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転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第六章 魔族国編

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第一話 リザベートの正体

1週間休憩させていただきました。

新章に突入です。


 辺境伯となりドリントル以外の領地を治めることになったカインであったが、実際のところ生活については変わっていない。

 すぐに領地が引き渡される訳でもなく、現状は王都から代官や査察官が派遣され、街の現状を調査を行い、結果が出てからカインに引き継がれることになっている。


「これからも忙しくなるよね……」


 エリック公爵から学園は自由登校と伝えられているが、カインが学園に登校しなければテレスティアやシルクがへそを曲げるのは目に見えていた。

 だからこそできる限り登校しようと心に決めていた。

 そんな事を考えながら執務室で書類に目を通していると、扉がノックされた。

 許可を出すと部屋に入ってきたのは、ダルメシアを伴ったリザベートだった。

 リザベートはソファに座ると、ダルメシアが紅茶を淹れてそっと目の前におく。

 カップを口に運び、ふぅと一息ついてから口を開く。


「カイン、妾はそろそろ国へ戻ろうかと思うのじゃ。ここは居心地がいいし、食事も美味いから出来ればいたいのじゃが……。さすがに迷惑をかけることになるからのぉ」


 その言葉を聞き、カインは作業を一度やめ、リザベートの向かいの席に座った。

 正直、リザベート一人増えてもたいした出費にはなっていない。

 ダルメシアが気を遣い対応し、ルーラやローラと楽しんでいるので特に気にもしていなかった。

 しかし、イルスティン共和国からこの街へ来てそれなりの日数も経っている。

 イルスティン共和国での生活を含めると長い時間、自分の国を空けていることになる。


「……そうだよね。ご両親も心配すると思うし一度帰った方がいいよね」


 カインの言葉にリザベートは軽く頷くが、その表情は苦虫を噛みつぶしたようである。


「……それなんじゃがな……、カインも一緒に行ってくれないかのぉ」


 そして後ろで控えていたダルメシアも前に出て頭を深々と下げる。


「カイン様、出来ればリザベート様にご助力いただければ……」


 カインからすればダルメシアが、こうして頭を下げ願い出ることは今までになかった。

 それだけに違和感があった。


「――詳しいことを教えてもらってもいいかな?」


 カインも魔族の国に行くのはやぶさかではない。

 セトという魔王も知っている。セトの国には訪れたことはないが、行ってみたいという気持ちもある。

 しかも今後、辺境伯として忙しい時間を過ごすことはわかっており、行けるなら今しかないと考えた。


「――その事について説明しなければならんのぉ。妾がまず国を出た理由についてじゃが――――」


 リザベートから国を出た理由が説明されていく。

 兄弟がおり、兄がいるのだが、その兄と仲が良くないこと。

 二人きりの兄妹であり、どちらかが国を継ぐことになっているが、兄は自分が継ぐのを絶対的にするために、自分の事を他の国の魔王で嫁がせようと画策していること。

 しかも嫁がせようと思っている相手が、年もかなり離れていて妻が何人もいること。

 それが嫌で国を出たこと。


「あれ、そういえば魔族って一夫一妻じゃなかったっけ……?」


 以前、セトから一夫一妻制だと聞いていた。


「カイン様、魔族も国によって異なるのです。一夫一妻制なのは魔族の国でも二つだけです。ちなみにリザベート様の皇国は一夫多妻制を敷いております」


 ダルメシアからの説明にカインは頷く。


「本来ならば戻りたくはないのじゃがな……。無断で国を出てきておるのじゃ。それでのぉ……」


 リザベートは少しだけ表情を暗くする。


「そのあとは私から。実はカイン様がリザベート様を助けた闘技場に変装した魔族もおられたようで……。その者がすぐに皇国へと戻り、報告をしたらしいのです。それで――――皇国内の上層部が……」


「もしかしてこちらに探しにくると……?」


 驚くカインにリザベートは申し訳なさそうに頷いた。

 皇女とはいえ一人のためにそこまで本格的に探すのかとカインはそう思った。


「カイン様、リザベート様の国はベネシトス皇国といって魔族でも他の国家とは全く違います。他の国は実力によって『魔王』を名乗ることができます。しかし、ベネシトス皇国だけは、代々皇国の血筋のみが優先され、そのトップは『魔皇帝』と名乗り、各国の魔王を名乗ることを認める権限も持っております。そして皇国だけは数千年と言われているくらいに長い歴史があります」


 ダルメシアの説明にカインは大きくため息をつく。


(それだけの長い歴史……国王、いや、前世でいう天皇家と同じということか……。だから最初に会った時にダルメシアが膝までついたのか……)


 しかし、この場で話し合っても進展はしない。


「――そうだ。セトを呼ぼう!」


 一国の長であるセトを呼べば、もう少し魔族の事情が掴めるかもしれないとカインは召喚魔法を唱えた。

 魔方陣とともにセトが現れる。

 久々に喚んだセトであったが、その表情はいつもと違っていた。


 

「カイン様、ご無沙汰しております。しかしながら今は全ての魔族にとって一大事なのです」


 現れたセトはこれから戦闘でもあるかのように、鬼気迫っていた。


「こっちも一大事なんだ。それでセトに相談しようと思ってね……」


 カインの言葉に、セトは少し考え大きく頷いた。


「それなら私からも相談が……。人族にとっても一大事――――」


 セトがカインの向かいに座っているリザベートに視線を送り、――そのまま固まった。

 これでもかというほど大きく目を見開き、驚きの表情をする。

 そして、ギコギコという音が鳴りそうな機械的な動きでカインに視線を送った。


「な、な、なんでリザベート様がここに……?」


 動揺したセトをカインは隣に座るように促すが、セトはその場で膝をつき頭を下げた。


「リザベート様、ご機嫌麗しく。ご無沙汰しております……」


 セトの態度に、リザベートは皇女らしく笑みを浮かべた。


「セト様、久しいのぉ。セト様の魔王就任の時以来かのぉ」

「は、はいっ! それにしても、なぜここに……? 今、魔族一丸となってリザベート様のことを……」

「セト様、まずは席に座るのじゃ。説明をするからのぉ……」


 セトはリザベートの言葉に頷き、カインの隣に座る。


 そしてリザベートからは、皇国を出てからのことが説明され、その一言一句にセトは驚き、そして怒りを浮かべ、最後はホッとした表情をする。

 説明が終わるとセトは疲れ果てたように背もたれに寄りかかる。


「それで……セトの方の一大事って……?」


 カインの言葉にセトは思い出したように口を開く。


「実は、魔族国家全てが……人族国家全てに――――戦争を布告することになりました……」


 セトの口から衝撃的な言葉が飛び出したのだった。



いつもありがとうございます。

今週から新しい章に入りました。今後もよろしくお願いいたします。

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