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転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第五章 イルスティン共和国編

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第十二話 兄弟?

 

 朝を迎え、生徒たちは馬車に乗り込み街を出発する。

 これから向かう場所は、議会の街であるタンバールである。

 生徒たちはそこで議会の見学などが予定されていたが、カインにとってはそこで賠償関係の話し合いが持たれることになっていた。

 少し気が重いと思いつつも、馬車の中で盛り上がるテレスティアたちの話に相槌を打っていく。

 途中、一日宿場町に泊まり、二日目の夕方にはタンバールの街へと到着した。


「ここがタンバールかぁ……」


 街の中心には大きな建物が建っている。この国の象徴である議会会場が入り口からでも見えた。

 見学は明日からになっており、宿に到着すると部屋割をされ各自寛いでいく。

 夕食が済んで全員が部屋に戻るが、カインにはやる事があった。

 フォルトから街へ着いたらギルドに顔を出すように言われていたのだ。


 カインは教師に事情を少しだけ話し、宿を後にしてギルドへと向かう。

 教師にはテレスティアたちには絶対に伝わらわないように念押しをした。もしバレたら……。

 歩きながらカインは思わず身震いさせた。

 冒険者ギルドは街の中心から近い場所にあり、すぐにわかった。カインは扉を開け中へと踏み込む。

 すでに外は薄暗くなってきており、依頼の報告をすでに終え、隣に併設されている酒場からは笑い声が響き渡っていた。

 少なからずいる冒険者たちも、依頼が貼られている掲示板で、次の日の依頼を探しながら相談している者もいた。

 カインが入ってきたことで、一瞬だけ視線が集まるが、制服姿の子供にすぐに興味はなくなり、視線はすぐに散っていく。

 カインはそのまま空いているカウンターに向かい、受付嬢に声を掛ける。


「あのぉ……。フォルトさんからギルドに顔を出すように言われて来たんですけど……」

「フォルトさん……? ガザールのギルドマスターのフォルトさんですか?」

「えぇ、そうです」

「お名前を伺っても? 確認をしてきますので」

「カインです」

「カイン様ですね。では確認してきますので、少しお待ちください」


 受付嬢は、中へ入っていき奥に座っている上司と話し始めた。

 上司はカインの名前を聞くと、勢いよく立ち上がり、カウンターへと出てきた。


「おまたせしてすみませんっ! シルフォー……カイン様ですね。フォルトより早馬で手紙がきており内容については聞いております。ギルドマスターを呼びますので個室へご案内いたします。ほら、すぐにお茶の用意をしてっ」


 上司のあからさまな対応に、受付嬢は首を傾げるが、カインのことを個室の応接室へと案内する。


「では、こちらでお待ちください。すぐに参りますので」


 紅茶を用意した受付嬢は一礼し、退出していく。

 そしてすぐに扉がノックされ、二人の男性が入ってきた。一人は人間族の男性で、もう一人はエルフの男性であった。

 二人は笑みを浮かべてカインの目の前に座る。

 カインはその顔を見て、目を見開く。


「その顔は驚いているようだね、シルフォード卿。いや、義理兄(にい)さんと言った方がいいかな。ここのギルドマスターをしている、ラディンです。隣にいるのはサブギルドマスターのゴサックだよ」

「ゴサックです。シルフォード卿、よろしくお願いします」


 笑みを浮かべるギルドマスターと名乗った青年は、エディンと変わらない容姿であった。

 カインが驚くのも無理もない。

 それよりも大事なことがあった。


(今、義理兄(にい)さんって呼んだよね……?)


「も、もしかして……」

「うん、想像通り。ティファ―ナ姉さんの弟ですよ。すぐ下のね」


 想定外の事にカインは驚くが、気にした様子もなくラディンは話を始めた。


「フォルトから手紙は受け取っています。マルフ議員も一番手を出したらいけないところに手を出してしまいましたね」

「本当に……。これは議会が確実に大荒れになりますね。賠償金額もとてつもない金額になるかと……」


 二人の説明では、議会で前世の裁判のように判決が言い渡されるらしい。一応はその場で釈明を聞くことになるが、今回については当事者を含め、全員が聞いており言い逃れはできないということだった。

 すでに議会に事前に説明がいき、もう日程の調整もされていた。

 そしてその日程は――カインたちエスフォート王国の生徒たちの見学の時間に当たっている。

 実際に裁判を公聴するという、研修内容である。


「……まさか……」

「うん、その日、エスフォート王国の生徒たちの見学もあるよね。その日程に合わせていると思う。他の生徒たちがいる手前、あまり強く言えないだろうと思われているんだろうね。マルフ議員もそれを狙って時間を指定したのかもしれない」


 元々あまり大ごとにはしたくなかったカインは、一人で議会に行って早々に決着をつけようと思っていた。

 教師には説明はしているが、他国で襲撃があったなど広まれば、イルスティン共和国としてもイメージダウンに繋がる。それを避けるためと考えていたのだが、マルフの考えは違っていた。

 ラディンの考えでは、同情を誘うようなことを言い出すだろうと説明がされていく、それで罰金が少しでも減れば、ということだ。


「実際に、罰金ってどれくらいなんでしょう? この国の制度についてはわからないので……」


 カインの問いに、ラディンは少し考えて口を開く。


「五十枚、そんなところだろうね」

「金貨五十枚……。かなりの大金ですね」


 金貨五十枚といえば、日本円にしても五千万円になる。それなりの金額だ。交通事故の示談金としてはもしかしたらもっと高額になるかもしれないが、幸いにしてカインは怪我もしていない。

 しかし、ラディンは首を横に振る。


「いや、白金貨五十枚だよ。全部がシルフォード卿にいくわけではないが……」

「えぇぇっ!? そんなに……」


 罰金五億円。

 相当な金額である。カインの資産も街の投資をしてそれ以上に持っているが、それでも何割を占めるかの金額になる。


「多分、議会に罰金として白金貨十枚、シルフォード卿に二十枚、そしてエスフォート王国に謝罪を含めて二十枚ってとこだね」

「罰金ってそんなに高いんですか……」

「いや、今回は特別だと思う。他国の上級貴族にあたる伯爵に襲撃をかけたんだ。たとえ息子が原因だとしても、それは情状の理由にならない。ましてや、この国の議員だしね。殆どの資産は没収になると思うよ」


 その後も議会で起こりうることなどを話し合った。


「ラディンさん、ゴサックさん。ありがとうございます」

「いいよ。義理兄(にい)さんになる人だしね。フォルトも明日にはこっちに来る筈だよ。当日は出廷する予定だから」

「わかりました。では、当日」


 カインは二人と握手をし、ギルドを後にして宿へと戻った。


「また陛下に何言われるか……」


 そんな事を思いながらカインは眠りへとついたのだった。


 


いつもありがとうございます。

もうすぐGW。書きだめしたいです。

来週の25日(水)にはコミカライズ第2話が公開予定です。

楽しみにしててくださいっ!(まだペン入れたのすら見ていませんw)

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