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転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第六章 魔族国編

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第二話 余計な一言

 

 セトの言葉にカインは驚いた表情をする。

 リザベートが奴隷として扱われた事、そしてあの場から誰かが連れ去って行方知らずということが問題であった。

そしてリザベートを探し出すために人族国家に戦争を仕掛ける。

 一体どれだけの犠牲を払うのか想像もつかない。人族、魔族ともに大きな傷を負うことになる。

 それでも戦争をするというベネストス皇国の決意の表われだった。

しかし魔族もいくつかの魔王を主とする国家の集まりでもある。そう簡単にいくものではない。

セトはカインのことを知っており、もしカインがいるエスフォート王国に戦争を仕掛けでもしたら、魔族が全滅するのは容易に想像がついていた。

 だからこそセトは戦争へ向いている魔族たちを止めるために画策していたのだった。


「そうだったのか……セト、ありがとう」


 カインは感謝の気持ちを伝える。


「それで、カインには一緒に皇国へと同行してもらうように今お願いしているところなのじゃ」


 リザベートの言葉にセトはハッとする。

 自分が魔王として治めている国でさえ、上層部は人族との開戦に前向きであった。

 しかし、カインが実際に魔族の国へと赴いて、その実力を目の当たりにすれば、戦争に対して抑止になる。

 リザベート、セト、カインの三人が皇国へ赴き、戦争への抑止を訴えれば確実に止められるはずと。


「それでは私も皇国へと同行いたしましょう。何かあった時、少しはお役に立てるかと」

「そうじゃな。セト様にも同行してもらえるのは有難い」


 二人の話はどんどん進んでいき、すでにカインが同行することが決定事項のように思えたが、カインも勝手に王国を離れる訳にもいかない。あくまでエスフォート王国の一諸侯に過ぎないからである。

 魔族の国へと赴くには国王に事情を説明し、許可をもらう必要があった。


「まずは国王へと説明をしてきます。勝手に王国を離れる訳にも行きませんから」

「ならば妾も同行しよう。他国の貴族を同行させるなら尚更妾が出る必要があるじゃろう」


 カインは頷くと、一度王国へと飛んで許可をもらうために転移魔法を唱えた。


 ◇◇◇


 国王との謁見の予定はすぐに行われることになった。

 緊急なことと伝え、同行者を二人連れて行くと説明してある。

 そして、一度ドリントルへと戻り、リザベートとセトの二人を連れて王都へと転移した。


 応接室にはカイン、セト、リザベートが席に座り、その向かいに国王、エリック公爵、マグナ宰相、そしてダイム副騎士団長が国王の後ろに控えていた。


「カイン……もしや、また増やすつもりか……?」


 国王はカインと同行してきたリザベートの美しさに思わず質問をした。


「……さすがに、そんなことで緊急で謁見をお願いしたりしません。実は……魔族国家一丸となって人族国家へと宣戦布告が行われる可能性があるのです」


「!? な、なんだとっ!?」


 カインの言葉に同席している全員が驚きを露わにする。

 王国上層部なだけあり、魔族国家がある事は重々承知している。表向きは敵対していることになっているが、基本的にはお互いが不干渉としていた。

 しかしいきなり人族国家に対して宣戦布告を行うなど信じられるものではない。


「カイン……どういうことが説明してもらおうか……」

「実は……今、隣にいるリザベートですが、僕が学園の研修でイルスティン共和国へと行ったのは覚えてますよね? そこで――奴隷にされていました。そして、闘技場で殺されそうになっているところを僕が助けたんです」

「それが……なぜ、宣戦布告へとつながるのじゃ……?」

「そこからは妾が話をしよう」


 リザベートはそう言葉にすると、人族へ変身している魔法を解いた。

 五本の角を額から生やし、紅い目をした少女へと戻る。


「!? ま、魔族だったのか……」

「そうです。そしてセトも……」


 セトも一度頷くと、変身を解き立派な角を生やした魔族への姿に戻った。


「妾は、ベネシトス皇国の皇女、リザベート・ヴァン・ベネシトス。そして隣にいるのは、魔王セト様」


 その自己紹介にマグナ宰相の顔は青ざめる。


「こ、皇女様……」

「魔王まで……」


 エリック公爵やマグナ宰相は国内だけでなく、魔族国家についても熟知していた。

 そして、皇国が魔族にとってどういった国で、皇女がどのような立場なのかを。


「ま、まさか、イルスティンは皇女様を奴隷にして、闘技場の見世物として殺そうと……?」


 マグナ宰相の言葉に、カインは無言で頷いた。


「イルスティンの馬鹿タレがっ!! 娘たちへの襲撃だけならまだしも、そのようなことまで……」


 国王もさすがに激昂する。

 さすがに今回のことは、エスフォート王国一国で済ませる話ではない。

 一番最初に狙われるのはイルスティン共和国、そしてその一帯の国にも襲撃されるはずである。

 あくまで魔族は人族国家全てと謳っているのだ。エスフォート王国だけが無事であることなどあり得ない。


「カイン、それでどうするつもりなのだ……」

「リザベート皇女とセトと一緒に魔族の国へ行こうと思っています。それしか方法はないかと……」

「ここからは私が説明しよう」


 セトから現在の魔族国家の現状が説明を始める。

 説明が続けられるにつれ、国王たちの表情は引きつっていく。


「――――ということだ」


 セトの説明が終わると、国王たちは大きくため息をついた。

 すでに魔族国家の各国は開戦に向けて前向きであると知れば誰しもがため息しかでない。


「……思ったんだけど、なんで魔王であるセト殿が一緒に……?」


 エリック公爵が疑問をぶつけた。

 魔王であるセトがこの場にいること自体がおかしいのである。

 皇女の無事を知っているなら、戦争自体起こらないはずであった。


「それは……僕が聞くために喚んだんです」


 カインの言葉にさらにエリックは疑問に思った。


「カインくんとセト殿との関係は前からあると……?」

「えぇ、ちょっとしたことで……」

「もしかして……前に授業で召喚した時の……?」


 エリック公爵の言葉にカインは苦笑しながらも頷いた。


「そうだ、私はカイン様の配下でもある」


 セトの言葉にカインは顔を引攣らせる。


「……カイン……今の言葉は本当か……? 魔王であるセト殿がカインの配下というか……?」


 しかし国王の言葉に返事をしたのは――セトであった。


「もちろんだ。カイン様はこの世界全てを治めるお方だからな」


 ガハハと笑いながら言うセトを見て、カインは諦めの表情をして天を見上げたのだった。



いつもありがとうございます。

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