第十七話 裁判
オリコンランキング文芸部門週間2位、ライトノベル部門3位でした。
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まだまだ続きを書かせてもらえそうです。これからも応援よろしくお願いいたします。
カインは先に進んで行く生徒たちに気づき、少し遅れながらも後を追って行く。
闘技場を後にして、その他の施設を見学した。
そして一日の日程を終え、宿へと戻る。
ベッドの上で転がりながら、夕飯の時間まで今後の事を思い浮かべる。
「勢いで助けちゃったけど、この先どうしようかな……。とりあえず少しゆっくりしてから、セトにでも任せるしかないか。セトの事も知っているようだったし」
そんな時に、扉がノックされる。許可を出すと、扉を開け部屋に入ってきたのはシルクだった。
「カインくん、さっきの事、聞きにきたよ」
「やっぱりそうなるよね……」
カインは小声で呟きながら、部屋にある椅子に座るように進めて、自分はベッドの上に座る。
なんて説明していいか悩み、そしてそのまま打ち明ける。
「魔族に知り合いがいるんだ。以前にグラシア領であった魔物の氾濫でも助けてもらったし。もし、知り合いだったらと思ってね……。かと言ってそのまま助ける訳にもいかないからあんな格好で……」
カインは苦笑しながらも答える。
フード付きのマントを被り、仮面を被って登場すれば、どこの頭のおかしい人かと思われても仕方ない。
そんな事を気にした様子もなく、シルクは頷いた。
「ふーん、そうだったんだ。カインくんがいない間に会場は大騒ぎになったんだよ。いきなり現れて、この国で一番強い冒険者が一撃で倒されて、すぐに消えちゃっったんだもん。もしかしたら魔族の襲撃がこれからあるかも? とか、噂をしている人もいたし……」
「もし、あの魔族の女性が怪我をしていたら……。それが発覚したら戦争になってもおかしくないかも。聞いたら魔族の国の姫様だったみたいだし……」
「――そっか。なら良かったのかな? それで彼女は……?」
「うちの屋敷で療養してもらってる。捕まってからずっと奴隷のように扱われていたらしいし……。ダルメシアに任せてあるよ」
カインの言葉にシルクは安心したような表情を見せる。
「カインくんって……本当にお姫様とかと縁が多いよね。私はあんまり気にしないけど、あんまり婚約者を増やしたりすると、テレスがまた嫉妬するよ?」
その言葉に思わずカインは噴き出す。まったくそんな事は想定していないからである。確かに美女であることいは間違いはないし、魔族の国でもそれなりの国の姫なのであろう。あのダルメシアの反応からして察することができた。
「それはさすがにないよー。少しゆっくりとしたら、国に帰ってもらうつもりだし」
「それならいいんだけど……。まぁいっか。テレスたちには内緒にしておいてあげるねっ!」
シルクは席を立ち扉へと向かい、ドアノブに手を掛けると、最後に振り返る。
「あと、あの仮面姿、――やっぱりちょっと恥ずかしいよ?」
それだけ言い残してシルクは部屋を出ていった。
一人残されたカインは大きくため息をつく。
「やっぱりそう思うよね……」
小さな声で呟いたカインであった。
◆◆◆
次の日。
いよいよ議会で先日の騒ぎについての決議が行われることになっている。
カインは身支度をし、教師に説明をした後、一人別れ、迎えにきた馬車へと乗り込んだ。
一人で乗る馬車は少しだけ寂しく、小窓から街並みを眺めていると十五分ほどで議会会場へと到着した。
「シルフォード伯爵、こちらへどうぞ」
案内される係員の後を追い、個室に通される。そこにはサブギルドマスターのフォルトともう一人、壮年の男性が座って待っていた。
「シルフォード卿、こちらにお座りください。まずは紹介します。このイルスティン共和国の王都ギルドマスターのーー」
「そこからはワシが言おう。この国のギルドマスターをしているザブマールじゃ。この度は迷惑を掛けたな」
ザブマールは白髪を後ろに流し、威厳のある顔つきで軽く目礼をする。
「カイン、カイン・フォン・シルフォード・ドリントル伯爵です。こちらこそ色々と……」
カインは軽く頭を下げて席に座った。
「それでは、これからのことを説明しますね。議会では事実確認が行われます。今回については、粗方内容については分かっているので、あくまで賠償金についてと、バンデーガ親子の処罰が主になると思います」
フォルトがこれからについて説明していく。カインは他国の議会など知る由もなく、ただ頷いていくだけであった。
そして雑談をしているうちに時間は流れ、扉がノックされた。
ついにカインの出番となり、会場へと向かうことになる。
係員の案内され、廊下を数分歩くと大きな扉の前に立たされる。
カインの後ろにはフォルトとサブマールも並んで立っている。一緒に入場し、証人として発言をする事になっていた。
そして扉が開かれた。
中へ進むとすり鉢状に議員席があり、中央に議長と思われる老人、その前に向かい合うように席が並んでいる。
議員席はすでに数十人が座っており、その更に奥には観覧席があり、学園の生徒たちも座って観覧している姿が見受けられる。
そしてすでにバンデーガ親子は補助者を伴って着席していた。
カイン達三人は係員の指示のもと、指定された席につく。
全員が席についたことを確認した議長が周りを見渡し頷く。
「それでは本日の議会を開催する」
議長の一声で議会は開催される事になった。
いつもありがとうございます。
すみません、発売日週間お休みさせていただきました。
これから更新再開になります。そして4巻の原稿にも取りかかり始めました。
引き続きよろしくお願いいたします。