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転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第六章 魔族国編

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第十三話 裏切り

ノベルス五巻が5月15日発売になります!そしてコミックも同月31日に発売予定です。

 

 二日間で城の前には住民に演説するためのステージが組まれた。

 この国では皇帝が自ら住民の前に立ち説明すると教えられ、カインも納得した。

 しかし、魔皇帝は現在療養中で誰とも会うことしないので、代わりに皇太子であるログシアが説明することになる。

 また、同時にリザベートの帰還と人族との戦争を行わないことの告知も行うことになっている。


「あとは皇太子殿下が住民に説明すれば、きっと納得してくれるはずです」

「何もなければいいんだけど……。それだけが心配だな。他の魔王たちはあれだけ反対していたはずなのに静かだし……」


 あれだけ開戦派であった魔王たちがこの二日間静かだったことにカインは心配していた。

 ダルメシアを呼び、城内の情報を集めるように指示し、自らは客人として振る舞うことに徹していた。

 さすがのダルメシアでも同じ魔族の、ましてや魔王クラスには気配を隠すことは不可能だと告げられ、魔王たちの密談については情報が入ってこなかった。

 不安を残しながらも式典への出席となった。


「そろそろ時間です。移動をお願いいたします」


 部屋に呼びにきた従者の後をついて城を出ると、ステージの前には多くの民衆が駆けつけていた。

 やはり皇族、魔王が集まる演説は人気であり、一目見ようと皇都に住んでいる住民が集まっている。

 そんな中、カインはステージに用意された椅子に座る。

 中央の演台を挟んで反対側に魔王四人が並んで座り、カインの横にはリザベートが座ることになった。


「そんなに緊張しなくても問題ない。平和な式典じゃからの」


 眼下にひしめいている民衆を眺めながらリザベートが呟く。

 声援が上がる中、ログシアが席を立ち演台へと上った。

 ログシアの姿を見て、さらに大きな声援があがるが、ログシアが片手を上げるとピタッと鳴り止んだ。


「皇太子のログシアだ。急な布告であったが多くの住民に集まってもらって感謝する。まずは無事にリザベートが戻ってきたことを報告させてもらう」


 ログシアの言葉に合わせ、リザベートが立ち上がり一度前に出て手を振る。

 それに合わせて今までで一番大きい声援があがった。

 リザベートは笑みを振りまいた後、席に戻りカインを見てにっこりと笑う。


「妾の人気も大したもんじゃろう」

「あぁ、住民が喜んでいるのがよくわかるよ」


 魔族を取りまとめている国だけあって、皇族は人気であった。

 そして、またログシアの演説が再開される。


「たしかに、リザベートは人族国家で色々と苦難もあった。しかし無事に帰ってきた。一時期は人族国家に対して宣戦布告を考えた。しかしーー」


「殿下を痛めつけた国家など潰してしまえっ!」

「「「そうだ、そうだっ!!」」」


 人族に対しての反感はやはり高い。それだけリザベートが捕らえられたことが大きかった。


「だが、人族によってリザベートは助けられ、こうして無事に人族によって戻ってこれたのもたしかなのだ。そして人族国家の代表と話を重ね、わたしは和平を結ぼうと思っている。これからはーー」


「待ってくれっ!」


 魔王の一人であるデニスが声を上げた。

 ログシアはデニスを睨め付けるが、それを気にせずログシアの横に立った。


「皇太子殿下はこう言っているが、本当にお前たちは人族を許せるのかっ!? リザベート殿下は、人族国家で――奴隷扱いをされ、殺されそうになっていたんだぞっ! そんな人族を許せるのかっ!? わしは許せぬ! 誰がなんと言おうが、許してはいけない!」


「そうだっ! 人族など蹴散らしてしまえっ!」


 民衆から賛成の声が多数あがる。

 ログシアはその住民の声援に苦笑し、そしてデニスを睨みつけた。


「……デニス、どういうことだ……?」


 睨みつけるログシアの言葉を聞き流しながら、デニスの言葉は続けた。


「魔王である俺たち三人が開戦に向けて賛成なのに、殿下はこうして人族相手に尻込みしているっ! 俺たち魔族は人族なぞに負けるはずがないっ! そうだろっ!?」


 デニスの投げかけに民衆は声援を持って応える。

 セトは怒りで立ち上がろうとするが、両側からイグニスとアグスに押さえつけられた。


「ぐっ……。お前らっ!」

「ふんっ、自業自得だな、セト殿。お主も賛成に回っていればよかったものを……」


 押さえつけられたセトは、カインに視線を送る。

 しかし、ここでカインが魔王たちを押さえつけたら、民衆の反応は一気に開戦に向けて進んでしまう。

 座ったまま力強く拳を握りしめた。そんな拳の上に優しくリザベートの手が乗せられた。

 リザベートはカインと視線を交差させると、ゆっくりと頷き立ち上がる。

 ログシアの横に立ち、右手を高々とあげた。


「皆のもの、妾の言葉を聞くのじゃ。たしかに人族の国ではひどい目にもあった。だが、いい出会いもあったのじゃ。それを含めて妾たち皇族は戦争を行わないと決定したのじゃ。魔王であるデニス殿がなんと言おうが戦争を始めるつもりもない。そのために人族から代表が参っているのじゃがからな。紹介しよう。人族国家から訪れたカイン殿じゃ」


 リザベートはカインに視線を送る。

 カインもこの状況を打破しなければいけないと理解をしている。

 立ち上がり、リザベートの横に立ち並んだ。


「人族国家、エスフォート王国からきたカイン・フォン・シルフォードです。人族国家の代表として――」


 カインは開戦させないための演説が始まったのだった。


 


 


 

お待たせしてすみません。

書籍作業の追い込みやってます。

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