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転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第七章 マリンフォード教国編

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第八話 教都への旅路


「世話になった」

「司教様、道中お気をつけて」


 護衛の神殿騎士と冒険者一行は朝早くに教会前に待機していた。ハーナム司教は宿泊した教会の司祭に挨拶をし、馬車へと乗り込む。

 カインも後を追うように乗り込み馬車の扉を閉めた。

 神殿騎士を筆頭に司教を乗せた馬車を囲むようにゆっくりと冒険者たちが囲み街を出発する。

 ジェナシーの街を出て三日間、野営をしながら教都を目指すことになっている。途中、小さな村はあるが、食料の調達程度で素通りすることになっている。

 途中に山と森を抜けていくコースになるので、護衛の冒険者たちは事前に襲撃の可能性を共有していた。


「カイン殿、教会で聞きましたが、最近盗賊が多いらしく、馬車の襲撃事件が多発しているらしいです」

「えぇ、その話は宿泊した宿の酒場でも聞いていたので、朝、情報について共有しておきました。探査魔法も使えますので襲撃があっても十分対応ができると思います」


 ハーナム司教は心配なようであったが、カインは問題ないと考えている。クロードを含めて護衛のメンバーに信用しているからであった。

 実際に他の司教や司祭の護衛はCランクからDランク程度の実力を持った冒険者が多い。これは戦闘を行える神殿騎士が護衛についていることから、野営の準備や雑務の為に同行する意味合いが強い。マリンフォード教は他国にも浸透しており、盗賊といえどもわざわざ教会の関係者を襲うことは控えていた。

 今回は一斉に各国に派遣されている司教が集まることもあってか、大量の金銭を持ち歩いているから襲われたのかと考えられていた。


 問題なく一泊目の野営地を出発した。カイン達のアイテムボックスには大量の資材が入っている。幼い頃に家庭教師をしてもらったミリィとニーナはもちろん持っている。

 クロードとニーナに関しては、以前イルスティン共和国から帰国した際に、魔法鞄(マジックバッグ)を製作し譲った。

 さすがに無料では受け取れないと、市販価格程度の料金をカインは受け取っていた。

 実際にカインが製作する魔法鞄(マジックバッグ)は市販の物とは容量が何倍も違う国宝級であるが、その金額を払えるはずもない。

 リナは恐縮していたが、クロードは笑いながら受け取っていたため、リナに頭を叩かれていた。


 馬車は山間部に入ると、カインは探査(サーチ)を唱え、周りの警戒を始める。

 森の麓の高い木が多い茂った中に通る街道は視界が悪く、障害物も多い。どこから見ても襲撃するためにはうってつけの場所であった。馬車の外で護衛をするクロード達も理解しているようで、馬車のスピードを落としながらゆっくりと進んでいく。


(いるな……。二人、偵察なのかも……)


 森の奥から一行を監視するような気配を感じ、この先、襲撃がある可能性を感じたカインは御者に頼み、一度馬車を停車させる。不思議に思ったハーナム司教であったが、カインの真剣な表情に事態を察し口を結ぶ。


「盗賊の偵察かもしれません。気配を消していますが二人います。一度クロードさんに話してきます」

「わかりました……。指示に従いましょう」


 カインが馬車から下りると、停めた事に不思議に思ったクロードの表情も固くなった。カインの表情を見て察したのだろう。


「……くるのか?」

「えぇ、多分。まだ偵察ですが……。この先くるかもしれません」

「よし、準備はしておく。俺は馬車の横を並走するから、襲撃がわかったら窓から顔を出して教えてくれ」

「わかりました。ではゆっくりと進めますね」


 クロードが小休憩を取ることを指示し、冒険者たちを集めた。


「どうしたんだ。休憩はまだ先のはずだろう……?」

「あぁカインと話して少し休憩を取ろうってことになってな」

「カインって……あの子供の事か? あの子供の言うことを聞く必要があるのか?」


 カインの実力を知らないもう一組の冒険者から疑問の声があがるが、クロードは無言で首を縦に振って肯定を示す。


「クロードさんは有名だから知っているが、あの坊主の事は初めて知ったぞ。そんなにできる奴なのか?」

「知らないのか……? ドリントルでは有名で一時期王都にも噂が流れてきたはずだが……。銀髪の悪魔(シルバーデビル)って聞き覚えがないか?」

「?! ……聞いたことある。冒険者ギルドを破壊し、ギルドマスターすら土下座させ、歯向かう者は皆再起不能になる銀髪の悪魔……。もしかして……それがあのカインなのかっ!?」

「俺も聞いたことあるぞ。貴族ですら道を開けるとか。相手したやつは皆行方不明になって、きっとどこかで燃やされているとか」


 カインがいない事をいいことに尾ひれがついた噂話が冒険者たちから語られる。

 思わずクロードも吹き出しそうになったが、笑いを堪えながらそのまま頷いた。


「そうだ。だから司教の馬車に同乗してもらっている。悪魔だから逆らったりしたら……な? いてっ」


 脅しをかけるクロードにリナが杖で頭を叩く。


「そんな噂話まともに信じちゃだめでしょう。クロードも何調子に乗ってるのっ!」

「だってよー。でも噂は満更嘘でもないだろ? ドリントルの冒険者ギルドを破壊したのは確かなんだし」

「それはそうだけど……」

「マジかよ……」


 冒険者たちは生唾を飲み、クロードに真剣な視線を送る。


「まぁそういうこったから、子供だと思って絡むことのないようにな? あと、この先襲撃される可能性がある。カインが偵察を見つけたらしい。痛っ!」


 再度リナに頭を杖で叩かれたクロードは涙目で見上げた。


「それが一番大事な話でしょっ!!」


 額に青筋を立てたリナにクロードは何度も杖で叩かれるのだった。


 


いつもありがとうございます。


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