【緊急連載「J帝国 崩壊前夜」(6)】ジャニーズ事務所が、同事務所を約2年前に退所した元SMAPの稲垣吾郎(45)、草なぎ剛(45)、香取慎吾(42)の3人をテレビ出演させないよう、民放局などに圧力をかけていた疑いがあると公正取引委員会が判断した。公取委は独占禁止法違反につながる恐れがあるとして、17日までにジャニーズ事務所を注意したという。また香取ら3人に加え、メリー喜多川副社長(92)も公取委から事情聴取されていたことも明るみに。SMAPファンの反発は必至で、社長だったジャニー喜多川さん(享年87)が亡くなった同事務所は、再びブラック企業論争が巻き起こりそうな激震に見舞われた。
すべては2016年のSMAP解散から始まった。香取ら3人はしばらくソロで活動していたが、17年9月にジャニーズ事務所を退所。SMAPのチーフマネジャーだった飯島三智氏が立ち上げた新事務所に合流し「新しい地図」として活動を始めたのは周知の通り。
ジャニーズを辞めたことで、それぞれのレギュラー番組は消滅。香取の「SmaSTATION!」(テレビ朝日系)は17年9月に、草なぎの「『ぷっ』すま」(同)は18年3月、稲垣の「ゴロウ・デラックス」(フジテレビ系)は今年の3月末に放送終了となった。
地上波から“締め出された”3人は、活動の場をインターネットテレビ局「AbemaTV」や「ユーチューブ」など、ジャニーズの影響力がまだ“薄い”メディアに求めるしかなかった。
「円満退社(退所)とは言い難い以上、テレビ各局はジャニーズ事務所の顔色をうかがう。テレビ局が忖度して、彼ら3人のキャスティングを控えた部分はあると思うが、忖度せざるを得ない状況に追い込まれていたのも事実だ」
こう証言するのは、テレビ関係者。例えば、音楽番組でSMAPの映像使用を申請しても、答えは「NO」。新番組に「新しい地図」の3人を起用しようとすれば、ジャニーズから“探り”が入る。
無風と思われたネット媒体「AbemaTV」ですら「3人の番組にゲスト出演するタレントを誰にするかで、毎回悩まされた。ジャニーズに『○○なら大丈夫ですか?』と“お伺い”を立てることもあった」(関係者)。
言葉にはせずとも、醸し出す空気感は「新しい地図」の排除。独占禁止法の「注意」は、違反行為の存在を疑うに足る証拠は得られないが、違反につながる恐れがあるときに未然防止を図るために取られる措置だ。
舞台裏を知る芸能関係者は「公取委にはキー局の局員からタレコミがあり、水面下で複数の局員に接触を図っていたようだ。ジャニーズ側から送信された“圧力メール”を入手しているという情報もある。稲垣ら3人は3か月前くらいから公取委の聴取を受けていた。それらをもとに、満を持してジャニーズ事務所の“女帝”であるメリー氏を聴取した。少し前の話だ」と明かす。
公取委がジャニーズ事務所を注意したのは、ジャニーさんが亡くなった今月9日より前。訃報を伝えるニュースで、これまでとは打って変わってSMAPの映像がバシバシ流れたのも、そうした事情があった。
一方で、今回の「注意」は措置としては軽度のもの。法曹関係者によれば「公取委がオープンにできるのは、注意より上の警告からと相場は決まっている。なぜ注意レベルで表に出たのか不可解だ」という。事実、今回のニュースは公取委が直接公表したものではない。
「聴取されたメリー氏は『こんなの問題ではない』くらいのノリだったそうで、公取委も決定的な証拠はつかめなかった。『注意』というのは、メンツを保つための措置に近い。それなのにこんな大ごとになって、いまごろメリー氏は激怒していると思いますよ」(前出の芸能関係者)
何者かが“仕掛けた”とでもいうのか…。確かにジャニーさんが亡くなった後に表面化しただけに、うがった見方が出るのも仕方がないだろう。
とはいえ、これだけ大々的に報じられれば、ファンの反発は必至。16年のSMAP解散騒動の時は、レギュラー番組「SMAP×SMAP」(フジ系)で、中居正広(46)を含めた“造反組4人”をさらし者にしたことから“ブラック企業論争”が巻き起こった。
今回のニュースでそれが蒸し返される可能性が高い。本紙で再三再四報じている通り、ジャニーさんを失ったいま、“帝国”が大きく揺らいでいることだけは確かだ。(明日に続く)
【公取委判断の根拠】SMAPは解散後、香取ら3人がジャニーズ事務所から独立し、中居と木村拓哉が残留。同事務所は民放局などに対し、所属タレントの出演見合わせをほのめかすなどして、独立した3人を番組などに出演させないよう圧力をかけた疑いがあるという。
公取委は、こうした疑いのある行為は、独禁法が禁じる不公正な取引方法のうち、不当な「取引拒絶」か「取引妨害」につながる恐れがあると判断したとみられる。