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転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第六章 魔族国編

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第七話 魔族の常識

ご無沙汰しております!原稿が少し落ち着いたので更新復活予定です。

 

 想像もつかなかった一言にカインは無言になった。

 それでもリザベートの二つの瞳は一直線にカインに向けられていた。


「……いきなり過ぎて……答えはすぐに出せない」


 人族と魔族という垣根はあるが、リザベートはその差を感じさせない程の美少女であり、カインは自分の屋敷にいても不満など感じていなかった。

 特に今まで奴隷として扱われていたことで、人族の悪いイメージを取り払うために優しく接していた。

 ダルメシアも、皇族としてのリザベートを知っているため、特に気を使っていた。

 かといってカインにはすでに複数人の婚約者がいる。

 恋愛感情があるかと言えば、全くない。

 しかも婚約者には嫉妬深いテレスティアがいる。シルクは何事もなく許可をしてもらえるであろうが、また説教されることが目に見えていた。

 リザベートも答えはわかっていたのか、素直に頷いた。


「お主の答えはすぐにでないのはわかっておる。だが、長く国を離れておって明日から皇国に向かう。少しだけ――不安なのじゃ」


 力なく答え下を向くリザベートの頭を撫でようと自然にカインの手は伸びていた。

 自分でも無意識なのかもしれないが、自然とリザベートの頭を撫でていた。

 ゆっくりと髪を梳くように撫でるカインの手に、最初は戸惑いの表情を見せたが、すぐに気持ち良さそうに目を細めた。


「僕には婚約者が三人いる。それに一国の貴族として、代表としてこの魔族の国に来てるんだ。簡単に答えを出せるものでもないし、国王の承認も必要なんだ。だから……今はごめん……」


 撫でていたリザベートの頭から手を戻し、膝の上に置くとゆっくりと頭を下げた。

 その姿を見たリザベートは少しだけ悲しい表情をしながらため息を吐く。


「わかっておるのじゃ。これは妾のわがままじゃ。だけど……お願いがあるのじゃ」

「うん、多少のお願いだったら聞くよ。出来ないこともあるけど……」


 カインの返事に、リザベートは頬を赤く染め、言いにくそうにモジモジとしていたが、「よしっ」という言葉と同時にカインを見つめる。


「明日から妾は次期皇帝になるために、がんばる。だから、今日は……い、い、一緒に……ね、ね、寝るのじゃ」


 言い切ったリザベートの顔はりんごのように赤くなっていたが、その上目遣いにカインは困惑する。

 たしかにカインが充てがわれた部屋は最上級の客室であり、ベッドも大人が数人横並びで寝ても問題ない程の大きさだ。まだ成人していない二人が一緒に寝ても問題はない。

 しかし、同衾していいものなのかカインは判断はつかない。

 実際にそれを口実に国王からテレスティア達と婚約者として決められた過去があるからだ。

 しかもそれはまだ幼い時。今のカインはすでに十四歳である。

 リザベートも同年代で女性らしい凹凸もあり、すでに女性としての色気も漂っていた。


「そ、それは……。もうぼくたちもいい年頃だからまずいと思う……」


 たどたどしく断るカインであったが、リザベートは認めないとばかりに首を横に振った。


「カイン、ここは――人族の国ではない。魔族の国には魔族の国の仕来りはある。魔族の国では成人していない者がいくら同衾しても、も、問題……ないのじゃ。だから安心するがよい。誰も気にする者はおらんからの」


 はっきりと言い切るリザベートに少しだけ心の中の天秤が許可を出す方向に傾いていく。


「心配しなくてもよい。同衾といっても身体を密着させて寝るとは言っておらん。端と端でも問題ない。妾は同じ部屋で寝たいだけなのじゃからな」

「――それだったら……構わない、よ」


 カインはリザベートの説得についに落ちた。

 本人も『郷に入れば郷に従え』という気持ちはある。リザベートから『問題がない』と言われたら素直に頷くしかない。

 許可を貰えたことにリザベートは満面の笑みを浮かべ、その笑顔にカインは思わずどきっとしたが、表情に表さないように冷静に保つ。


 リザベートは一度寝着に着替えると言って部屋を出て行ったが、その足取りはとても軽い。

 後ろ姿を見送ったカインはため息を吐き、諦めたように自分も用意された寝着に着替えた。

 程なくして再度ノックされ、寝着の上にローブを羽織ったリザベートが入ってきた。


「待たせたのじゃ。そろそろ眠るかのぉ……」


 頬を赤く染めながら上目遣いのリザベートに思わずカインは喉を鳴らす。


「う、うん……。そうだね。明日は早いしそろそろ休もうか……」


 互いに反対側からベッド入り、ベッドにある操作パネルを使用して部屋の照度を落とす。

 真っ暗ではないが、薄暗い部屋でお互いベッドの端で眠りにつくことにする。

 しかし、年頃の男女が同じベッドに眠りについて、意識をしないのは不可能である。

 カインも緊張感からなかなか眠りにつけなかった。


「……ねぇ、カイン。もう寝た……?」

「ううん、まだ寝てないよ。リザベートは眠れないの?」

「うん、だからこのまま少しだけお話しをしよ……」

「うん、いいよ」


 いつもは尊大な言葉使いをしていたリザベートであったが、ベッドの中の言葉使いはとても可愛かった。

 互いに色々と話しているうちに、端同士で寝ていたはずが少しずつ中央に向かって身体を動かしていた。

 それでも緊張からか、肩の触れない距離で会話は続けられた。

 しかし長くは続かなかった。

 遅くまで続いた会話の合間も自然と無言が続き、そのまま二人とも眠りにはいっていた。


 

 翌朝。扉が勢い良く開かれた。


「カイン様! 聞いてくださ……い……」

「あらあら……これは……」

「勝手に部屋にはいってはーーあ、これはこれは。さすがカイン様」


 部屋に入ってきたのは、セト、セトの妻であるレファーネ、そして後を追うように遅れてきたダルメシアであった。


 三人の声が聞こえカインはゆっくりと目を開ける。

 目の前にいた三人に驚いたが、それ以上に自分に抱きついたまま眠っているリザベートにさらに驚愕する。


「……カイン様、さすがにこれは私ではどうにも……」


 何とも言い難い表情をしたダルメシアにカインは首を横に振る。


「違うんだ、ダルメシア。同じベッドで寝たがリザベートがいつのまにかくっついてきて……」


 言い訳をするカインの言葉に空気が一瞬にして凍りついていく。


「ーーカイン様、それって……遊び、だとでも言うでしょうか。ねぇセト様。セト様は遊びはいけないって知ってますよね?」


 冷めきった表情のままセトに同意を求めるレファーネ。

 カインも以前、ダルメシアが半殺し、セトも袋叩きにあったことを思い出し背中に冷たい汗を流す。

 セトは無言で何度も首を縦に振り、ダルメシアは音を立てないように一歩ずつ後ろに下がっていく。

 抱きついているリザベートに説明をしてもらうために、カインは優しく肩を揺すった。

 ゆっくりと目を開けるリザベートは、目の前にいる三人を見てーー頬を染めた。


「いや、そこは頬を染めるところじゃないでしょ。リザベートからも説明してよっ」


 すぐに着替えたカインは氷のように冷めた表情をするレファーネに説明する為に応接室へと移動することになった。


 


 

 

いつもありがとうございます。

原稿……なんとか目処がついたので更新再開です。

お待たせして申し訳ありません。

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