逮捕されJR京都駅に着いた大久保愉一容疑者(写真左)と山本直樹容疑者(23日)=共同
ALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性患者の依頼を受け、薬物を投与して殺害したとして、京都府警捜査1課は23日、いずれも医師の大久保愉一容疑者(42)=仙台市泉区高森4=と山本直樹容疑者(43)=東京都港区海岸1=を嘱託殺人の疑いで逮捕した。
2人の逮捕容疑は2019年11月30日午後5時半ごろ、無職、林優里さん(当時51)=京都市中京区=の自宅マンションで、本人の嘱託を受けて殺意をもって薬物を投与し、同8時10分ごろ、搬送先の病院で急性薬物中毒により死亡させた疑い。
捜査関係者によると、林さんが会員制SNS(交流サイト)を通じて大久保容疑者に「安楽死させてほしい」という趣旨の依頼をした形跡があった。山本容疑者の口座には、林さんから100万円以上の現金が振り込まれていた。2人は林さんの主治医ではなく、府警は金銭目的で請け負った可能性があるとみて詳しい経緯を調べている。
林さんはヘルパーに「知り合いが来る」と伝え、2人を自宅に招き入れた。約5~10分後には2人が部屋を後にし、別室から戻ったヘルパーが意識不明の林さんを発見した。体内から普段使っていない薬物が検出されたことから府警が捜査を開始し、防犯カメラの映像などから2人が浮上した。
厚生労働省によると、大久保容疑者は職員として同省に所属していたことがある。
ALSは、全身の筋肉が徐々に萎縮し体が動かせなくなる難病。林さんは一人暮らしだったが、病状が進行し24時間態勢の介護を受けるようになり、話すことはできるが体はほとんど動かせない状態だった。その後、声を出せなくなり視線入力で意思表示するようになった。ブログでは「こんな姿で生きたくないよ」とつづり、生死は自分で決めるとの意思を繰り返し示した。一方、新たな治療法の治験が始まりそうだとのニュースに触れ、希望を見いだしたような記述もあった。