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転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第七章 マリンフォード教国編

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第一話 暗殺

新章スタートです。

ストックあるので毎週更新予定です!

 

 白で統一された街並み。その中央に誰もが見上げ息が漏れるほどの白亜の立派な神殿。

 マリンフォード教の本殿であり、マリンフォード教国の中心ともいえる場所。

 豪華な装飾をされた部屋に二人の黒尽くめの男が立っている。そして床には真っ白なローブを着た老人がうずくまっていた。

 白いローブの所々赤く染まっている。


「……うぐぐぐぐ……」


 白いローブの老人は痛みからか唸り声をあげるが、男たちは気にすることもなく、その老人を蹴り上げて痛みを与えていた。


「そろそろ宝物庫を開ける気になったか?」

「……そんなことは……できん……。開ける訳にはいかないのだ……」


 痛みを堪えながらも宝物庫を開けることは拒否する教皇。しかし襲撃者たちは次の手をとった。

 扉からもう一人の黒尽くめの現れ、片手には意識のないまだ幼い少女を抱えていた。

 教会本部では、加護を持った孤児を見習いとして育てていた。大きな神殿を管理するにはそれなりの人数がおり、下働きをしながら信仰を深め、将来各国の街に司祭やシスターとして派遣されている。

 男はまだ幼い少女を三人捕まえてきたのだ。少女達は男にナイフで脅され身を寄せて震えている。


「宝物庫を開けないなら順番にガキどもを始末していくか。教皇様は何人まで耐えれるのかな?」


 ニヤリと黒い笑みを浮かべた男は、一人の少女を捕まえるとナイフの刃先を少女の首元に当てる。


「……待ってくれ! 子供たちに危害は加えないで欲しい……」

「そんな言葉は聞いてねーよ。開けるのか開けないのかどっちなんだ?」


 男の持っているナイフの刃が少女の頬をなぞるように滑らせると、頬には紅い直線が出来、そこから出血が起きた。


「……きょ、教皇さま……」

「フフフ。次は首かな? まだ他に二人もいるしな」


 男は頬から首にナイフの刃先を向けた。

「むぐ……。わ、わかった……」


 教皇は拳を握りしめ、宝物庫を開けることにしたのだった。

 少女たちはその場で縛られて、その場で転がされ、教皇が先頭に立ち宝物庫へと向かった。

 深夜の神殿内は静かで、廊下に歩く足音だけが響き渡る。

 数分歩くと、宝物庫がある扉が見えてきた。

 神殿の宝物庫は厳重に管理されており、扉に設置されている水晶に教皇が魔力を流すことによって解錠される。

 歴代教皇が交代の儀の際に、魔力登録を行うことになっている。

 他の者が無理やり開けようとすると、警笛が鳴るようになっており、すぐに神殿騎士が駆けつけることになっている。


「ほら、早く開けろよ。開けないとさっきの小娘たちが……わかってるだろ?」

「わ、わかった……。今開ける……」


 教皇は震える手を水晶に起き魔力を流していく。同時にガチャリと解錠される音がした。


「ほら、開けろ。さっさと中へ入れ」


 もう一人の男がへいへいと言いながら、扉を開けると、中は財宝や書物、宝飾品で溢れていた。


「こりゃーすげーぜ。これだけあれば一生遊んで暮らせるだろ」

「そんなことはいい、目的の物を探せ」

「……わかったよ」


 一人は教皇の背中にナイフを当て、残り二人が宝物庫の中を物色していく。


「お主達は何が目的なのだ……?」


 教皇が弱々しく問いかけると、男は顎に手を当て少しだけ考える。


「まぁいいか。俺たちの目的は『召喚の宝玉』だ。ここにあるだろう?」

「な、なんだとっ!? そ、それは……」


 想定外の目的に教皇は目を見開く。教皇も賊が宝物を狙っているのかと思っていた。しかしマリンフォード教にとって最重要な召喚の宝玉など持ち出されたらとんでもない事になる。


「おーい。こっちに重要っぽい箱があるぜ? ほら、中は宝玉っぽい。多分これだろ」

「あー、そうだな。目的の物見つけたし……なんだこれ」


 宝物庫を漁っていた二人は、並んで置いてあるもう一つの宝箱に目をつけた。その宝箱は召喚の宝玉よりも重要なのか、宝箱の周りをさらに鎖で巻いてある。

 誰が見ても重要な物だと感じられた。


「これくらいなら持っていけそうだし、依頼主も喜ぶんじゃねぇか? 追加報酬貰えたりしてな」

「まぁいい。それくらいなら持っていけるだろう」


 二つの箱をマジックバッグに詰め込んだ二人は、ついでとばかりにいくつかの宝物を一緒に入れていく。


「これくらいはボーナスとしてもらっておかないとな」


 男二人は入り口で待っていた教皇達に合流した。


「目的の物はあったのか?」

「もちろん。ついでに色々と詰め込んでおいたぜ」


 教皇にナイフを突きつけてた男は少し呆れた表情をしながらも頷いた。


「よし、これで用事は済んだな。あとは……」


 男はにやりと笑みを浮かべて、そのままナイフを教皇の背中に突き立てた。


「うぐっ……ぐはっ」


 教皇は血を吐きそのまま倒れていく。


「おい、回復魔法使えるんだから、ちゃんと始末しないとだめだろう?」


 もう一人の男が懐から出したナイフをさらに突き立て、教皇の絶命を確認した。


「これで国に戻れば一生遊べるな。早く戻ろうぜ」

「あぁ、明日までは平気だろう。早く逃げるぞ」


 生き絶えた教皇をそのまま放置し、黒尽くめの男たちは神殿から消えていった。


 

 翌日。教皇の部屋に迎えにきた司祭が、縛られた子供達を発見し、事件が露呈した。

 扉が半分開かれたままの宝物庫からは刺殺された教皇が発見され、マリンフォード教国は大騒ぎとなり、各国へと一気に情報は広まったのだった。


 

 


いつもありがとうございます。

原稿作業頑張ってます!

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