モモンガ冒険譚!!   作:ブンブーン

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今回は微エロがまぁまぁあります。
人によっては苦手かもしれません。


第4話 モモンガ、危機一髪

ーーーーーー

時はアイテム整理をしていた頃まで遡る。

 

 

「これは…?…ま、まさか……ッ!?」

 

 

モモンガはあるアイテムを見つけて、それを手に取った。四角いサファイアが埋め込まれた綺麗な指輪だった。

 

 

「じ、人化の指輪!?は、ハハハ…!てっきり捨てたとばかり思ってたよ!」

 

 

上位道具鑑定(オール・アプレイザルマジックアイテム)》を発動させる。間違いなく『人化の指輪』だ。

 

 

「懐かしいなぁ〜!確かこれは…」

 

 

モモンガはユグドラシル時代を…まだ仲間たちがギルドを去る前の出来事を思い出していた。

 

 

(はぁ〜〜……あの難易度で全然割に合わないアイテムだったから殆どのギルメンは破棄するか売ったんだよなぁ。)

 

 

期間限定ダンジョン『ピノキオの家』

ここを制限時間内に攻略した者にのみ贈られる記念アイテム。しかも数量限定で早い者勝ち。これを幾つか手に入れたモモンガ達はその伝説級(レジェンド)アイテムを眺めていた。

 

 

「人化の指輪ぁ〜?」

 

「うん。調べてみたけど完全ネタアイテムだね。」

 

 

訝しげに指輪を眺めるのはバフォメットの姿を取った悪魔系異形種のギルメン、『ウルベルト・アレイン・オードル』。『ワールド・チャンピオン』であるたっち・みーに並ぶ、『ワールド・ディザスター』を持つAOG最強の魔法詠唱者だ。

 

彼に『人化の指輪』の説明をしているのは同じギルメンの『タブラ・スマラグディナ』。脳食い(ブレイン・イーター)という種族を選んでおり、その外見は水を吸って大きくなった死体の頭にタコが取り付いた様な邪悪な姿をしている。

 

 

「けッ、くっだらねぇ。俺たちは異形種ギルドだぜ?随分と採算の合わない報酬を貰いましたねぇ、タブラさん。」

 

「まぁ、限定アイテムですし、集める分にはいいかなと。ただやっぱり本気で要らないと思ってる参加メンバーは売るなりにして処分してましたけど。」

 

「ほらね。あ、そういえばモモンガさんは?」

 

「モモンガさんは今、ペロロンチーノさんとぶくぶく茶釜さんと一緒に人化の指輪の実験をしてましたよ。」

 

 

それを聞いたウルベルトは悩ましげに呟いた。

 

 

「……俺も行こうかな。」

 

「興味ないって言ってた人が何を言ってるんですか?本当にモモンガさん絡みになると貴方は…。」

 

「興味ないとは言ってませんよ。それに彼は俺と親友だから良いんです。じゃ俺は早速ー」

 

「ダメですよ。この後、エンシェント・ワンさん達と一緒に『深淵』で素材集めに行く約束だったじゃないですか。」

 

「……また今度でー」

 

「前回、エンシェント・ワンさんに無理言って、貴方個人の素材集めに協力して貰ってたでしょう?『この借りは次で返します』と言ったのはー」

 

「あーもー!分かりましたよ!」

 

 

ウルベルトはトボトボとその場を後にした。彼の背中を見送ったタブラは「やれやれ」と肩を竦める。

 

一方、モモンガ達は人化の指輪の検証実験で盛り上がっていた。

 

 

「へー、こうなってるんですね。」

 

「しかもコレ、仲間限定ですけど設定介入可能みたいですよ。」

 

「ほうほう。」

 

 

早速、人化の指輪を嵌めたバードマンの姿を取ったギルメン『ペロロンチーノ』。『爆撃の翼王』の異名持つ超遠距離特化型のガチ戦闘プレイヤーである。そして、誰よりもエロスをこよなく愛する人物で『ノーエロゲー、ノーライフ』を信念としている。

 

そんな爆撃のエロ王は早速指輪の効果を発動させていた。彼の前に操作画面が表示される。

 

 

「え?…″削除する種族レベルを選んで下さい″…え、消すの?」

 

 

困惑するペロロンチーノにその画面を彼の背後から覗き込む様に見ていたモモンガとぶくぶく茶釜。

 

 

「うへぇ…人間種に姿を変える代わりに種族レベルの一つ消さなきゃならないなんて…。流石に古代の風翼人(エンシャント・ハルピュイア)は選べませんよね……最低レベル5ダウンでも。」

 

「あ、あたり前じゃないですか、モモンガさん!うーん、指輪を外せば元に戻る仕様みたいですし……でも、人化の設定はこれで全部決まるみたいですし。」

 

「レベルダウン15ですけど、選ぶなら最初期種族の鳥人(バードマン)ですかね?」

 

「85レベルか〜〜。まぁ、ネタアイテムですし…別にいいかな。」

 

 

ペロロンチーノが項目欄にある自身の『鳥人lv.15』の欄をタッチしようとした瞬間、粘体の触手が先に伸び、項目欄の中で最も希少な『神鳥(カラドリオス)lv.5』を選択してしまった。

 

 

「まどろっこしい。さっさとやれ愚弟。」

 

「姉ちゃん、鬼畜!!」

 

「黙れ、弟。くだくだしてるお前が悪い。」

 

「あらぁ〜。」

 

 

その粘体触手の正体はペロロンチーノの姉でピンク色の肉棒(スライム種)、『ぶくぶく茶』。AOGで3人しかいない女性メンバーの1人でそのアバターはまさにピンクの肉棒そのもので、曲者揃いのAOGでも一際異彩を放っている。

 

実は現実世界ではロリ系エロゲ声優でそこそこ知名度が高い。時折、その役になりきった声を発してくる事もある。弟のペロロンチーノとは仲は悪くないのだが、ゲーム中でもよく口喧嘩をしており、良くギルメン(特にモモンガ)を巻き込んでいる。弟のお気に入りエロゲーのロリ系キャラクターの声優が姉であった事を知った時のペロロンチーノはお気に入りのゲームだったが故にショックがデカかったと言う。

 

 

「決定した欄は変更不可とか…クソだなこれ。まぁ…いいや、えーーっと、なになに?次は人間の容姿を決めて下さい?よし!やっとだな!えーっと!先ずは高身長なイケメンでー」

 

「許さん。」

 

 

ここで再び姉が介入。

手慣れた手つきでキャラ設定を決めていく。

 

 

「だぁーーーー!!!???」

 

「よし、これで決定っと。」

 

 

次の瞬間、ペロロンチーノが光り輝き始めた。

「おぉ〜!」とモモンガと茶釜が眺めていると、光が消えて人間種となったペロロンチーノが現れた。その容姿は……

 

 

「な、なんじゃあこりゃあぁぁ!?!?」

 

 

ペロロンチーノの絶叫が響き渡る。

 

その容姿は余りにも醜い男性の姿があった。ハッキリ言って生理的に受け付け難い…いや、無理だ。

 

 

「ち、茶釜さん、どんな設定を?」

 

「ハゲ、デブ、ブス、オマケに低身長。備考欄には『モテないし臭い、一生童貞』とだけ書いただけだよ、モモンガお兄ちゃん♡」

 

「うわぁ…。」

 

「クソ姉ェェェェ!!!」

 

「寄るな、臭い。」

 

 

ペロロンチーノと茶釜の一悶着はあったが、それも全て指を外せば直ぐに解決すること。ペロロンチーノは元の爆撃の翼王の姿へと戻った。人化の指輪は直ぐに破棄するとの事らしい。

 

 

「さて、次は俺か。」

 

 

モモンガも指輪を嵌めてその効果を発動させる。

ペロロンチーノの時と同じ画面が映し出された。

 

 

「うぉぉぉぉ!モモンガさん!貴方も俺と同じにィィィィ!!」

 

 

悲痛な叫びを上げながら迫り来るペロロンチーノから逃げるモモンガ。その後、不可抗力にモモンガに対し不純行為を及んだとして運営側から警告メッセージが届くと、直ぐにペナルティとして1時間のログイン不可が実行された。

 

 

「あーあー。」

 

「ごめんね、モモンガさん。馬鹿な弟が。」

 

「いや、大丈夫です、ハイ。」

 

 

気を取り直して作業に戻った。

 

消す種族レベルは最初期だった骸骨の魔法使い(スケルトン・メイジ)を選択した。種族lv.15だったので、85レベルまでダウンしてしまうがどうせこの姿で戦闘に出るわけでもないので、気にはしない。

 

いよいよ、メインとも取れるキャラ設定だ。

 

 

「さてと…それじゃあー」

 

「モモンガお兄ちゃん♡」

 

 

突然、ズイッと茶釜がモモンガの目の前に詰め寄って来た。

 

 

「な、何ですか?」

 

「キャラ設定は〜私に任せて貰ってもい〜い〜?」

 

「えーー……。」

 

 

ギラついた気配で迫り来るピンク色の肉棒。彼女の趣味嗜好に任せればどんな結果になるかは自明の理である。

 

 

(間違い無く『男の娘』なんだよなぁ〜。いくら遊びと言えどそればかりは…。)

 

 

三十路過ぎのオッサンが男の娘は痛いを通り越して無の境地である。そんな姿、他のギルメンに見られたら間違い無く冷たい目線を向けられる事だろう。

 

 

「ね!ね!いいでしょ〜〜?」

 

「そ、それはやー」

 

 

後退りしていると自身の背後から無数の触手が伸びて来た。触手は目にも留まらぬ速さで操作パネルであっという間にキャラ設定を終えてしまった。しかも、備考欄にも幾つか付け加えて。

 

 

「少し私好みにして頂きましたよ、モモンガさん」

 

「えぇ!?た、タブラさん!」

 

「チッ!!」

 

 

背後に居たのはタブラ・スマラグディナだった。AOG随一の設定マニアである彼が、モモンガの人化設定をあっという間に終わらせたのだ。

 

隠す気のない舌打ちは聞かなかった事にしよう。

 

 

(確かにタブラさんならあの早技は納得だ。)

 

「フフフ、なんか面白そうだったのでつい。おや?モモンガさんのようすが…?」

 

 

モモンガが光に包まれる。

クトゥルフ神話やホラー系、グロ系をこよなく愛するタブラの設定した自分の姿に少し不安はあるがもう遅い。

 

やがて光が消える。

 

 

「ワォ!そっちもスッゴく好みよ、モモンガさん!」

 

「ほう、これはこれは。」

 

 

2人ともかなり嬉しそうな反応をしている。

一体自分はどんな人間になったのか、鏡で見てみると……

 

 

「え?俺…?」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

時は戻り…早速モモンガは人化の指輪を装備して、その効果を発動させる。

 

モモンガが光に包まれる。

 

 

(上手くいってくれよ〜!)

 

 

やがて光が消えると、そこに居たのは……

 

 

「ふぅ…成功、かな?」

 

 

黒目、黒髪の中性的に程良く整った顔立ちの青年がモモンガの装備を纏っていた。モモンガは自身の体にあの時の何の差異も起きていない事を確認すると、一呼吸を置いた後に話を再開する。

 

 

「今度私はこの世界の文明圏で活動する際は、この姿でいようと考えている。さて、ここで一つ皆に聞きたいのだが……お前達の創造主がこの私…モモンガであると言う認識はあるのか?」

 

 

この言葉に皆は一斉に頷いた。

例え姿形が変わっても、種族が変わっても、主人を見間違えるなど断固として有り得ない。それは不変の自身である。

 

皆の答えにモモンガはホッとした。姿まで変わると使役アンデッド達も使えなくなるのではないかという不安もあったからだ。最悪、敵対なんて事もあり得たかもしれない。だが、その心配もなくなった。

 

モモンガは試しにアンデッドの特殊技術(スキル)を一つ発動させる。

 

 

「『上位アンデッド創造』…集眼の屍(アイボール・コープス)。『下位アンデッド創造』…スケルトン。」

 

 

モモンガはアンデッド作成で上位と下位のアンデッド一体ずつ召喚させる。2体のアンデッドは問題無く現れた。あと、2体との確かな『繋がり』も感じる。

 

どうやらアンデッドとしての種族スキルは問題なく扱えるらしい。

 

 

(スケルトン・メイジが扱える魔法やスキルを、その上のエルダー・リッチが使えない事はない。)

 

 

あとはアンデッドの特性だが此方は流石に無くなっている事が判明した。アンデッドの弱点は消えたが、同時に食事・睡眠不要、疲労無効などのメリットも無くなった。しかし、モモンガ個人としては寧ろ嬉しい事でもあった。

 

飲食・睡眠…これを思う存分楽しむことが出来る。これは鈴木悟がリアルでは決して味わう事の無かった欲求だ。

 

 

(楽しみが増えたとも言えるかな?)

 

 

モモンガは先程召喚したばかりのスケルトンを消した後は「解散」を宣言し、アンデッド達は小屋の中へと戻って行った。勿論、警邏としてデスナイト達を使う。

 

モモンガは小屋の中へと戻った。

 

 

ーーーーーー

小屋へ戻ったモモンガは立て掛けた普通の鏡で人間の姿になった自分を改めて観察する。

 

 

(正直何となく合わないんだよなぁ〜。今の姿と俺の意識的に。って言うか若返ってるし。)

 

 

鏡の前で溜息を吐いた。

勿論、この姿であれば人間の街へ出ても問題は多分ないだろう。だが、これが自分の姿なのだと思うとイマイチ実感が湧かない。

 

本来の鈴木悟は平凡な外見…いや、ブラック企業勤めで心身共にボロボロなガリ体型。

 

 

「でも今の俺は……むぅ。」

 

 

モモンガは自身の装備で胸元や腕など露出している部分を改めて見る。

 

 

(うん。引き締まった細マッチョだコレ。肌の色も健康的だし……益々俺じゃないよなぁ。ってか、この顔……別にナルシストじゃないけど、何処か元の俺の面影があるんだよなぁ。やっぱり、あの時、タブラさんが言ってた事は…本当だったのかな?当時は恥ずかし過ぎてよく観察する事はしなかったし。それで、いつしか持ってること自体忘れて…。)

 

 

モモンガの今の容姿は、整った中性的な童顔で、身体は細身の筋肉質。肌の色も健康的だ。客観的に見れば結構モテそうな外見をしている。

 

当時、タブラは人化したモモンガの容姿についてこう語っていた。

 

 

ーー貴方の顔をモデルにしたんです。ほら、サークル飲み会で一度会ったっきりなので、思い出すのは少し苦労しましたよ。…フフフ、やっぱり元が良いから調整しやすかったですーー

 

 

モモンガは鏡で自分の顔を見ながら苦笑いを浮かべた。

 

 

「本当に凄いなぁ…タブラさんは。これを一瞬で設定するんだから。ギルド一の設定マニアの異名は………。」

 

 

モモンガの思考は停止した。

朧げな記憶中である事を思い出したのだ。正確にはそれ自体が何なのかは思い出せないが、それがある事は思い出した。

 

タブラがあの備考欄に書いたのは3、4行程度だ。

モモンガはその中身を思い出すが、部分的にしか思い出せない。こんな事なら恥ずかしがらずにちゃんと中身を把握すれば良かったと後悔する。

 

 

(思い出せぇ〜、思い出せぇ〜…!えーっと…確かぁ…。)

 

 

モモンガは徐々にその内容を思い出す。

 

 

ーー中性的な整った顔立ちで心は真っ直ぐーー

 

ーー保護欲を擽られるその容姿はーー

 

 

この時点でも恥ずかしいのだが、最も肝心なのは最後の一文。それが思い出せない。モモンガは必死にそれを思い出そうとする。場合によっては今後の生活にも影響を受けかねない。

 

 

(この世界でもユグドラシルの設定は生きてるからこそ、これは必ず把握せねば!…しかし、よくここまでやったよなぁ。アルベドの時だって………あ。)

 

 

モモンガは胸にストンと何かが落ちる様に思い出した。その途端、顔面蒼白になったの実感出来た。

 

アルベドの設定、その最後の一文…

 

ーーちなみにビッチであるーー

 

あの女神然とした美しさの化身とも言えるアルベドが実はビッチと言う設定に気付いたのはサービス終了間際で、モモンガはそれを『モモンガを愛している』と訂正してしまった。

 

タブラはギャップ萌えを好む性分。「え!?こんな見た目なのに実は◯◯◯だったの!?」みたいなのを好むのだ。

 

そして、モモンガの人化設定にある備考欄。そこにタブラが書いた設定、最後の一文は…。

 

 

ーーちなみにヤリ◯ンである。

 

 

「た、タブラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!??????」

 

 

モモンガの絶叫がグリーンシークレットハウス全体に響き渡る。

 

 

「いやいやいや、童貞の俺がそんな…ありえない、うん。絶対にありえない!!だいたい矛盾し過ぎだろうが!?童貞なのにヤリ◯ンって!!しかもこの見た目でそれって…色々ヤバいだろうが!!??」

 

 

床を転がりながら悶えるモモンガ。そこでハッと何かに気付いたのか直ぐに立ち上がった。それは今まで当然にあり過ぎたが故にそれが今ある事に気付かなかった。オーバーロードでの生活がまだ短過ぎたのもその理由の一つとも言えるかも知れない。

 

モモンガは震える手でローブの裾を胸元辺りまで上げた。そして、男なら当然あるモノへ目が向う。

 

 

「え…?なに、このサイズ…?」

 

 

モモンガは絶句した。

 

自分がよく知るムスコはそこにいなかった。全く別のムスコがぶら下がっていたのだ。長さ、太さ、形…全てが違う。

 

 

(で、デカ……)

 

 

逞しく、そして凛々しい巨根がそこにあった。竿だけではなく、袋の方も凄く逞しい。こんなのは設定には書いてないが、間違いなく、最後の一文の影響がココに現れているのだろう。

 

凄いを通り越して恐怖を感じたモモンガはソッとロープの裾を離し、下半身を再び隠した。

 

そして、もう一つ気が付いた。

 

ローブの下は全裸であることに。

 

 

ーーーーーー

(はぁ……漸く落ち着いた。)

 

 

モモンガはソファに腰掛けて一度心の整理をしていた。かなり動揺したが、徐々に落ち着きを取り戻す事は出来た。

 

因みにまだ姿は人間のままである。これからの生活においてこの姿はやはり必要不可欠。少しでも慣れていく必要がある為、敢えて元の骨の姿には戻らない事にしていたのだ。

 

 

「しかし、我がムスコながら何と恐ろしい。」

 

 

モモンガは先程の自分のムスコを思い出していた。彼は今日まで女性経験ゼロの童貞で、そもそもソッチ系にはペロロンチーノ程にハマった試しが無い。故に平均サイズなどは全く不明なのだが、少なくともそれを遥かに超越しているサイズだったと何となく分かる。

 

ハッキリ言って今の容姿のモモンガには少し不釣り合いである。

 

 

ーーそこが良いんですよ。それがギャップなんですよ、モモンガさんーー

 

 

ここにタブラがいればそう答えただろう。

 

まぁ今はいいやとモモンガは暖炉キッチンへ顔を向けた。実は心を落ち着かせる為に、他にも実験をしていたのだ。

 

 

(料理系スキル無しで、この世界で料理は出来るのか……結果は微妙だったなぁ。)

 

 

結果は野菜ひとつ切る事は出来なかった。

モモンガが魔法で作った包丁を使い木の実を切ろうとした瞬間、モモンガの手から包丁と木の実が、まるで同極の磁石が反発し合う様に突然離れたのだ。

 

 

(やはり料理はその手のスキルが無いと無理、か。これは少し残念だな。)

 

 

無論、木の実をそのまま食べたりする事は出来たし、木の枝に刺して丸焼き程度も出来た。だが、本格的な料理そのものはダメなのだ。因みに暖炉に火を付けてお湯を沸かし、お茶を作るーーただ木の根を煮込んだだけーーことはできた。

 

 

「その辺の違いについても後日調べる必要があるな。」

 

 

モモンガは料理の調査も心のメモに書いておく。

 

 

「さてと…。」

 

モモンガはソファから立ち上がる。

 

魔法の力が掛かった神器級のローブだから恐らく気のせいである可能性は高いが、心無しか身体に当たる微風が冷たく感じる様な気がした。

 

それ自体は気のせいなれど、そう感じる原因は未だにローブの下が裸である事にある。

 

 

「下着になり得る物は一応、持っては来たが。うーむ、どれがいいか?」

 

 

モモンガは上下一式の下着を幾つか取り出した。

全てがつい先程宝物庫から持ってきた物である。

 

 

「だがその前に…。」

 

 

モモンガはチラリと暖炉キッチンへ目を向けた。

先の料理実験でかなり散らかしてしまったままだったのだ。片付けるにしても少し面倒臭い。

 

 

(こういう時こそ使役アンデッドだ。)

 

 

今、外を警邏しているデスナイトは論外。エルダー・リッチは洞窟の件もある為、少し呼び辛い。グは論外。

 

 

(そうなるとやはり新しいのを作るしかないか。うーん、何がいいか?)

 

 

無難なのはスケルトンだ。しかし、どうせなら他の種類も試したい。悩んだ末にモモンガはヴァンパイア系のアンデッドを作る事に決めた。

 

 

「ヴァンパイア系で雑務を卒なく行える奴と言えば……うん、アレだな!」

 

 

モモンガは早速『下位アンデッド作成』を発動させる。

 

 

「御命令を…モモンガ様。」

 

「うむ。早速だが、あそこのキッチンを片付ける事は可能か?」

 

「ハッ。」

 

「では、よろしく頼む。」

 

 

モモンガが作成したのは『吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)』。白蝋じみた血の気が完全に引き切った肌にルビーの如く輝く瞳を持ち、赤い唇からは鋭い犬歯が僅かに姿を見せている。露出の高い衣服を身に纏い、非常に美しい成人女性の外見をしている。

 

 

(確かペロロンチーノさんが作ったNPCの側仕えとして、ヴァンパイア・ブライドを使ってるって聞いたな。その真似ってワケじゃないけど。)

 

 

ヴァンパイア・ブライドは直ぐにキッチンへと向かい、散らかった道具や木の実やらの片付けを始めた。その様子をウンウンと満足げに眺めていたモモンガは、自分は上下一式の下着を決めようとした。

 

 

(ん?…あ、あれ?)

 

 

モモンガは自分の胸に妙な違和感を覚えた。何となくだが、少し苦しい……息苦しさのようなものを感じたのだ。

 

 

(気の、せい?……いや、これは!!)

 

 

謎の息苦しさと胸苦…動悸は瞬く間に激しさを増し始めた。

 

気のせいなどではなかったのだ。

 

 

「う、うぅ…!どうなって…!?」

 

 

耐え切れずモモンガは両膝を床に付けてしまった。動悸が強くなると比例して身体も熱くなる。

 

 

(まさか…人化の指輪の状態異常効果!?いや、そんな物はなかった筈!でも、この世界に来てアイテムの効果が変わった可能性も考えられる!いや、俺の感知網を突破した敵が現れて攻撃している可能性も…!!)

 

 

考えられる可能性は沢山あるが、先ず試すべき事は人化の指輪を外すことだ。殆どの状態異常無効の種族スキルを持つ死の支配者(オーバーロード )ならばこの状態も直ぐに無効化出来るだろうと考え、人化の指輪に手を伸ばした。

 

その時、異変に気付いたヴァンパイア・ブライドが大慌てでモモンガの側へ向かった。

 

 

「も、モモンガ様ッ!どうかなさいました!?」

 

 

モモンガの傍らへ近付き、両膝を付き主人よりも低い目線から彼の容態と要望を伺う。酷く心配した様子の彼女の表情を見て、モモンガは申し訳ない気持ちになる。

 

 

「す、すまない…大丈…ウッ!?」

 

 

モモンガが彼女を至近距離から見た途端、動悸と身体の熱気が一気に上昇した。意識とは違う…何かがモモンガから離れようとしている事に気付き、必死にそれを留めさせようと抗う。

 

 

「モモンガ様ッ!?」

 

 

悲痛な声を上げるヴァンパイア・ブライド。最早、モモンガはまともに返答する余裕も無くなっていた。

 

 

(何故だ…ッ!?彼女を見た途端……ん?)

 

 

モモンガは慌て過ぎて気付かなかったが、自身の下腹部より下の部分にある違和感を感じた。それはモモンガも知る感覚だった。慌ててモモンガは股間を押さえ、床に付けている膝をやや内側に向ける。

 

ヴァンパイア・ブライドの顔が近付くと、下のアレが更に盛り上がるのをハッキリと感じた。まるで鍛え抜かれた鉄の如き硬度。

 

モモンガはこの現象の正体に気付いた。

 

 

(まさか…は、発情?…せ、性的興奮をしているのか!?俺は!?)

 

 

そうとも知らずにヴァンパイア・ブライドは自分の容態を必死に確認しようとしている。何と情けないことか。こんなにも心配させておいて、その原因がただの発情だったなんて、アホらしいにも程がある。しかし、それが今も自分を苦しめているのは間違いなかった。

 

 

(意識とは違う……俺から離れそうになってるソレは……『理性』って事か…?)

 

 

ならば尚更、死守せねばならない。

その為にはヴァンパイア・ブライドを消す必要がある。モモンガは直ぐに彼女を消そうとした。

 

その瞬間、ヴァンパイア・ブライドが自身の下腹部より下……股間部分へ目を向けた。

 

そして、気付いた。

 

気付かれてしまった…。

 

 

(あーー……幻滅されるなぁ。)

 

 

諦めの境地に立つモモンガ。彼女のこの後の行動は悲鳴を上げながらモモンガから離れ、立ち上がるや否や「変態!」のオンパレードを浴びせてくる事だろう。

 

だが、モモンガの予想は見事に裏切られた。

 

 

「ソレが御所望でしたら…そう仰って下されば…。」

 

「へ?」

 

 

ヴァンパイア・ブライドは頬を赤めながら満更でもない…というよりも嬉しそうな微笑を向けながら薄絹の白いドレスを肩からスリルと脱ぎ始めた。

 

モモンガの動悸は更に加速する。

既にヘソ以上の位置まで反り返ったムスコも連動するように脈動し、限界まで膨張しズキズキと痛む。

 

 

「い、いやいやいやいや!!??」

 

「私は主様の僕でございます。お望みとあらば……」

 

 

スルリ…スルリ…と服の一部が肩から落ちて行き、僅かな布面積で守られていた乳房の重要部分があと少しで露わになる。

 

モモンガの理性も限界寸前だった。

 

 

「あ、あぁ…!それは…!」

 

「どうか…」

 

 

スルリ……

 

 

「遠慮…」

 

 

あと少し…

 

スルリ…スルリ…

 

 

「なさらないで…下さい」

 

 

あと少しで……

 

(も、もう…ッ!!!)

 

 

モモンガの理性も皮一枚で繋がった状態だ。

 

そして、彼女の乳房が完全に露わになる瞬間ー

 

 

「ご、御苦労!!消えて良し!!!!!」

 

 

ヴァンパイア・ブライドは消滅した。

 

タブラが付けた設定とモモンガの理性。

紙一重ではあったがモモンガの理性の勝利だ。

 

 

「あッッッッぶねぇぇ!!」

 

 

モモンガはゼェゼェ息を切らしながら床に座っていた。ほんの僅かでも気が緩んでいたら……恐らく自分はヴァンパイア・ブライドを貪り食らっていただろう(意味深)。

 

動悸も熱気もだいぶ治ったが、まだ燻るようなモヤモヤ感が残っている。作業に悪影響を与える程ではないだろうが、地味にアッチが痛痒い。

 

 

「はぁ〜〜〜やっぱり生身は…不便だなぁ。」

 

 

モモンガは山小屋の窓カーテン全てを閉めた。

 

またいつ起きるのか分からない。

モモンガは自らのムスコを鎮める為、自涜を行う事にした。まさか丸一日も掛かるとはこの時、夢にも思っていなかった。

 

そして、単純に指輪を外せば済む事に気付いた頃には……既に事を済ませたあとだった。




モモンガ(人間)
…中性童顔の程良いイケメン
 細マッチョ
 黒髪、黒目
 巨根 
 ちなみにヤリ◯ン

童貞には辛いね。

……次回から漸く、外部との接触が始まります。
え?遅い?…ごもっともです。すみません。


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