ウヨ論客たちのトリックを解析していくシリーズ「ウヨ☆トリック」
第3弾で扱うトリックは「一点突破」です
お前の罪は何色だ!
まずはこちらの画像をご覧下さい
上の画像は、何色でしょうか?
答えは簡単【緑色】ですね
たしかに赤色の点こそあるものの、全体としては緑色です
だというのに、一点の赤色でもって、画像全体を赤色だと主張する人々がいます
曰く「緑色が正解だと主張する態度が気にくわない」
曰く「赤色もあるじゃないか」
曰く「赤色か緑色か、どちらが正解か、専門家じゃないからわからないなー(ニヤニヤ)」
曰く「赤色もあるのだから、正解を緑色とするのは偏向しているんじゃないか?」
曰く「偏向しているのは、本当は正解が赤色だからなんじゃないか?」
曰く「緑色が正解だと言っている奴らは洗脳されている!」
曰く「正解は赤色だ」
これが「一点突破」トリックです
小さな点を拡大解釈し、そこを突破口としてすべてを自分達の意見で覆い隠す手法ですね
イメージとしては、こんな感じになるでしょうか
「こんなトリックに騙される奴なんていないだろ」という声が聞こえてきそうですが、それは画像の【全体像】が見えている状態だから言えることです
【全体像】を把握する能力がない、あるいは差別心・党派性等の理由により【全体像】を見ようともしない人間は意外と多いものでして
逆に言えば、そうした人間にしか効果がないのが「一点突破」トリックということになります
※画像では実際に赤色の一点がありましたが、赤色が捏造される場合もあります
※現実問題、すべての事象について【全体像】を把握することは不可能です。そこで重要になってくるのが、専門家の言葉に耳を傾けることと、差別心や党派性から物事を断定しないことです
チンピラの手口
この「一点突破」トリックは、接客業をしている方なら理解しやすいかと思います
僕も接客業をしているのですが、時々、どうしようもないお客様というのがいるものでして……
つい先日も、喫煙スペースでもないところで煙草をすっているお客様がいまして
僕「ちょっと。そんなところで煙草をすわれちゃ困りますよ」
まあ、当然注意しますよね。そうしたら、お客様はどんな反応をしたと思いますか?
客「なんやその態度は!言葉遣いが悪い!責任者呼べ!」※僕は関西圏に住んでいます※
(。・ω・。)
接客業ではよくあることなんですが、注意した相手がアレな場合、こんな反応が返ってくるんですよねー
結局、お客様は一時間近くも怒鳴り続け、僕と責任者はコメツキバッタのようにペコペコ頭を下げさせられたのでした
もしかすると、頭を下げる僕らを見た第三者からは、僕らがなにか粗相をしでかしたように見えたかもしれませんね
(最初から現場にいた人ならともかく、第三者には【全体像】が把握できませんし)
これはお客様が、僕の態度・言葉遣いによって「一点突破」を謀った例です
※「そんなんどこに書いてんねん!」というタイプの「一点突破」も多いです(。・ω・。)
トーンポリシング
先にあげた例でピンとこられた方もいるでしょうが、トーンポリシングは「一点突破」の一種です
トーンポリシングとは、主に社会問題について声を上げる人に対し「お前の態度が気にくわない」と叩いて、声を封じようとする行為のことを言います
(フェミニスト系Vチューバー須藤エミニさんの解説)
グレタ・トゥーンベリさんへの一部バッシングを思い出して頂ければ、だいたいどんなものかはわかるかと思います
また、グレタさんへのバッシングは、グレタさんが何を主張しているのかわかっていなさそうなのが目立ちますね
グレタさんの主張は"私が言うことを聞くのではなく、科学者たちが言っていることを聞いてほしいのです"に集約されるかと思います
だというのに、グレタさんが「わたしがかんがえた最強の環境保護」を振り回しているのだと勘違いしている者のなんと多いことか……
つまり「一点突破」トリックにひっかかる【全体像を見ようともしない】タイプに当てはまるわけです
情報は偏在する
「一点突破」トリックは、情報の偏在性を突いてくることがあります
かつてイジメがあったクラスでの、同窓会を思い浮かべて下さい
Aさんは「イジメがあった」と言い、Bさんは「みんな仲が良かった」と言います。しかし、Bさんには嘘をついているつもりはありません
……なーんて事例が現実にはいくらでも転がっています
Aさんがイジメの被害者で、Bさんが加害者だった……というのなら話はまだわかりやすいのですが、2人とも第三者である場合もあります
ならば、この違いはどこからくるのでしょうか? 様々な要因が考えられますね
イジメの現場を目撃したか・していないか。被害者と関係性が近かったから気づけたのか・遠かったから気づけなかったのか。加害者と関係性が遠かったから気づけたのか、遠かったから気づけなかったのか。イジメという認識だったのか・イジリという認識だったのか……etc.
つまり、同じ場所にいたとしても、条件や状態、認識によって証言は変わってくるわけですね
こうした【情報の偏在性】を利用して、ウヨは歴史修正分野で「一点突破」トリックを使います
曰く「南京大虐殺に従軍した人のなかに、虐殺はなかったと証言してる人がいる!」
曰く「沖縄戦で日本軍から「集団自決」を強制された人はいない!そう証言している人がいる!」
そして、いま最もホットな話題は、
「軍艦島(端島)で朝鮮人差別はなかった!そう証言している元島民がいる!」
との戯れ言をぬかす「産業遺産情報センター」です(総務省第二庁舎別館にあります)
※「産業遺産情報センター」の概要についてはハンギョレ新聞等の韓国左派メディアで確認下さい。日本の報道よりもよっぽど詳しいですので※
軍艦島で差別はあった。強制労働もあった。そういう証言は、山のようにあります
詳しくは『軍艦島に耳を澄ませば』等の書籍を参考にしてください
もしくは『「徴用工」を考えるために』というホームページのブログ「史実にアクセス」に接続し、軍艦島で検索してください。出典明記のうえで、証言と解説が書いてありますので。もちろん差別と強制労働をあったとする元島民の証言も掲載されています
これら膨大な証拠がありながら、それでも一部島民の証言という「一点」でもって歴史を修正しようというのが、日本政府と「産業遺産情報センター」なのですね
※軍艦島関連の話は、いつか別の記事で書くつもりですので、このへんで
「慰安婦」問題と朝日新聞
上記のように、歴史修正主義の分野では数多くの「一点突破」トリックが使われています
特徴的なのが「慰安婦」問題です
ウヨ連中のなかには「「慰安婦」問題は朝日新聞のデマにより世界に拡散された。よって「慰安婦」問題自体もデマだ!」と公言して憚らない連中がいますが、これぞまさに歴史修正主義分野における「一点突破」トリックの代表例といえるでしょう
ウヨ連中の主張の根拠となっているのが、吉田清治証言の虚偽にあります
吉田清治さんは1980年代に「慰安婦」強制連行(「慰安婦狩り」)について数々の証言を残した人物です。彼の証言を、朝日新聞はーーだけでなく、産経新聞や読売新聞などもーーたびたび取り上げ記事にしました。しかし、彼の証言の大部分は虚偽だったことが、後に明らかとなります
そのことについて、かねてよりウヨ連中から攻撃を受けていた朝日新聞は、2014年8月にこれまでの「慰安婦」報道の検証結果を発表。吉田清治さんの記事の取り消しを宣言したのです
(実は朝日新聞は1997年3月に吉田清治証言について「真偽は確認できない」との記事を掲載し、それ以降は彼の証言を取り上げていないのですが……)
皮肉なことに、と言おうか、当然の帰結として、と言おうか……朝日新聞訂正により、ウヨ連中の間だけで流通していたはずの「「慰安婦」問題は朝日新聞のデマにより世界に拡散された」という言説は、一般層にまで広まってしまいました
(松井一郎大阪市長会見。16:35~"慰安婦の問題はデマなんですから。軍が関与して強制連行したということはなかった。これは、その一報を報じた朝日新聞自体が誤報だということで謝罪しているわけですから")
ですが、ちょっと待ってください
朝日新聞は、あくまで吉田清治証言が虚偽であったと訂正しているだけです
「慰安婦」問題には、吉田清治証言以外にも数多くの証言、史料があります。それこそ吉田清治証言以前から、です。元首相の中曽根康弘さんが「慰安所」をつくっていた話は有名ですね(『終りなき海軍―若い世代へ伝えたい残したい』)
また、1991年8月に金学順さんが元「慰安婦」として名乗り出てからは、研究が飛躍的に進み、それにともなって証言・史料は飛躍的に増加しています
また、朝日新聞自体、"慰安婦問題 核心は変わらず"との記事を書いています
だというのに、なぜ吉田清治証言が虚偽だっただけで、「慰安婦」問題がデマだったとされるのでしょうか?
ウヨ連中が推進していた「江戸しぐさ」のように、源流をたどっていけばたった一人の男に行き着く……なーんて馬鹿げた話だったらデマ確定なんですけどねー(* ̄∇ ̄*)
吉田清治証言と「強制連行」
さて、実を言うと、吉田清治証言の虚偽をもって「慰安婦」問題の存在そのものをデマ扱いするウヨ論客は多数派ではありません
そんな馬鹿げた論理展開をするのは、ウヨ連中の中でもかなり知性の足りない人たちだけでしょう(´ω`)
多少なりとも気のきいたウヨ論客であれば、吉田清治証言の虚偽を利用して、以下のような主張で「一点突破」します
そうとうわかりにくい日本語なので意味をつかむのに苦労しますが、つまり、吉田清治証言の虚偽によって崩れたのは「強制連行」だとしているのですね
しかし、そもそもの話、大前提として以下のようなことが言えるかと思います
大前提①
「慰安婦」問題でなぜ【戦時性暴力】ではなく【連行の段階での強制性】を俎に載せるのか意味がわからない。「強制連行」を「慰安婦」問題の核心としているのはウヨたちだけである
大前提②
ウヨ連中は「加害者側の証拠は吉田清治証言のみ!」としている。なぜかかたくなに被害者の「強制連行」証言を無視し、証拠にならないとしている
大前提③
ウヨたちによれば、連行が強制でなければーーつまり募集に応じて「慰安婦」になったのであれば、管理売春ということになるらしいが、なぜ一足飛びにそこに行き着くのかわからない。管理売春であると主張するならば、「強制連行」の否定論とは別に、「慰安婦」の大部分が管理売春であったという証明をひとつひとつの事例から積み上げていかねばならない
大前提④
ウヨたちの論理であれば、①のことから、管理売春であれば性暴力の被害があってもかまわないことになる。風俗嬢相手ならなにしてもかまわないと公言する糞オッサンのような論理である
大前提⑤
ウヨが言うーーそして安倍政権が言う「強制連行」は、『北斗の拳』のヒャッハーたちのやるような、物理的な暴力をともなった連行に限定されている。誘拐事件や北朝鮮拉致問題などでも「連れ去り」の要件とされている【甘言等をもちいて騙して連れ去った事例】を、ウヨたちはなぜか「強制連行」とは認めていない
……という①~④が大前提としてあります
そして、植民地である朝鮮や台湾では、多くの「慰安婦」が、大前提④にある【甘言等をもちいて騙して連れ去った事例】です
日本及び日本軍の工場・食堂・喫茶店・病院・将校が高給で雇ってくれると聞いて異国の地に連れられ、現地で強制的に「慰安婦」にされた方々が大部分なのですね
いわゆる「河野談話」でも、"甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあった"としています
たとえば『文書・証言による日本軍「慰安婦」強制連行』を読めば、被害者側・加害者側を問わず、多くの証拠が、出典つきで明記されています
無論、甘言によって騙されただけではありません。河野談話も言うように、【強圧】による連行も数多くありました
"私が馴染んだ慰安婦は、職業用の名をミサオと呼んでいた。生家は江原道のもっとも貧しい農家だったが、ある日突然村長がやってきて「軍の命令だ。お国への奉公に、娘を差し出せ」という。(中略)村長の背後では、佩刀を吊った日本人の巡査が、肩をそびやかせている"
(小説家・真鍋元之の自伝『ある日、赤紙が来て』。『文書・証言による日本軍「慰安婦」強制連行』からの孫引きです)
普通に集団的な誘拐事件なわけですが、日本政府やウヨ論客たちはこれらを「強制連行」とは認めていません(´・ω・`)イミワカンネーヨ
このように「一点突破」に拘るあまりに、【全体像】を見る者からすれば意味のわからない状況が時として生まれることも、このトリックにの特徴ですね
「一点突破」×「一点突破」
誤解なきよう付け加えておくと、ウヨ論客の言う意味での「強制連行」によって「慰安婦」にされた例は、吉田清治証言以外にもあります
ただし、【朝鮮において】は、残念ながら以下のような状態です
"朝鮮で軍・官憲による暴行・脅迫を用いた連行(略取)があったかどうかですが、被害者の証言はかなりの数にのぼります。これを裏づける他の文書・記録や証言は今のところ、見つかってはいません。しかし、一件もなかったことを証明する証拠もありません"
(『「慰安婦」・強制・性奴隷』)
【朝鮮において】は、植民地だった関係から関係書類の処分がしやすかったのか、ウヨたちの言う意味での「強制連行」は明確な証拠がないんですね。【朝鮮において】は
いやー、残念だなー、【朝鮮において】はそんな状態だなんて、本当に残念だなー
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…………………………
…………
……おわかり頂けました?
ウヨ論客が言うレベルでの「強制連行」の証拠がないのは、あくまで【朝鮮において】なんですね
【全体像】を見ると、他の地域(中国・東南アジア・太平洋地域)の「慰安婦」たちは、まさしくウヨ連中が言うような「強制連行」によって連行された証拠のある者が大勢いるのです
特にオランダ領土だったインドネシアでおきたスマラン慰安所事件が有名ですね。また、スマラン慰安所事件に限らず、『オランダ政府報告書』(1994年)にはインドネシアでの悪行が細かく記されていますので、一読してみることをおすすめします
これまでのことをまとめると、「慰安婦」問題における「一点突破」トリックには、次のような段階が存在することになります
①「強制連行」の意味を、なぜか極めて狭く設定する
②なぜか被害者側の証言は証拠として採用せず、加害者側の証言だけが証拠だと言い張る
③加害者側である吉田清治証言の虚偽を「一点」として、朝鮮(というか韓国・在日朝鮮人)の「慰安婦」問題を「突破」する
④朝鮮の「慰安婦」問題を「突破」したことを「一点」として、他の地域も合わせた「慰安」問題全体を「突破」する
勝手に定義を限定(①と②)し、そのうえで「一点突破」を重ねがけ(③と④)することによって、ウヨ連中は「「慰安婦」問題はデマだ」という妄言を成立させているわけですね
このように「一点突破」は重ねがけすることによって効果をさらに倍加させるのです
しかし、「慰安婦」問題の【全体像】をしっかりと見据えれば、このようなトリックには引っかかることはありません
ちゃんと【全体像】を見ることの大切さがわかりますね
終わりにーー全体像について
僕は今回の記事で口が酸っぱくなるほど【全体像】を見てくれと言っていますね
実を言うと、「一点突破」トリックに引っかかるウヨさんほど、自分は【全体像】を見ていると思い込んでいます
「教科書では教えていない歴史を知ることによって【全体像】が見えるようになった!反日左翼は【全体像】が見えていない!」ってな具合です
しかし、彼・彼女らの言う【全体像】とは、差別心や党派性からかオルタナティブなファクトに触れ、それを盲信することによって生まれた虚構に過ぎません
先に述べたインドネシアの「慰安婦」問題の事例ですが、ここでも「一点突破」をはかろうという動きが近年見られます
スマラン慰安所事件で戦犯とされ銃殺刑になった岡田慶治さんの獄中手記をもとに「岡田慶治は強制連行なんてなかったと言っている!反日左翼は【全体像】をもっと見ろ!」と言ってくるんですね
なぜたったひとつの「証拠」によって、他のすべての証拠を打ち消せると思っているのか、僕には意味がわかりません
つまり、それまで知らなかった「事実」に触れることは、【全体像】を見ることとは別なんですね
知らない「事実」が立ち現れたときに、それまでの通説をいきなりすべて切り捨てることは、科学的な態度ではありません
これは、このブログでも何度か指摘している【一次ソースに素人が触れることの危険性】にも通じる問題です
それが本当に信頼できる「事実」なのか、信頼できるとするばそれを【全体像】のなかにどう位置付けるのか、それによって【全体像】自体は変化するのかしないのか……といった作業を通じて歴史を解釈していく必要があるのです
蛇足
【少数派の意見に寄り添うこと】と「一点突破」トリックの違いを説明しようと思いましたが、馬鹿馬鹿しいのでやめました
同様に、ウ◯コの入ったカレー(束ね法案のなかに極悪な法案が入っている等)を批判することと「一点突破」トリックの違いを説明することもやめました