目次(見出し)
労働組合を敵視する小池都知事
安倍-小池打倒! 改憲・戦争の日本会議を粉砕しよう!
合同・一般労働組合全国協議会事務局長 小泉義秀
(1)小池百合子は特別秘書に極悪・右翼野田を起用した!
7月31日東京都知事に当選した小池百合子は8月2日に都庁に登場し「都庁、出資団体等の業務、組織、予算等のありかたを点検する」「都政改革本部を設置する」と述べた。そして政務担当特別秘書に元都議の野田数(かずさ)を起用した。9日には同じく元読売新聞記者の宮地美陽子(みよこ)を任命した。宮地秘書の任命について小池は「国防観、歴史観については日本のためを想う記事、…読売魂が都政に反映すれば、さらに首都が素晴らしいものになるのではないでしょうか」と記者会見で述べている。都の2名の特別秘書は条例に基づき、選任も待遇も知事に一任されている。地方公務員の身分を持ち、給与は税金から支払われるが議会の承認を必要としない、地方公務員法の適用を受けない特別職である(地公法4条2項)。舛添の時にも2000万円の年収を得ていた特別秘書の存在が問題にされていた。小池が特別秘書として野田を起用したことは東京における労働組合圧殺のために大阪維新=橋下的手法を使おうとしていることは明らかだ。
野田は元東京都議会議員で「尖閣議連」(正式名「尖閣諸島を守るために行動する議員連盟」)の会長だった。尖閣列島に「唯一上陸した議員」を売りにしてきた西村慎吾の塾生であり、自身は尖閣列島を洋上から視察している。この野田が、小池の政務担当特別秘書として東京都の労務政策を担うことが明らかになっている。
2012年9月18日、東京都議会は「日本国憲法の無効確認と大日本帝国憲法の復活を求める」請願を審議し不採択にした。この請願(請願24第8号)はその年の6月に都議会議事堂で開催された「占領憲法と占領典範の無効確認を東京都議会に求める請願集会」を受けた内容だった。議案提出は当時都議会議員だった野田数議員と土屋敬之議員の紹介により、9月18日の総務委員会で委員会審査が行われて提出された。提出者は京都市在住の男性他5034名。結果は不採択だったが、土屋議員の一人会派・平成維新の会と野田議員が所属する東京維新の会(3名)だけは賛成に回った。10月の都議会本会議で、総務委員会より請願を不採択とすべきとの報告のうえで反対多数により否決された。この「(改憲ではなく)憲法無効」を議案提出した都議会議員の野田数は、97年に東京書籍を退社した後、小池百合子の秘書を務め、小池秘書として政治活動を開始し、小池百合子は「現憲法廃絶論」と同じ考えを持っていた。
12年9月の都議会請願は「①憲法、典範、拉致、領土、教育、原発問題などの解決のために必要な国家再生の基軸は原状回復論でなければならないことを公務員全員が自覚すべきであるとする決議がなされること。②占領憲法(日本国憲法)が憲法としては無効であることを確認し、大日本帝国憲法が現存するとする決議がなされること。③占領典範(皇室典範)の無効を確認し、明治典範その他の宮務法体系を復活させ、皇室に自治と自律を回復すべきであるとする決議がなされること」という超右翼的内容だった。野田は都議会自民会派を離脱し、大阪維新の会と連携する「東京維新の会」を結成していた。
(2)小池知事の日教組・公務員労組・労働組合敵視
小池百合子はまた労働組合に対して敵愾心をむき出しにしてデマを書き連ねている人物である。「架空人物名義での記録作成、厚生年金の受け取り、データ改竄など、民間金融機関なら即刻クビ、悪質な犯罪行為ばかりだ。政治的にも強力な労働組合をバックに、社会保険庁の優雅な労働環境や杜撰な事務は以前から知られていた」(『女の本懐-市ヶ谷の55日』(文春新書 2007年10月20日第1刷 129頁)
社会保険庁の労働者が「悪質な犯罪行為」をやったというのか? すべて嘘であり、デタラメだ。「消えた年金」問題は社会保険庁の労働者や労働組合問題ではなく、年金システム、制度の変遷の中で生じた問題であり、その責任のすべては歴代政権、政府の側にある。それを社会保険庁労働者のせいにする公務員叩きは、国鉄分割・民営化型に学んだ悪辣なやり方そのものだった。動労千葉の「ひとりの解雇も許さない」という絶対反対の団結がつくれないまま、社会保険庁労働者は首を切られた。
野田は「つくる会教科書」の信奉者であり、日教組に敵意をむき出しにし、教科書選定について以下のように述べている。
「現場の教員が推薦する2~3社程度の中から選ぶ『絞り込み』という行為が行われ、教育委員がそのまま追認するのです。いまでも行われている『絞り込み』は悪慣行であるばかりでなく、そもそも違法行為です。文科省は今春、その禁止を明記した通知を出しています。絞り込みが横行すれば教員に支持される教科書をつくらざるをえず、日教組や全教といった教職員組合の教員が多い現在、どうしても『左寄り』の教科書が選ばれてしまう現実がありました。これでは、生徒が使う教科書は、公正・公平な視点で選べなくなってしまいます。」(プレジデント2015年7月19日号)
こう述べて育鵬社の教科書が良いと主張しているのである。
小池都知事は8月12日の定例記者会見で「都政改革本部」のメンバーに大阪府・大阪市特別顧問の上山信一慶応大学教授ら5人を任命すると発表した。小池はこの「都政改革本部」を当初構想していた私的懇談会ではなく「公的な意味合いを持たせて強力なものにしたい」と庁内組織として立ちあげるという。上山は橋下徹前大阪市長を支えた「維新ブレーン」の一人である。他の4人は加毛修弁護士、小島敏郎青山学院大学教授、板根義範弁護士、須田徹公認会計士である。
加毛修(かもおさむ)弁護士は、政府調達苦情検討委員会委員長(内閣府)(現任)、警察大学校非常勤講師などを歴任してきた。板根義範弁護士は小池都知事の選挙戦を最先頭で支援してきた若狭弁護士の事務所に所属している、立法機関で政策立案・立法補佐業務(国会議員政策担当秘書)、行政機関で和解仲介業務(紛争解決センター調査官)にそれぞれ携わってきた元検事である。小島敏郎は環境庁に勤務し、環境省地球環境審査官を歴任してきた弁護士資格も持っている。須田徹はシャープの監査役(現)や前川報恩会幹事(現)を担っている人物だ。上山を筆頭とするこの人事は橋下維新の会的手法を都政に反映させる布陣であることは明らかであり、日本会議の路線を貫こうとする人事でもある。しかし、小池=日本会議の手法はデマとペテンとごまかし以外の何物でもない。天皇のビデオメッセージがそうであるように階級闘争の激動が荒唐無稽な天皇制や国家神道をあぶりだしたのだ。階級的労働運動と国際連帯の闘いで小池の悪辣な攻撃を粉砕しよう!
(3)小池は「核ミサイルを東京に」の核武装論者
小池百合子は在特会女性部の講演会で講師を務めている人物でもある。2010年12月5日に「小池百合子先生講演会『日本と地球の護りかた』を「あうるすぽっと(有楽町線東池袋駅直結))で行っていて、その案内は今でも在特会のホームページで見ることができる。「<どうしたらいいの? 尖閣、北方領土、竹島で負け続ける日本>今こそ、小池先生に聞いてみよう! 小池元防衛相に斬りこもう! 尖閣に中国が侵略して日本が普通の国になる千載一遇のチャンスがやってきました。」というのがその案内のキャッチコピーだ。
03年3月号『Voice』(PHP研究所)の田久保忠衛、西岡力両氏との鼎談記事で小池百合子は「外交上の判断において、核武装の選択肢は十分ありうる」(小池百合子)「日本がアメリカの核の傘に入ることを望むのであれば、核ミサイルを東京に持ってきてもらうのがベストです」(西岡力)と発言し、この鼎談を自身のホームページで公開している。田久保(杏林大学名誉教授)は現在、「日本会議」の会長であり、西岡力(東京基督教大学教授)は「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)会長である。
小池百合子は日本会議国会議員懇談会の副幹事長、副会長を歴任してきた極右であり、拉致議員連盟の副会長も務めた人物だ。
2014年に安倍改造内閣が発足した時は閣僚19人中15人が日本会議に所属している。第三次安倍改造内閣の閣僚20人の内、13人は同懇談会メンバーだった。安倍、麻生、高市、岸田、塩崎、森山、林、丸川、中谷、菅、島尻、加藤、石破らである。官邸中枢のスタッフの内閣官房副長官の萩生田、世耕、内閣総理大臣補佐官の柴山昌彦、衛藤晟一(えとうせいいち)も日本会議メンバーである。特に衛藤は生長の会出身の日本会議と最も緊密な関係にある人物だ。
第3次安倍第2次改造内閣も世耕弘成(せこうひろしげ)ら日本会議メンバーで固められている。稲田朋美が防衛大臣になったということは朝鮮侵略戦争突入を想定しているということだ。
小池百合子は、2000年11月30日の衆議院憲法調査会の参考人の石原慎太郎(当時都知事)が現憲法を「歴史的に否定していただきたい」「内閣不信任案と同じように過半数の投票で是とされると私は思うし、そこで否決されれば私はもう何も異論を挟まない。」という発言に対し同意して、「結論から申し上げれば、一たん現行の憲法を停止する、廃止する、その上で新しいものをつくっていく」(小池百合子)と述べている。石原は現憲法の3分の2条項を否定し、過半数で否決すれば事足りると述べ、小池はそれに賛成して憲法を停止・廃止して、新憲法を制定すると言っているのである。小池は改憲論者ではなく、現憲法廃絶論者だ。
今次都議選では安倍政権と自民党都連は増田を推薦候補として公認し、小池は無所属で出た。自民党の都議会議員の全員が日本会議に参加しているという(『日本会議の正体』平凡社新書 青木理著 103頁)。安倍をはじめ閣僚のほとんどが日本会議と神道政治連盟であり、民進党の中にも日本会議メンバーがいる。
今次都議選は、自民党の分裂選挙ではなく、「自民党にはむかった小池」の演出で、日本会議が組織的に動いて圧勝したのである。連合東京は自主投票という形で小池百合子に加担した。日本会議-小池が襲い掛かろうとしているのは都教組をはじめとする首都東京の労働組合である。
ブラジルのリオデジャネイロでは五輪開幕が迫る7月31日大規模な反政府デモがたたきつけられた。「外国人のためのイベントに多くの金を使い、住民のための病院や学校の建設を後回しにしている」「五輪を理由に一部の政治家が金儲けしている」と参加者は訴えている。そのまま東京オリンピックにも当てはまる。オリンピック関連の工事は水道、都庁職をはじめ、清掃、運輸、建設等すべての労働者に被爆労働を強いることになる。都営地下鉄の24時間化攻撃、メトロとの統合、人員削減、労働強化が襲い掛かる。しかし階級闘争の火点では「神の国」の論理は通用しないのだ。
(4)「日本会議」とは何か?
小池百合子は日本会議国会議員懇談会の副幹事長、副会長を歴任してきた極右であり、拉致議員連盟の副会長も務めた。日本会議は97年5月30日に「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」の2つの組織が合流して生まれた極右組織である。「日本を守る国民会議」は81年に「元号法制化運動」などに取り組んだ団体を発展改組する形で発足した。
明治神宮権宮司(ごんぐうじ)の副島廣之(そえじまひろゆき)が初代事務総長をつとめ、作曲家の黛敏郎が引き継ぎ、1986年には高校日本史教科書『新編日本史』の編集作業を行っている。「日本を守る会」は1974年に宗教的右派団体が中心になって作られた。基軸になったのは谷口雅春を教組とする新興宗教団体「生長の家」である。「生長の家」は1930年に創設され、「日本精神の顕現(けんげん)」を訴えて軍部の戦争遂行に全面協力することにより信者を増やし、1964年に政治結社として「生長の家政治連合」を立ちあげて政界に進出した。「日本会議」は神道宗教の中心的存在である明治神宮を先頭に神社本庁を軸とする神道宗教団体と巨大新興宗教団体「生長の家」が組織的にも人脈的にも張り付いた極右組織である。1914年に結成され「八紘一宇」を造語した田中智学(ちがく)が結成した国柱会(こくちゅうかい)も「日本会議」の構成メンバーだ。
「日本会議」の「設立宣言」の核心は明治維新後に形作られた「国の伝統」であり、これを「輝かしい精華」として賛美する。したがってその「基本方針」は「1、美しい伝統の国柄を明日の日本へ 国民統合の中心である皇室を尊び、国民同胞感を涵養する。2、新しい時代にふさわしい新憲法を わが国本来の国柄に基づく『新憲法』の制定を推進する…」と続くのである。この「日本会議」の設立の前日の5月29日に「日本会議国会議員懇談会」が設立総会を開いている。この総会に出席した国会議員は代理出席を含めて115人で、半月で204人に達している。
現在「日本会議」の事務総長として実務を担っているのは椛島有三(かばしまゆうぞう)である。椛島は九州の長崎大学教養学部で「スト反対学生有志」として活動し、自治会委員長選に勝利する。椛島は「生長の家」の信者であり、「精神科学研究会」という生長の家系サークルのメンバーであった。「有志会」は翌年長崎大学学生協議会に発展し、椛島が議長に就任する。現首相補佐官の衛藤晟一(えとうせいいち)は当時大分大学の学生で、椛島に呼応して全国学生協という右翼学生の組織を形成していく。
「生長の家」の創立者の谷口雅春は「天皇への帰一の道すなわち忠うなり。忠は、天皇より流れ出て天皇に帰るなり」「大日本帝国は神国なり、大日本天皇は絶対神にまします。大日本民族はその赤子なり」と戦争に率先協力して信者を増やし、戦後もその立場を維持し続けてきた。
「日本会議国会議員懇談会」の会長を務めている平沼赳夫、衛藤晟一、稲田朋美らはこの谷口雅春の信者である。「生長の家」第3代総裁の谷口雅宜は2016年6月9日のホームページ上で安倍政権に反旗を翻し、「与党とその候補者を支持しない」という声明を発表すると同時に「日本会議」をも批判している。雅宜は「大東亜戦争は聖戦であり、明治憲法を復元すべき」としていた初代総裁の路線を否定して「侵略戦争だった」と言い始めている。「日本会議」の主力は「生長の家」の活動家や信者であるから激震が走ったのは言うまでもない。しかし「生長の家」は初代総裁の雅春によって形成されてきた。第3代・雅宜の路線転換で変わるとは思えない。
88年3月号の『祖国と青年』(日本青年協議会。日本協議会機関誌)に「紀元はいつか、創始者は誰か、そして今日誰がその精神を継承しておられるのか…神武建国、聖寿万歳をめぐっての建国論争は実に大きな意義を持っていた」と椛島は書いている。85年の「建国記念の日を祝う国民式典」が政府主催ではなく、宗教色が薄められたことに対して日本を守る国民会議や神社本庁が反発して「式典で神武建国の意義に触れることと、『天皇陛下万歳』の儀式をやることの2点は絶対譲れない」と批判し、1988年2月11日に独自の式典開催に踏み切った。このときの論争の経緯を総括しての椛島が書いたのだ。椛島はまた1990年8月号『祖国と青年』では「祭政一致の国家哲学を否定することは…まさに歴史を冒涜する暴挙」と書いている。「日本会議」は天皇中心の国家体制への回帰を願望している。天皇を絶対視し、政教分離原則など眼中にない。
「日本会議」は現憲法の廃絶、又は改憲への反革命蜂起のスタートを切った。小池の登場と第3次安倍第2次改造内閣の布陣はその現れだ。しかし労働組合を解体することなくして戦争はできない。荒唐無稽な国家神道、神武天皇を紀元とする天皇制が「日本の伝統」とする「日本会議」と天皇制が階級闘争の前面に引きずりだされてきた。革命の恐怖が反革命的跋扈の動力だ。しかしこんなおぞましいイデオロギーは階級闘争の鉄火の中では通用しない。階級的労働運動の力で改憲攻撃を粉砕しよう!
公約通り知事の報酬を半減すると言いながら、都労連傘下の労働者に賃下げ、合理化を強いようとしている。小池百合子=日本会議の跳梁を粉砕しよう! 合同・一般労働組合全国協議会は都労連、動労東京の労働者と固く連帯して小池打倒の先頭に立つ!