モモンガ冒険譚!!   作:ブンブーン

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第3話 モモンガ、拠点完成

すっかり夜更の時間帯になってしまった。

周囲に《永続光(コンティニュアルライト)》の効果を持つランタンを設置しながらの作業は続き…漸く完成間近となった。

 

 

「これは完璧に近いんじゃないか!?」

 

 

興奮したモモンガは両手放しで喜んだ。

その様子に使役アンデッド達は歓喜に震えた。拠点が理想形に出来た事ではなく、主人が心の底から喜んでくれたからだ。

 

すっかり整地された小丘の洞窟周辺は一定の長さでキープされた芝生で覆われ、森との境には丸太で頑丈な防護柵を作った。外からだと要塞にも見えるその出来にモモンガは満足げに頷いた。

 

人工的に作られた洞窟を覆う丘の上にはエルダー・トレントが成っており、森の木々と比べてもかなり立派で頑丈な木だ。モモンガがエルダー・トレントに向けて親指を立てると、エルダー・トレントは根の触手を数本動かして喜びを露にした。

 

洞窟もそれなりに凝った造りになっている。

先ず入り口には『上位扉擬態魔(グレーター・ドアイミテーター)』を使っている。モモンガ以外の者が扉に触れた瞬間、その化けの皮を剥がし正体を露わにする。鋭い鉤爪を持つ無数の悪魔的な手と触手が襲い掛かり、扉が開いた先にあるのは本来の道ではなく螺旋状に鋭い牙が並んだ顎である。モモンガがポンポンと扉を叩くと僅かに扉が震える。これは至高なる主人に触れてもらえた事による歓喜の震えなのだが、当のモモンガ本人が気付く事はなく、その反応が面白く思ったのかワシャワシャと扉を激しく撫で回す。上位扉擬態魔は歓喜のあまり痙攣するようにガタガタと揺れた。

 

その様子を扉の前で整列していた他の使役アンデッド達は激しい嫉妬のあまり上位扉擬態魔に対し殺意を覚えていた。

 

扉を開けると中は洞窟……ではなく、地面も天井も壁も凹凸なくキチンと整えられた作りとなっていた。一定間隔で《永続光》のランプが壁に架けられており、誰かが通ると光る作りになっている。更に奥へ進み、最奥へと辿り着く。そこは一際広い空間になっていた。しかし、最奥の間には何も置かれていない。

 

 

「ここの仕上げは…フフフ、後のお楽しみだな。」

 

 

鼻唄まじりにモモンガは踵を返した。

 

外へ出て、洞窟から少し離れた場所へ移動すると無限の背負袋から小さな家の模型を取り出した。モモンガは模型を地面へ置くとすかさず離れる。

 

次の瞬間ー

 

ボォォーーン!!

 

小さな家の模型が原寸サイズにまで大きくなったのだ。

 

 

「『森の隠れ家(グリーン・シークレットハウス)(ワン)』。拠点作成系アイテムで、集団用もあるが……今回は個人用、だな。」

 

 

程良い感じの質素な山小屋(コテージ)を模した木造の建物だ。屋根には煉瓦造りの煙突が伸び、壁などにはツタが生えている。ブルー・プラネットお気に入りアイテムの一つでもある。

 

ユグドラシルではセーブが碌に出来ないエリアを攻略する際によく使うポピュラーなアイテムだ。特に使えるわけでもないのに、内装がやけに凝ったその造りは地味な人気を誇っている。

 

『森の隠れ家』には『個人用』と『集団用』の2種が存在するが、モモンガ今回使ったのは前者。実はそれを使うのは初めてである。

 

 

(ユグドラシルではみんなと一緒に移動する事が殆どだったから…集団用を使ってたんだよなぁ。個人用なんて持ってるだけであって使うことなんて一生無いんだろうな、って思ってたけど…。)

 

 

こんな形で使う事になるなど当時の自分では夢にも思わないだろう。しんみりした気持ちになり、無い胸の肋骨にひんやりと寂しい風が通っていく。

 

 

「っとと!いかんいかん…無い物ねだりは良くないぞ、悟!さて、内装はどうなってるか。」

 

 

直ぐに気持ちを切り替え、建物の中へと入っていく。

 

 

「おぉ〜〜、集団用とは少し違うんだな。ハハ、使うわけでもないのに暖炉まであるよ。」

 

 

中はカントリーな造りになっていた。

 

テーブルがあって、ソファや椅子があって、西洋風の暖炉式キッチンがあって、棚があって、ベッドもある。

 

狭過ぎず、しかし広過ぎない質素で落ち着いた雰囲気は下級国民である鈴木悟としては非常に好ましい造りとなっていた。

 

 

「天井はランプ式か……魔法の《永続光(コンティニュアルライト)》とは違う原始的な。うん、良いじゃないか!」

 

 

まさにモモンガが望んでいた住処が今ここにある。実際に使うかどうかも分からない家具や食器などは置いておくとしても、素晴らしい出来だ。ブルー・プラネット…いや、他のメンバーがこの場にいたら大層喜んだ事だろう。

 

ここで既に気付いた者もいると思うが、この小屋がモモンガの住居で例の小丘の洞窟は『宝物庫兼倉庫』の扱いとなっている。モモンガが持っている道具や貴重品、希少アイテム…更にこの世界で手に入れたアイテムもその宝物庫に仕舞う事に決めたのだ。

 

上機嫌で小屋から出るモモンガは少し離れた向かいに立つ3つの小屋へ目を向けた。

 

あの3つの小屋はゾンビや媒体を持つ使役モンスター達専用の住処として利用するつもりだ。中は特に家具もないが、彼らにそんな物は不要ゆえにただ雨風を凌げる建物だけを用意したのだ。

 

 

「何もないのは少し心苦しい気もするが、本当に要らないからしょうがないよな。」

 

 

ウォートロール・ゾンビとなったグだけは個人用の小屋を持っており、小丘の直ぐ真横に建てられている。彼はエルダー・トレントに次ぐ宝物庫の門番である為その位置にいるのだ。

 

モモンガは宝物庫へ戻っていく。

 

上位扉擬態魔の扉を開き、洗練された様な長い石畳の廊下を進んでいく。

 

これから始めることが何気に楽しみでもあったモモンガは思わず軽くスキップしてしまう。実はその様子を内側にも眼(?)が付いている上位扉擬態魔は目撃しており、主人の可愛らしいその動作に思わず身をよじってしまい、扉が軋むような音が響いた。

 

そしてー

 

 

「さて…!じゃあやるか。」

 

 

宝物庫の最奥まで辿り着くとモモンガは無限の背負袋(インフィニティ・ハヴァサック)を発動させる。モモンガの胸の前あたりに渦巻く漆黒の空間が現れるとそれに手をかざした。

 

 

「全ての道具を…解放!!」

 

 

シーン……

 

 

「あれ?」

 

 

漆黒の空間からは何も出てこない。それなりにキメ顔で告げた分めちゃくちゃ恥ずかしいのだが、まさか異世界に来たことで仕様が変わったのかと内心焦った。

 

 

「お、おーい…?」

 

 

モモンガは何となく漆黒の空間を手でバシバシと叩いた。映りの悪いテレビを叩く様に。

 

その瞬間…

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!!

 

 

 

鉄砲水ならぬ大砲水の如く勢いよく放出されるアイテム群。モモンガはどうやってかは不明だが、漆黒の空間に必死に捕まっていた。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!???」

 

 

それから約5分後…

 

宝物庫はモモンガがユグドラシルから集めていたアイテムやユグドラシル金貨で天井一杯になるまで埋め尽くされてしまった。

 

 

「ふ〜〜死ぬかと思った。死んでるけど。」

 

 

冗談を言いながら乱雑に積もれたアイテムや金貨の山を眺めた。

 

 

「こんなに溜め込んでたんだなぁ。うっわぁ、懐かしいなアレ。おぉ!こんなものまで持ってたのか!?…ハハ、やっぱり整理はするものだな。」

 

 

近くのアイテムを拾いながら一つ一つ見ていく。懐かしいものから、あまり仕舞った覚えの無いものまで様々だった。

 

アイテム群も気になるが一先ず金貨を集める事にした。モモンガは無限の背負袋から……背負袋…か…ら……

 

 

「あぁ〜〜失敗したぁ〜…。」

 

 

探し物はあの山と積もれた金貨やアイテムの中にある。恐らく無限の背負袋を解放すると、その中にある収納型アイテムもその中身を撒けてしまうのではないのか。

 

そう考えたモモンガはガックリと肩を落とす。こうなる事なら必要な物だけ取り出してから解放すれば良かったと後悔した。

 

モモンガは少しげんなりした様子で山登りを始めた。

 

 

 

ーーーーーーー

約1時間が経過した。

財宝の山の頂上がモコモコと動くと、金貨やアイテムを撒き散らしながら勢いよくモモンガが這い出てきた。

 

 

「ヨッシャアッ!やっと見つかった!!」

 

 

上位道具探知(オール・ディテクトマジックアイテム)》と《道具上位鑑定(オール・アプレイザルマジックアイテム)》の併用で、何とか目的のアイテムの場所は見つかったのだが、運悪く山のど真ん中に埋れていた。それを掘り起こそうにも掘れば掘るほどに山が全体的に微妙にズレてしまい、ズブズブと下へ落ちて行ってしまう。まどろっこしくなったモモンガは豪快に財宝の山へダイブした。ところがどっこい、ダイブした勢いで目的のアイテムもどっかへ行ってしまった。

 

もうこうなれば地道に探すしかない。そう考えたモモンガは財宝の中を泳いで探したのだ。

 

見つけたソレは『巨神の財布(パース・オブ・タイタン)』と呼ばれる金貨収納の謂わゆる財布型マジックアイテムである。最大収納金額は1000億枚で、ユグドラシルでは特に珍しくもないオーソドックスな財布だ。

 

モモンガは掌サイズの巾着袋の紐を開けると一斉に山と積まれた金貨が吸い込まれていく。十数秒も経たないうちに金貨だけが綺麗さっぱり無くなった。それでもかなりの量のアイテム類が山積りになっている。

 

 

「さてさて、俺の所持金は幾らかな?」

 

 

ユグドラシルでも最近数えていなかった自身の所持金…そもそも稼いだ金貨の大半はナザリックの運営費用に注ぎ込んでいた為、大した額は期待していない。モモンガは巨神の財布に入った金貨の総額を確認する。

 

 

「10億枚。……うーん、10億か〜。」

 

 

モモンガは空を仰ぎながら悩ましげに唸った。

ユグドラシル金貨10億枚……少ないわけではないが余裕があるわけでもない。確かに期待した訳ではないが。

 

一見この金貨10億枚もかなりの量と思える。実際かなりの大金だ。ただし大金に見えるのはユグドラシル初級〜中級レベルのプレイヤーからしたらの話し。モモンガの様にカンストレベルでかなりやり込んでいるプレイヤーからすればさして大金でもない。

 

ユグドラシルでも上級以上のプレイヤーになると、序盤中盤程度のエリアやダンジョンに足を踏み入ることは全くと言っていいほどない。上級者向けのエリアやダンジョンにしか欲している資材や超希少アイテム、金貨etc…が無い。何より中級以下だと敵が弱すぎでやり甲斐もない。レアアイテムのドロップもない。

 

そんな上級エリアやダンジョンへ赴くと回復や補助、巻物(スクロール)などのアイテムや様々な効果をもたらす装備品が必要になる。上級ともなれば生半可なシロモノでは大した効果など期待出来ない。故に高位や最上級が求められ、ショップでそれらを購入するとその金額はとんでもないものになる。

 

例えば純粋な回復アイテムともなれば治療薬(ヒーリングポーション)の最上級、『完全なる霊薬(パーフェクト・エリクサー)』が必須となる。

 

この完全なる霊薬は1つあたりユグドラシル金貨500万も掛かる。更に第十位階の魔法が込められた巻物だと、物にも寄るが基本的相場として1つあたり約250万以上もする。

 

これがより希少な消費アイテムや装備品ともなると一つあたり1億以上もする。

 

上級者プレイヤーともなるとこれぐらいのモノを用意しなければ、エリアやダンジョン攻略は勿論、戦闘に於いてもかなり苦戦してしまう。更に付け加えるなら、100レベルNPCの蘇生には金貨5億枚が必要になる。

 

そう考えるとモモンガの所持金10億は少なくはないが決して多くもなく感じるだろう。だからこそ、モモンガは金銭面で若干の不安を抱いていたのだ。

 

 

(まだこの世界の街並みや商売…売ってる物からその価格までは把握はしていないが、モンスターが弱いからと言って売ってる物が安いとは限らない。下手したらユグドラシルの上級アイテムよりも高いかもしれない。そう考えると……)

 

 

この世界のお金……外貨は是非とも手に入れたい。無論、盗むなどと言う外道な真似をするつもりはない。

 

 

(働くか。まぁ社会人として当たり前の事だよな。金を稼ぐには先ず働くこと。就職先を見つけないとなぁ。でも…)

 

 

自分の骨の手を見る。

このアンデッドの姿は多分…いや、どう考えても不味い。

 

 

「人間種プレイヤーに襲われる可能性がある。それもガチ戦闘カンストプレイヤーだったら最悪だ。いや、そもそも俺以外にこの世界へ来ているプレイヤーが居るのかすら不明だ。もし、居たとしても敵対しないで……いや、難しいか。」

 

 

ユグドラシルで魔王ロール、しかもDQNギルドのギルド長で非公式裏ラスボスと認識されている。十中八九衝突は免れないだろう。

 

 

「仮にプレイヤーが居なかったとしても、この世界の人間はアンデッドを忌避しているのかも知れない。そうなると…この身体は不味いよなぁ〜。」

 

 

モモンガは考えた。

外貨を稼ぐにはちゃんと文明文化が発展している場所で働くしかない。しかし、この死の支配者(オーバーロード )の身体ではそれも難しい。幻術を掛けて自分を人間に化けると言う手も有りだが、幻術系魔法は高位のモノでも看破する方法は意外と多い。魔法が使えるとしたらこの世界の人間ーーこの世界に人間がいるのかはまだ不明だがーーがそれを看破するスキルや魔法、アイテムを持っていないとも限らない。その逆も然り。

 

 

(うーん、頭が痛くなってきた。まぁ…この問題は未来の俺に託すとして、今は荷物を片付けよう。)

 

 

モモンガはまだ山と積もれているアイテム類を眺めた。今日も徹夜かも知れない。こういう時には、この身体はやはり便利である。

 

その後はひたすら《上位道具鑑定(オール・アプレイザルマジックアイテム)》でアイテムを鑑定しながら整理していた。超希少アイテムに懐かしい物、「アレ?こんなのあったっけ?」な物や効果を持たないアイテムなど様々だ。

 

装備品でも多くのモノが見つかった。中には装備出来ないアイテムもあったがコレはメンバーが要らないからと言って捨てようとしたのを「捨てるくらいなら…」と、貧乏癖で貰った物だ。

 

 

「やっぱり無理か…。」

 

 

試しに持っていた剣を持って、それを空中で振るおうとした瞬間、まるではたき落とされた様に剣が手から落ちてしまった。魔法職は戦士職の武器防具を装備することは出来ない法則はここでも生きている事になる。しかし、魔法詠唱者のレベルをそっくりそのまま戦士レベルへ移し替える魔法《完璧なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)》を使えば何の問題もなく剣を振るう事が出来た。鎧や剣以外の武器も装備可能となったが、戦士化中は他の魔法は使えなくなり、純粋な戦士職相手では総合的な能力で見ても大きく劣る。

 

 

(ユグドラシルでは微妙だったけど、この世界なら使い方によってはかなり有用だな。)

 

 

《完璧なる戦士》を発動させながら様々な武器防具を装備してその効果や使い方を調べていると、ある装備に手が伸びた。

 

 

(あ、コレ…。)

 

 

それは漆黒の全身鎧だった。

たっち・みーの様な戦士にも憧れていたモモンガは彼を模した全身鎧をユグドラシル時代にコッソリと作っていたのだ。『あまのまひとつ』の様な鍛治職プレイヤーでは無いため、クオリティや性能は大きく劣るが個人的には結構満足な一品となった。

 

 

(たっちさんが白銀の聖騎士なら俺は漆黒の暗黒騎士だ!…って、夢中で作ったんだっけ。使う機会は殆ど無かったけど。)

 

 

ランクは精々最上級から伝説級。モモンガ程のプレイヤーからすれば特に欲しいとは思わない性能だ。だが、モモンガにとってはコレは性能云々よりも浪漫と憧れが詰まった物だ。

 

 

「……機会があったら使おうかな。」

 

 

漆黒の全身鎧を纏ったモモンガは、立て鏡に移る自分の姿を見ながら静かに鎧を外した。

 

更にアイテム整理を続けていると驚くべき物を見つけた。ここへ来た時にてっきり消滅でもしたのかとばかり思っていた物だ。

 

 

「なっ!?こ、こんな所にあったのか!?」

 

 

それは『アインズ・ウール・ゴウン』の象徴とも言えるギルド武器『スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン(SoAOG)』。文字通り、ギルド:アインズ・ウール・ゴウン(AOG)が作成した(スタッフ)型のギルド武器である。ギルド長であるモモンガ用に調整されているが、ギルド武器はギルドの『核』そのもの。ギルド武器が破壊されるとそのギルドは崩壊する。故にユグドラシルではナザリックの外へ持ち出すことは滅多に無かった。

 

ユグドラシルのサービス終了十数秒前にSoAOGを持って玉座に座ってその最後を待っていたモモンガだったが、どういうわけか草原に立っていた。SoAOGもその時既に手から消えていたのだ。

 

 

「こんな唯一無二の超希少なギルド武器がなんでいつの間に無限の背負袋にあったんだ?うーん、全くもって訳が分からない。まぁでも…これがあるのはかなり心強い。…絶対に紛失出来ないな。」

 

 

モモンガはその手に持つSoAOGを見つめる。

 

 

(あまりにも理想が高すぎて一度作成を断念しよう、なんて言ってた人もいたなぁ。本当にこれを作るのには苦労したよ…有給も給料もコレのために幾ら注ぎ込んだか。でも…作ってよかったと心の底から思えるよ。)

 

 

ヘルメス神の杖(ケーリュケイオン)をモチーフにした黄金のスタッフ。七匹のヘビが絡み合った姿をしており、のたうつ蛇の口が神器級(ゴッズ)アーティファクトの宝玉を咥えている。

 

一言で言えば神々しい杖…それがSoAOG。

宝物庫に置くのはハッキリ言って不安だ。

 

モモンガが会得している魔法の他に、モモンガの持ち物の中に盗み防止用の強力なマジックアイテムも幾つか見つけた。それらをこの宝物庫に惜しみ無く使用するつもりなのだが、それでも不安は残る。

 

よってSoAOGはこのまま無限の背負袋の奥底で大切に保管する事に決めた。モモンガとしても離れた場所にあるより手持ちにあった方が安心する。

 

 

(ここにナザリックがあれば別なのだが。)

 

 

何よりもSoAOGの性能は様々な局面で大いに役立つ事は間違い無い。ランクは神器級なのだが、スタッフ本体に込められた力は間違い無く神器級を超越している。かの世界級(ワールド)にも匹敵するレベルと言っても過言ではない。

 

 

「AOGの証…細心の注意が必要だな。」

 

 

モモンガはSoAOGを丁寧に仕舞う。

コレと自分が装備している世界級アイテムは死守すると固く誓った。

 

アイテム整理を再開するとモモンガはあるアイテムを見つけた。

 

 

「これは…?…ま、まさか……ッ!?」

 

 

 

 

ーーーーーー

アイテム整理が済んだ頃には、すっかり夜も明けてしまっていた。アンデッド故の疲労無効の身体だったからこそ1徹で済んだと言えよう。生身の身体であれば1週間は掛かっていた可能性もある。

 

 

「良い感じに纏まったんじゃないか?」

 

 

ウンウンと腕を組み頷くモモンガは上機嫌だ。

 

アイテム整理の結果、それなりに希少なアイテムが結構見つかり、中には神器級のアイテムもあった。高位魔法が込められている巻物やその他消耗品も結構ある。大した効果を持たない物でもあるとないかで言えばあった方が良いに決まっている。

 

こうしたアイテム群を超希少な物から下級品まで大まかに分けて、所定の棚や箱に片付けた。

 

様々な魔法の鎧や衣服はマネキンに飾られ陳列し、剣や弓、杖などの武器は壁に掛けられている。その中にはこの世界で手に入れたあの大剣も掛けられていた。

 

アクセサリー類などの装備品はショーケースに収められていた。特に貴重なものは奥の壁に埋め込み式のショーケースの中に入っている。

 

更に奥には50以上はある綺麗な樽が置かれていた。その樽に入っているのはユグドラシル金貨だ。流石に10億を常時所持するというのは、ユグドラシルでならともかく、リアルな異世界ともなると小市民の鈴木悟は不安だった。故に所持金は100万程度にする事にした。残りは全てあの樽の中にある。実はあの樽もマジックアイテムで『底抜けの樽』と呼ばれている。見た目以上に多く収納出来るこの樽は主にアイテムの小分けによく使われていた。

 

 

「それを50個もあったのに……少しは整理してくれよ、俺。」

 

 

無限の背負袋大放出の際、この樽に入っていたアイテムはばら撒かれる事はなかった。ちゃんと整理していればここまで苦労はしなかっただろう。モモンガは過去の自分にガッカリする。

 

あとやるべき事はあるアイテム(・・・・・・・)を調べるのみ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

「完成ーーー!!」

 

 

外に出ていたモモンガは丘の上に登り、ずっと外で整列していた使役アンデッド達に向かって拠点作成完了を告げた。

 

ピースをしながら両手を上げて嬉しそうに宣言するモモンガを見て、使役アンデッドたちも真似してピースをしながら両手を上げる。

 

背後のエルダー・トレントも嬉しそうに幹を揺らしている。

 

 

「皆、よく頑張ってくれた!本当にありがとう!想像以上のクオリティだ!」

 

 

アンデッドたちは歓喜した。

至高なる主人からここまで賛美の言葉を贈られることに…役に立てた事に。

 

しかし、流石に此処までの数は必要ない。

モモンガは少し寂しい気持ちになりながらも、スケルトン達とトロール、オーガ・ゾンビを消すことにする。スケルトン達は最期まで恭しく頭を下げて塵となって消えた。ゾンビ達は蒸発する様に消滅した。

 

残ったのはウォートロール・ゾンビとデスナイト5体、エルダー・リッチ10体。モモンガは残った者たちにある事を告げる。

 

 

「諸君。我々は今、ユグドラシルではない全く未知の異世界へと転移してしまった。」

 

 

心無しかエルダー・リッチとデスナイトの口が開いている。恐らく「なんだってー!?」と驚いたリアクションをしているのだろう(可愛い)。だが、何故、ウォートロール・ゾンビのグまで驚いているのかはサッパリ分からない。「いや、お前この世界の生物じゃん。」と言うツッコミは意味がないのでしない。

 

 

「幸いにもアイテム類はそれなりの蓄えがあった。暫くは不便な思いをする事はないだろう。しかし!!……問題なのは金貨だ。資金面が心細い事が判明してしまった。」

 

 

エルダー・リッチとデスナイト達はうんうんと頷き返す。グは何故か首を横に傾げる。嘘だろお前分からんのかい。

 

 

「そこで私はこれより遠方へと向かい外貨を稼ごうと思う!略奪などと言う事はしない!我々(?)は社会人(??)なのだ!!」

 

 

例の2種は「おぉー!」と拍手してくれている。グは感心したように腕を組んで頷いていた…なんかムカつく。

 

 

「無論、その前には先ず外の情報を集める必要がある。情報を集め、それを吟味し、危険性が無い事を確認する。」

 

 

グの略奪品を見るとあの衣服や装備は人間種のものだった。それも比較的新しいものが多かった。此処は辺境の森の奥深くにある為、人間の文明圏とは近くないにせよ、何処かにはある筈だと睨んでいた。

 

 

「仮に町へ赴くにしても、恐らくこの姿では人間達に怖がられるだろう。この世界の者はアンデッドを忌避し恐れている可能性が高い。」

 

 

これには3種共に首を横に振った。3種は偉大なる主人の御姿は美の化身であるため、気にする必要などないと伝えたかったのだ。もっともそれにモモンガは気付く事は無かった。

 

 

「そこで……私はこれを使う事にした。」

 

 

モモンガはある指輪を皆に掲げて見せた。

 

 

「これは伝説級(レジェンド)アイテム…その名もーー」

 

 

ーー『人化の指輪』と言う。




階層守護者たちの創造主…つまりギルドメンバーがナザリックの財を欲するあまり「モモンガを殺せ」と守護者たちに命令したら、みんなどんな行動をすると思いますか?

デミウルゴスは忠臣である事は判明済みですが。

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