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転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第六章 魔族国編

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第十五話 決着

更新遅れて申し訳ございません!!!おまたせいたしましたっ!!!

5巻が発売され、オリコンでもライトノベル部門週間1位になることができました。

応援していただいた皆様のおかげです。

ありがとうございました。


 

 演台での戦闘を固唾を飲んで見守っていた民衆もログシアが立ち上がったことに驚きの表情をしていた。

 自分たちの目の前でデニスによって胸を貫かれていたのだ。即死であったとしてもおかしくない。

 しかし服は破れているものの、怪我をしているようには見受けられなかった。

 ログシアはリザベートに一度視線を送り、大きく頷いた後、演台の中央に立った。


「皆の者、心配をかけてすまない。私はこうしてカイン卿のおかげで無事だ。まさか魔王の三人が戦争を企んでいるとは私も思わなかった。いや、わかっていたが気にしないようにしていた。しかし、今回の凶事によって皆もわかったであろう。カイン卿は信頼に足る人族だ。私はこの国の代表としてではなく、個人を持って友誼を結びたいと思う」


 ログシアの言葉に民衆の歓声が湧いた。

 カインも民衆の歓迎に笑みを浮かべ、リザベートと目を合わせ頷きあう。

 しかし認められない魔王ーーアグスはセトに身体を押さえつけられながらも片手を胸元から二人の魔王が飲みこんだ欠片よりも一回り大きな結晶を飲み込む。


「……絶対にそんなこと認めない。私が魔族を全てまとめるのだ……うぐぐ……ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 一際大きな叫び声をあげたアグスの身体は血管が浮き出て脈動を打ち始める。

 次第にその身体は筋肉が膨れ上がり、押さえつけていたセトは片手で軽く振り払われる。


「ぐはっ」


 セトは勢いよく吹き飛ばされ、身体がふた回りほど大きくなったアグスはゆっくりと立ち上がった。


「うははははははっ! これだ。これこそが力だっ! 力こそが魔王の象徴! 血などで語り継がれるべきではない。魔族は力が全てだっ! だからこそワシが全てを治めるの……」


 アグスは立ったままそのまま白目をむき意識を失った。

 しかし数秒で白目を向いていた表情はゆっくりと笑みを浮かべた。


「あーあ、意識を無くしちゃったか。まぁその方が自由にできるからいいんだけど……。うん? 君は……あぁ久々だね。相変わらず創造神(じじいたち)の使徒をやってるんだ?」


 アグスの声は先程とはまるで違っていた。

 三メートルを超える身体からは少年のような声が響き渡る。

 カインにとってもそれは聞きたくない声であった。

 ――コルジーノの時と一緒だと……。


「……まさか、――アーロン……」


 カインの言葉にアグスは不敵に笑う。


「一応こう見えても神なんだけどね……」


 しかし二人の会話にログシアやリザベートが絶句する。

 アグスだと思っていた男はアーロンといい、そして神と名乗っているのだ。

 魔族も神の存在は知っているが、神よりも皇族を敬うのが普通であった。しかし皇族として神の事を知っていた。


「……まさか神が降臨なされた……」


 ログシアが小声でつぶやくと、カインは首を横に振る。


「アーロンは、元々遊戯神だったけど、今は――邪神です」

「じゃ、邪神……?」


 ログシアから返ってきた言葉にカインは頷く。そうしてアイテムボックスから取り出した剣をアグスに向けた。


「僕に剣を向けるのかい? これでも今まで以上に身体は動くから完全とは言えないけどそれなりに強いよ?」


 アグスの身体を乗っ取ったアーロンは片手をあげるとそこには黒い靄が発生し、次第に剣へと姿を変えていく。

 その剣からは禍々しい黒い瘴気が溢れ出ており、カインも眉間にシワを寄せる。


「二人ともこの場から離れて。セトは二人の避難を頼む。あと民衆にも逃げるように」


 カインの言葉に三人は頷き、演台から下りていく。

 セトが大きな声で民衆に逃げるように伝え、その声に民衆は蜘蛛の巣を散らすように逃げ始めた。

 その間、カインとアグスは視線を交わしたまま身動きひとつしない。


 数分経つと先程まであれだけいた民衆の影は見ない。カインは剣を握り直し剣先をアアグスに向けた。


 身体強化をし、一気にアグスに駆け寄り剣を一閃するが、軽くアグスに受け止められる。鍔迫り合いのまま二人は動きを止める。


「ふーん。それなりに強いみたいだね。使徒なだけはある。でも、これくらいじゃ僕を倒すことはできないかな」


 軽く剣を振るうと、カインはそのまま投げ出される。

 体制を整え、着地したカインは今までにないほどに強い敵に思わず苦虫を噛み潰したように表情を歪めた。

 さらに魔力を込めていつも以上に身体能力を向上させたカインであっても、さすがは神と言うべきか全く動じずカインの剣に合わせていく。

 何合も打ち合うが、その破壊力はとてつもなく風圧で周りの建物が崩壊していく程であった。


「……これでもだめか……。どうだけ強いんだよ……」


 剣を持つ手に力を込め直し、アグスに挑むが難なく剣を合わされる。

 一度後ろへと下がり、どのように攻めるか思考するカインに、アグスは呟いた。


「あぁ……時間切れか……。仕方ない。また会おう。創造神(じじい)の使徒よ」


 その瞬間にアグスの手に持っていた禍々しい剣は――消えた。

 先ほどまであった威圧感が消えると、アグスは不思議そうにカインに視線を送った。


「……なんだ。俺は――どうしたんだ?」


 自分がどうしてここに立っているのかわからず困惑しているアグスにカインは安堵の息を漏らす。


「意識がなかったのか……。ならちょうどいい」


 カインは一瞬にしてアグスの背後に移動すると、首元に一撃を与え意識を奪い取る。

 意識のなくなったアグスはそのまま前へと倒れていった。


「……神だけあってやはり強いな……」


 意識のないアグスを見下ろしながらカインはそう呟いた。


 




5月31日にコミック2巻も発売されております。

ノベルス同様ですぐに品薄になるかもしれません。是非、手にとっていただければありがたいです。

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