【13日目】
「陽性者専用の特別なタクシーに乗ってホテルに移動しました。一緒にホテルに移った2人の方は、咳もなくスタスタ歩けて元気そうでしたが、私は移動のさなかも咳が止まらず、息が苦しく、ゆっくりしか歩けない状態でした」
【14日目~44日目】
「その後ホテルで約1か月療養しました。体温調節がおかしくなったのか、しばしば体温が35度台に下がり、寒くて寒くてたまりませんでした。結局、帰る1週間前ぐらいになって、ようやく36度台に戻りました。
ホテルでは相変わらず少し動くと息が切れました。1日3回お弁当をロビーまで取りに行くのですが、それだけでも息が切れてしまって非常につらかったです。体重は10キロぐらい減り、お腹はぺったんこになり、顔はガイコツのように窪んでしまいました。
この頃は、PCR検査で2回続けて陰性が出ないと自宅に帰れないルールだったのですが、なかなか陰性になりませんでした。ほぼ毎日PCR検査をしていたので、最後の頃は鼻血が出てしまいました。
家に帰る数日前、急にエビせんべいの匂いがわかるようになりました。その時から、嗅覚は劇的に良くなりました。味覚のほうも徐々にでしたが戻ってきました。ただ、相変わらずしょっぱさには敏感で、今もそれは続いています」
【45日目~90日目(現在)】
「ホテルから家まで帰るのに電車とバスを使ったのですが、少し歩くだけで息切れしました。足も筋肉痛になり、翌日は家でずっと寝ていました。それぐらい筋力が落ちてしまっていました。
体調は、ある時を境に急激にぐっと良くなるという感じではなく、徐々に回復してきたように思います。体重も少しずつ増えて、5キロほど戻りました。呼吸は、今も喋り続けているだけで少し苦しくなります。
新型コロナ感染症が発症してから3か月あまり経ちますが、体調はまだまだで、以前の6~7割というのが実感です」
* * *
これはきついなあ、というのが私の第一印象です。
この看護師は、ほぼ完治しているとはいえ3か月経過して、まだ、完全回復とは言えない状態でしょう。
少しでも動くと息切れし、チアノーゼが出るというのは、相当、肺機能が落ちていたようです。深く息を吸えなかったと言っていることから、肺の浸潤(肺胞に染み出た液体成分がたまること)が深刻で、酸素と二酸化炭素の交換がうまくできなくなっていたのでしょう。ちなみに、ここまで症状が悪化しても、まだ重症とはみなされません。新型コロナ感染症では、人工呼吸器やECMOを使用した場合が重症、この看護師のように一時的にでも酸素を投与した場合が中等症、それ以下の場合が軽症とするのが一般的です。
筋力が低下したのは、からだが自ら筋肉を壊して病気と戦うエネルギーとしたからです。人間が命をかけて病気と闘うときには、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓などの重要臓器が、その機能を果たすために筋肉を犠牲にするのです。またホテルで長期間療養していたので、廃用性萎縮(筋肉を使わないことによる筋力低下)も起こっていたと考えられます。







