「コロナとの長期戦」を選んだニューヨーク…日本との決定的「違い」

経済活動再開最終段階「フェーズ4」へ
笹野 大輔 プロフィール

ワクチンができたら接種するか?

ワクチン開発頼りの新型コロナとは、想像以上に長い付き合いになる。トランプ大統領は1兆円以上の予算を付け、新型コロナのワクチン開発「オペレーション・ワープ・スピード」 計画を急がせている。年内に新型コロナのワクチンの完成、年明けにはワクチン接種を目標にしている。だが、新型コロナは変異し続け、最近ではアリゾナ州での新型コロナが変異しているという報告も出た。

ワクチンは毎年のインフルエンザでもそうだが、その年の流行する「インフルエンザの型(ワクチン株)」を1つ予想してワクチンが市場に出回る。流行すると予想したインフルエンザのウイルスが変異したり、予想していたインフルエンザの型が外れたりすると当然そのワクチンは効かない。あくまでもインフルエンザの場合の話だが、新型コロナにおいても論理は同じことになる。

いまのところ7株が新型コロナのワクチンに絞り込まれている。これが新型コロナ渦においての小さな希望だ。もちろん希望を捨てる必要もないが、まだまだ時間がかかることは間違いない。

日本の東京駅に当たるグランドセントラル駅ニューヨーク(午後7時すぎ)
 

また仮に、ワクチンが完成したからといっても急に新型コロナ以前の社会には戻らないだろう。楽観的で治験にある程度慣れているアメリカ人でさえも、完成したワクチンの治験期間が短いと、ワクチンの副作用の有無を気にする。現在どれだけ治験が進んでいても、完全に健康な人しか治験に参加していない。

5月の段階ではアメリカ人の72%が「ワクチンができたら接種する」と答えていたが、男性より女性のほうが「接種する」と答える人は少ない。女性は妊娠への影響などの不安もあるが、治験期間が短いと男女に限らず、持病を持っている人なども接種に不安を抱えることになる。簡単に書くと、今年の年末あたりに「完成した新型コロナのワクチンは、いまのところ5ヶ月程度は(健康な)治験者に副作用は出ていません」という状態のワクチンができたとして、いったいどれだけの人が接種するのだろうか、ということだ*1

また、仮にすべての不安要素がないワクチンができても、1回の接種で何ヶ月間有効なのかも不明、それがくまなく全世界の人に届くのかも不明、となれば「ワクチン完成=新型コロナ終息」となるより、新型コロナとは長い付き合いになる可能性のほうが高い。

*1 ソース:Most Americans expect a COVID-19 vaccine within a year; 72% say they would get vaccinated(Pew Research Center)