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転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第六章 魔族国編

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第十六話 過去の戦い

お待たせして申し訳ありませーーーーーん!(土下寝)


 唖然とする民衆。

 突如として暴走をした魔王四天王のうちの三人。

 二人はカインに呆気なく始末され、残されたのはセトと意識を絶たれたアグスのみ。

 アーロンの意識がなくなったことで、なんとか収束を図れたが、あのままアーロンの意識を保ったままでいたらどうなっていたかわからない。

 カインが全力で魔法を放てばこの帝都もただでは済まない。でもそれくらいしなければアーロンを相手にするのは難しいと思っていた。

 逆にアーロンは他の者の存在など、道具にしか見ていなかったであろう。周りにいくら被害が出たとしても関係はない。

 カインが不利だったのは目に見えていた。

 沈黙が続く中、リザベートが一人演台へと向かう。大きく息を吸い込み、口を開いた。


「皆の者。これが現実だ。魔王のうち三人は我ら皇族を亡き者にしようと企んでいた。こうしてカイン殿がいなければ魔皇帝である兄も命を落としていたことであろう。そして皆にも被害があったかもしれない。魔王三人を相手にしても引かない実力。私たち魔族は実力主義ではないのか? 実力を見せつけてくれた人族に対し敬意を払うべきではないのか? それでもまだ文句を言う者がおるならわしが相手をしよう」


 民衆から返ってきたのは――――割れんばかりの声援だった。


 リザベートはその歓迎の声援に対し、口元を緩ませ、そして手を大きく上げた。

 同時に声援は一斉に鳴りやむ。


「皆の気持ち確かに受け取った。これからカイン殿を含めた人族との協議をし、また皆に知らせることになると思う」


 リザベートの隣にログシアも立ち、改めて無事であることを民衆に知らしめる。


「皆の者。こうして私も無事だ。カイン殿がいなければ私は胸に風穴を開けてそのまま死んでいたであろう。改めてカイン殿とは感謝を込めて個人的にも友誼を結びたいと思う。新しい人族の友人として皆も祝ってくれ」


 ワァァァァァァァァァァァ――――!


 声援が響くなか、皇族としての演説は終わった。


 冷めやらぬ興奮は民衆を酒へと誘う。あちこちで酒宴が催されていた。カインの戦いを目にした者。ログシアやリザベートの演説の内容についてなど。

 魔王三人が皇族を亡き者にしようとしていたことも含まれていた。

 酒宴を楽しんでいる民衆とは別に、城の中の応接室には重い空気が流れていた。


 部屋に同席しているのは、ログシア、リザベート、セト、そしてカインであった。

 アグスはすでに魔封じの腕輪をつけられて、この城の最下階にある要注意人物を収監するための厳重な牢屋に収監されている。


「さて、これから次の魔王が就任するまではセト殿一人になる。少しの間頼むぞ」


 ログシアの言葉にセトは大きく頷いた。セトは大切な友人としてカインとしても手助けが必要ならするつもりでいる。

 ただ、この帝都に関しては問題ないだろうが、他の魔王を治めていた国ではどうなっているのかは不明である。

 人族に対して友好的でない国もあるとカインは聞いていた。

 ただ実力主義の面があるので、カインが武力で圧倒すれば問題ではない。


「あと……カイン殿、聞いてもいいか? アグス達が取り込んだ物についてだが……」


 ログシアやリザベートは真剣な表情をしてカインに視線を送る。実際にあの結晶を取り込んだ者がどうなったのかを目の当たりにしたら、その対策を練らないといけない。

 カインもその説明をするのにあたって、自分のことを話す必要があり、少しだけ戸惑ったが、意を決して話すことにした。


「ここから話すことは胸の中で留めておくようにお願いします。でなければ私も話すことが出来ません」


 カインの真剣な表情にログシアは息を飲んだ。


「約束しよう。この帝国の皇帝の何において」

「妾も約束するぞ。他の者には言わん」

「ワシも。他に話すことはない」


 全員の意思を確認したカインは説明を始める。


「まず、あの結晶は邪神、元は遊戯神アーロンを封印した物です。300年前にアーロンは堕神してこの世界を破滅においやろうとした。その時召喚された勇者たちとの戦いで多くの犠牲を払いながら封印されました。その封印された結晶はいくつにも砕かれ、各地へと密かに運び込まれ人目につかない場所に隠されました」

「「「…………」」」


 カインの言葉に最初から絶句した三人だった。

 神がこの世界にいるのは認識しているが、その神自身が世界を破滅に追いやると説明されても簡単には納得などできない。


「…………なぜ、カイン殿はそのことを……? あのアグスに乗り移ったアーロンはカイン殿のことを知っているようでしたが……」

「それは……実際に過去にもアーロンの意識を持った者と戦ったことがあります。今回のように意識を乗っ取られるようなことはなかったですけど……」

「それにしても詳しすぎる気がするが……」

「それは……実際に戦った――勇者のユウヤさんから直接話を聞きましたから」


 カインの言葉に再度三人は絶句した。

 勇者ユウヤに関してはエスフォート王国建国した初代国王であり、共にアーロンと戦った中にも魔族はいた。

 だからこそその歴史は本にされ、この帝国にも持ち帰られた。

 この帝都でも重要な歴史書とされ、書庫に大事に仕舞われている。

 ログシアもリザベートも皇族として勉強の一環として一度は読んだことがあった。


「……っ!? なんとっ!? 魔族にも歴史書はあり、数百年前の人族の戦いのことは過去に本で読んだことはある。もしや……勇者はまだ健在なのかっ!? 人族の寿命はそこまで長くはないだろう……?」


(そういえば……ユウヤさんは実際、亜神になっているしな……。神と説明していいものだろうか……)


「それについては――――」

「待った!」


 ログシアでもリザベートでもセトでもない声が部屋に響いてきた。

 咄嗟に部屋内に緊張が走る。

 そしてカインが声の方角へ顔を向けると……。


「よ、久々だな。カイン。そこからは俺が説明しよう」


 ラフな格好をして笑みを浮かべた勇者であるユウヤが、壁際に立っていたのだった。


 



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