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日本は「人力」韓国は「IT」日韓のコロナ対策、なぜ差がついたのか

プライバシーと安心・安全のジレンマ

「MERS」の経験があった韓国

新型コロナウイルス感染症は、時間差こそあったが、日本のみならず世界各国において猛威を振るった。そのため、世界各国がそれぞれ個別に対応に追われることとなった。

日本の隣国である韓国においては、2月下旬から3月上旬にかけて一時、感染爆発の状況に陥ったが、その後、感染者数の爆発的な増加を押さえ込み、小康状態へと落ち着かせることができた。

その韓国における新型コロナウイルス感染症対策は、「迅速かつ大量のPCR検査」、「感染者の移動経路の公開による接触者特定」などを中心としたものだ。

しかし日本では、こうした対策はとられなかった。日韓の対策の違いは、なぜ生じたのだろうか。両国の制度を比較しながら考えてみよう。

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まず前提として、韓国では、2015年のMERSの流行を受けて、感染者のプライバシーを制限した形で、接触者の追跡を行うことが出来る制度がすでに整備されていた。

そのため、新型コロナ感染者のスマートフォンやクレジットカードの使用履歴、ナビのデータ等の情報を用いて、強制的に感染者の感染経路を把握することが可能となっていた。さらに、それによって明らかになった感染者の詳細な移動経路について、氏名などを伏せた形で公開し、一般人も把握可能な状態にしている。

その結果、感染者と接触した恐れのある人が、自ら接触の可能性について把握できるようになっている。このような取り組みと大量のPCR検査の実施を併せて、韓国は感染の連鎖を抑えることができたといえる。