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転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第四章 バイサス帝国からの転校生

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第二十一話 カイン、ランクがバレる!?


 少しの間、レリーネはドリントルに逗留することになった。

 その間、時間がある時にアレクと食事などをすることで、二人は納得した。 

 ラゲット達四人も少しの期間、ドリントルに滞在することが決まり、ギルドで簡単な依頼を受けることになった。

 朝一番でカインは四人に同行しギルドへと向かう。


「いやーカインに紹介してもらった宿は良かったよ。部屋も食堂も綺麗だし、エナクちゃんは可愛いし! もう最高!」


 笑顔のニナリーの言葉に三人も頷く。


「カインはここの冒険者だろ? この街にどんな依頼があるんだ?」

「依頼としては討伐と護衛が多いですね。王都からの商人の依頼か、東門の先が森になっていて、そこに魔物が出ます。あと奥に行くとダンジョンもありますね」

「ダンジョンか……、まだ行ったことないけど、いつかは挑戦したいな。その時は案内してもらえるか?」


 ラゲットの言葉にカインは少し難しい顔をする。


「空いている時間なら問題はないですが、ほとんど王都に行っているんです。一応……まだ学生なので……」

「そういえば……まだ学校に通っている年だったな。まぁ時間がある時でいい。それまでは森で狩りでもするよ」


 その言葉にカインは頷く。ダンジョンの奥にはブラックドラゴンがいる。

 四人の実力では最奥まで行けるとは思ってはいないし、ドラゴンには人間相手に攻撃しないように伝えてはあるが、自分の身を守るためなら反撃は構わないと伝えてあった。

 そして五人は森の魔物の事について話しながらギルドへと到着した。

 扉を開けホールに入ると、やはり朝のギルドは冒険者達で賑わっていた。

 依頼ボードを眺めながら相談している者や、受付に相談している者。街が繁栄してきたことで、他の街からも冒険者が増えていた。

 ホールに入ってきたカイン達に一瞬だけ視線が集まるが、その後の反応は二つに分かれていた。

 まだ子供達の冒険者が入ってきて、興味を失せ視線を外す、最近ドリントルに移ってきた冒険者達。

 そして、カインの所業を知っている恐怖ゆえに、真っ先に下を向き視線を合わせないようにする冒険者達。

 中でも以前に実力を目の当たりにした者は恐怖に身体を震わせる。

 そんな姿にカインは気づかない振りをしながら、依頼ボードへと向かった。

 ラゲット達は未だDランクである。受けられる依頼も限られていた。

 四人で話し合い、一つの依頼表を依頼ボードから外し、確認をする。カインはその姿を後ろから眺めていた。


「退けよ、小僧。そんなところにいたら邪魔だっ!」


 カインが振り返ると、機嫌が悪そうに三人の冒険者が立っている。まだ二十代半ばであろうか、剣士が二人と魔法使いが一人、無精髭を生やし、前日に深酒をしてのであろう、酒臭い息でカインに因縁をつける。カインの事を知らないのであろう、振り返ったカインの顔を見ても何一つ表情は変えない。


「何見てるんだ……? ガキ共は大人しくドブ攫いでもしておけよ」

「ドブ攫いか、そりゃぁ傑作だ。あっははははは!」


 カインも思わず苦笑する。しかし、カインの事を知らない者からしてみたら、まだ幼い子供が“銀髪の悪魔(シルバーデビル)”と呼ばれているこの街で最悪の存在だと誰も思わないだろう。


 カインは「どうぞ」と一言だけ言い、横に逸れた。

 カインの事を知っている冒険者達は、その光景に『あ、こいつら死んだわ』と小声で話し合う。

 気分を良くした三人は、次に掲示板の前で話し合う、ラゲット達四人に視線を送る。

 四人はすでに成人を迎えている。まだ十代だが、ニナリーもマインも魅力的な女性である。

 その二人に目をつけた三人は同じ様に絡んでいく。


「おい、そこの嬢ちゃん達。そんなガキの相手してないで、俺らと依頼を受けようぜ。昼も夜も面倒みてやるぜ?」


 男の言葉に、ニナリーは顔を歪める。しかし、すぐラゲットがニナリーの前に二人を庇うように立った。


「おっさん、お呼びでないぜ? 二人は俺らの連れだ。男三人で仲良く狩りでもしてこいよ。その方が似合ってるぜ?」


 ラゲットは売られた喧嘩は買う主義であった。王都からドリントルへ向かう宿場町でも喧嘩になっていた。

 しかし、男たちはラゲットの言葉に激昂する。


「ガキども……言いやがったな。教育してその二人は俺らが有効に使ってやるよ……」


 少しずつ近づいていく冒険者に、予想外の場所から声が掛かる。


「そこまでにしなさい! それ以上ギルド内で騒ぐなら処罰は免れませんよ!」


 女性の声が響き渡り、その声の方に視線が集まる。

 そこには両手を腰に当て、怒った様子のレティアがいた。

 しかし、レティアはサブギルドマスターであるが、知らない人が見たら、ただの美人のギルド職員である。

 もちろんその事を知らない男たちはそれで引く気はなかった。レティアの全身を舐めるように視線を送りニヤリとする。


「なんだ、姉ちゃん。ならお前が三人の相手をしてくれるのか? 俺らはそれでも構わんけどな」

「あっはっは、確かにそうだ。この姉ちゃん、年はいってるけど見た目はまぁまぁだしな」


 男たちの言葉にレティアの表情は変わっていく。


「――――誰が“年はいってる”ですって……?


 レティアにとっては一番触れられたくないことであろう。

 レティアの表情を見て収まりがつかなくなりそうなので、カインはため息をついて止めることにする。


 パン、パーン


 いがみ合っている中でカインは大きく手を叩く。


「そろそろ、終わりにしましょうね。これ以上はギルドカード剥奪か、詰所の牢屋で頭を冷やしてもらいますよ?」


 しかし、まだ成人もしていない少年の言うことなど、聞くはずもない。

 それでも変わらぬ冒険者たちにカインはため息をついて、レティアに視線を送る。


「カイン様、構いません。こいつらは少し反省が必要だと思いますので」


 カインの声で落ち着いたレティアがそう告げた。

 その言葉で――周りで緊張で息を飲んでいた冒険者が一斉に逃げ出した。


「逃げるぞ! ここにいたらやばい」

「まじかよ……いくぞ!」


 カインの事を知っている冒険者は一同に逃げ出す。職員も全員業務をやめて逃げ出した。

 よくわかっていない冒険者たちは、その逃げ出す冒険者たちを指差して笑う。「なんでこんな楽しいイベントを見逃すのか」と。

 そして、その冒険者達はその後になぜ逃げたのか身をもって知ることになる。


 頷いたカインから、殺気がホール一面に広がっていく。本気を出したらこのホールにいる一同は全員気絶してしまう。適度な強さに調整して広げていった。

 絡んでいた冒険者達もその殺気を目の前で浴びて、腰が抜ける。笑っていた冒険者達もその殺気を浴びて恐怖から身体を震わせた。


「……だからそろそろやめにしようって言ったんですよ……」


「な、なんだなんだこれ……」

「このガキは一体……!?」


 すぐに殺気を引っ込めてカインは笑顔を向ける。


「レティアさんはこのギルドのサブギルドマスターですよ。わかってますか? その意味が……」


 尻餅をついていた冒険者たちは、殺気が消え立ち上がると、さっきの言葉の意味がわかっていないのか、次はカインにターゲットを向ける。


「少し揉めたからって殺気を向けるのはいいのかよ!!」

「サブギルドマスターだからって越権行為だ!!」

「そうだ! このガキを罰しろ!!」


 三人から非難の声が上がるが、あまりの馬鹿さにレティアはため息をつく。


「カイン様、ギルドカードを。誰を相手にしているのかわかってもらわないといけませんからね。こんな馬鹿はこの街に要りませんし」


 カインは言われるがまま、懐からギルドカードを出しレティアに手渡す。白金(プラチナ)に光り輝くSランクの証明を。


「では、貴方達は、――Sランクの冒険者に喧嘩を売るってことでいいのかしら」


 この言葉がとどめになった。

 さすがに理解力のない冒険者でも、ランクによる実力差はわかっている。

 Sランクとも言えば、国で認められ、天災級の魔物とも戦える実力を持つ者の証明である。

 男たちは目を見開き、そして一目散に逃げ出した。「すみませーーーん!」と叫びながら。


「……も、もしかして……あれが、この街にいる“銀髪の悪魔(シルバーデビル)”なのか……」


 そして周りで震えていた冒険者たちは口々に小声で話し合う。


「カイン様、ありがとうございます。あいつらは今日にでも街を出るでしょう。まったく……」


 まだ怒りの治らないレティアにカインは苦笑する。


「――――な、なんでカインくんが……Sランク……!?」


 その言葉にカインは声の元に視線を向ける。

 そこには未だ尻餅をついていたラゲット達四人がいた。


「あ、忘れてた……」


 カインは秘密にしていた事を思い出し、失敗したと額に手を当て天を見上げた。


 

いつもありがとうございます。

せっかく書き上げたのに投稿するのを忘れてました(汗)

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