。
「……なるほど……。ってことは、盗賊を指揮しているのは、今回司教様が応援する枢機卿様以外の候補の手筈だと……?」
神殿騎士の言葉にカインは肯定の意味で首を縦に振る。
「でもどうやってそれを区別するんだ? 馬車に乗っていたらわからないだろう。誰にどの枢機卿に投票するかなど……」
クロードからの質問に納得したように全員が肯く。確かに一般的にはそうなるだろう。
「――それについてはわしから説明しよう」
神殿騎士の後ろからゆっくりと司教が顔を出した。
「まずは教会のゴタゴタに巻き込んでしまってすまなかった」
司教は頭を深々と下げた。突然の行動に神殿騎士だけでなく、カイン達冒険者も驚きの表情をする。
司祭は各街の教会を束ねているが、司教は派遣されている国全体の教会を監理監督している最高責任者だ。派遣されている国ではトップとなる司教が頭を下げたのだから冒険者や神殿騎士たちが驚くのも仕方なかった。
「司教様、頭を上げてください。それも含めての護衛ですから」
リナは申し訳なさそうに言葉をかける。
「ありがとう。皆に話しておいたほうがいいだろう。今回、わしの兄が枢機卿の一人として教皇選挙に出ている。必然的に誰が見てもわしが兄に投票すると考えるだろう。しかも今回乗ってきた馬車は、マリンフォード教旗とエスフォード王国旗が馬車に掲げられておる。誰がみてもわしが同乗しているとわかるだろう」
「確かに……。兄が候補なのに他の候補者に投票するなど誰も考えないですからね」
「まぁ兄は派閥とか気にせんから、仲間は多くない筈なのだがな……。普通に選挙をやっても勝つことはないだろう。だが、不確定要素は消し去りたいのであろうな。襲撃を企んだ者は……」
司教としても納得いくものではない。神殿騎士は大切な教会関係者を守るための戦力なのだが、同朋の命を奪うために扱うのは司教として許せるものではない。
「すぐにはわからないだろうが本殿に到着したら必ず議題にあげさせてもらう。申し訳ないが危険が伴うかもしれんが引き続き本殿までの護衛を頼む」
護衛の契約については教都の本殿までと帰路も含まれている。カインについては本殿内での護衛も引き受けており聖女であるヒナタと面談を行う予定となっている。
盗賊の遺体については神殿騎士が持っていた
本殿に到着してから再度顔を改めて身分を確認することになった。それにより襲撃を計画して枢機卿が発覚することになるはずである。
実際には証拠がないと惚けられるであろうが、疑惑があがることで他の候補者への牽制にも繋がる。
この先教皇選挙においてどのようなことが起きるか不安になるカインだった。
休憩を終えまた馬車は山道を進み始める。日が沈む前には野営ができる場所へとたどり着いた。
野営場所は街道の脇の広場が柵でぐるりと囲まれており、中央に井戸が設置されている。
先に二組の野営者がおり、一組は商人、もう一組は教会関係者と思われる一行だった。
邪魔にならない場所に馬車を停め、護衛の冒険者は荷馬車から荷物を下ろし野営の準備にとりかかる。
これはクロード達とは別のもう一組の冒険者たちがテキパキと準備を進める。
戦闘ではクロード達が奮闘したのを見て、代わりに買って出たのだった。
カインも自分のアイテムボックスから必要な物資などを取り出していく。
「さすがにここで屋敷なんて取り出せないよな……。寝るには快適なんだけど……」
カインはドリントルで空地にいくつか屋敷を建てさせアイテムボックスにしまい込んでいる。
その時に応じて使い分けるために平屋から屋敷まで異なっていた。しかし建物が入ること自体異例ともいえるので、他の人がいる場所では取り出すことはできなかったのは言うまででもない。
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発売日までもうちょっと!