ほぼ日刊イトイ新聞

2020-07-24

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・バンドのギターなんかでさ、
 タトゥばりばりに入れちゃってたりもして、
 すっごいワルそうなやつとかいるじゃないですか。
 わざとワルぶったりアホっぽくふるまったりもしてて、
 まともな社会人じゃないぞ、という感じの人たち。
 一見、いままで生きてきてマジメなことなんて
 ひとっつもしてませんみたいに見せているんだけど、
 ぼくは見てますよ、彼ら、あんがい努力してるって。
 だってね、ギター、練習しないで弾けるはずはないです。
 楽譜が読めるとか読めないとかは別にして、
 ちゃんと耳で音を拾えて、その音を指で押さえて弾く。
 リズムをキープしながら、速弾きなんかもするのに、
 「練習しないでできちゃった」なんてことあるわけない。
 他のメンバーの出す音と合わせることもしてるし、
 どんなに頭を振っててもミスなく弾いてるんですから。

 ダンスをやっててワルそうに見せてる人たちにも、
 まったく同じようなことが言えます。
 柔道やら、陸上競技なんかとは練習もちがいますが、
 言い方は似合わないけど「地道にやってる」からこそ、
 かっこよく身体を操れるわけですよね。

 日本一だの世界一だのの座を狙うには、
 努力だけでは無理なのかもしれないけれど、
 人の前で、人をよろこばせるくらいの腕になるには、
 しっかり努力をすれば、ちゃんとたどり着くんですよね。
 ワルそうに見せてるギタリストも、
 ストリートで踊ってるダンサーも、
 「地道な努力」をちゃんとやった人なわけです。
 彼ら、ちゃんとやらなきゃ、ある腕前にはなれないし、
 それが露骨にバレちゃうから、努力もするんでしょうね。

 会社務めをしている同世代の人、いや先輩方、
 年上の上司の人たち、フリーのクリエイティブ業の人よ、
 バンドのギターや、路上のダンスのような、
 地道な努力で技を磨いていくことを、なにかしてますか? 
 情熱とか、経験とか、重要な判断とか、
 じぶんのやってるむつかしいことはあるでしょうが、
 基礎的な腕を上げるようなこと、なにかしてますか? 
 「向上心」というようなもの、失くしてませんか?

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
いやぁ、実を言えば、これ、ぼく自身に言ってることです。


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