佳代

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うちの実家の隣に
軽いダウン症の娘がいる
今もう45歳
数年前まで工場で
単純作業の仕事を
していたが
出て行くときも帰って
来る時も歌を歌って
るのでうちのおっかあは
佳代が来た言う事が分かる
歌を歌いながら傘を
上下に振って
幸せは歩いてこない
だーからー歩いて
行くんだねっーと
同じ歌を大声で歌う
その傘の振りが酷く
危なくて近くを
歩けたもんじゃない

佳代は親の溺愛のせいで
家では暴君
私が帰って来るのに
合わせてなんで
飯がないんだ 
クソババア死ねと
怒鳴る声が聞こえる
発狂するのだ

ここ数年仕事を
辞めたらしい
なので朝九時から
小樽中を傘持って
歌いながら
歩いて夕方帰って来る

おっかあが魚を買いに
小樽の端っこに車で
行ったら歩いてたらしい

最近佳代は太鼓を
買ってもらったらしい
だからリュックに
傘を刺して太鼓を
抱えて叩きながら
歌ってるらしい
鼓笛隊だ

いまは太鼓の音で
佳代が帰ってくるのが
わかる
こら 佳代様の
お帰りだ言うの
クッソババア
と言う声が聞こえる
 
佳代ちゃん
ごめんね
怒らないでね
ご飯できてるよ

うるせい
ババア一日中
家にいて
飯作るの
当たり前だべ
殺すぞ
馬鹿野郎

このような会話が
聞こえて来るのを
うちのおっかあが
聞いて
佳代の三倍の声で
うるさいわ
このクソガキ
殺すぞ
と怒鳴る日々なのだ

佳代
見た人はまず引く
次は笑う
だがその正体は
悪魔のようなのだ