新型ウイルスとの共存、「この先何十年も続く」 英専門家が警告
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世界中で新型コロナウイルスのワクチン開発が進んでいる。しかし、新型ウイルスがワクチンで消える可能性は低く、イギリスはこの先何年にもわたってこのウイルスと共存していくことになると、複数の専門家が警告している。
保健慈善団体ウェルカム・トラスト会長のサー・ジェレミー・ファーラー教授は21日、英下院の保健委員会で「クリスマスまでに事態は収束しない」と述べた。
続けて、人類は「数十年」にわたって新型ウイルスと共存していくことになると述べた。
ボリス・ジョンソン英首相は先週、クリスマスまでに平常の生活に戻るよう期待していると発言していた。この時、ジョンソン首相は新型ウイルス対策の制限緩和拡大を発表。レジャーセンターや屋内スイミングプールを今月下旬に再開するほか、今秋から大規模集会を認める見通しだとした。
しかし専門家たちは、下院議員の超党派グループに証拠を示し、新型ウイルスが依然として存在していると、現実的に捉えるのが重要だと主張した。
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「この先何十年も」共存
英政府の新型ウイルス対策を策定している非常時科学諮問委員会(SAGE)メンバーのファーラー教授は、世界はCOVID-19(新型ウイルスによる感染症)と「この先何年も、何年にもわたって」共存していくことになると述べた。
「クリスマスまでに事態は収束しない。この感染症は消えてなくなったりしない。今では人間に特有の感染症だ」
「実際に、ワクチンや非常に優れた治療法があったとしても、人類はこの先も、何年も、何年にもわたって新型ウイルスと共存していくことになる。(中略)何十年間も」
教授はさらに、今夏が感染の第2波を防ぐための「重要なフェーズ」になるとして、現状に満足して気を緩めないよう求めた。
また、新型ウイルスの危機的状況を「『乗り越えた』と気を緩めたりすれば、間違いなく感染の第2波に直面する。いとも簡単に再び同じ状況に陥るだろう」と述べた。
ファーラー教授は、治療やワクチンへの投資だけでなく、検査能力をさらに構築するのが重要だとした。
ワクチンに「永続的な効果は期待できない」
英オックスフォード大学は20日、新型ウイルスのワクチンの臨床試験で免疫反応を誘発する効果と安全性が確認されたと発表した。しかし同大学教授のサー・ジョン・ベルは、COVID-19が消滅する可能性は低いと考えていると述べた。
「この病原体はこの世界に永遠に存在し続ける。どこかへいったりはしない。それが現実だ」と、ベル教授は下院議員たちに述べた。
「こうした病原体を消滅させるのがどれほど大変なことか考えてください。例えばポリオの根絶計画は15年間続いているのに、ポリオはいまだに存在している」
「そのためこのウイルスの感染は今後も、増えたり減ったりする。このウイルスがまた活発になる冬が、たびたび訪れるようになる」
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「このワクチンで長期的な効果が得られる可能性は低いので、継続的なサイクルでワクチンを接種しなくてはならない。そうするうちにまた感染者が出て、またワクチンを接種して、また感染者が出ることになる」
「新型ウイルスを撲滅するという考えは、現実的ではないと思う」
医療責任者は政府を擁護
英政府の医療責任者、イングランド主任医務官(CMO)のクリス・ウィッティー教授もまた、議員から政府の新型ウイルス対応について質問を受けた。
ウィッティー教授は、ロックダウン開始が遅すぎたと非難されている政府の対応を擁護した。
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アウトブレイクの規模に関する重要な証拠と、感染拡大の速度に関するモデリングは3月16日に担当閣僚たちに提示されたものの、完全なロックダウンが発表されたのは丸一週間後だった。
決定の「重大さ」を考慮すると、「大きな遅れ」ではなかったとウィッティー教授は述べた。また、学校の閉鎖など、その間にすでにほかの対策は実施していたと指摘した。
こうした中、マット・ハンコック英保健相も、ウイルス検査に関する政府の実績や、4月末までに1日10万件の検査を実施するとの目標設定を擁護している。
検査の実施については、適当すぎるという批判の声も上がっている。
しかしハンコック保健相は科学技術委員会に対し、前例のないスピードで「規模を拡大」する必要があり、重要な対応だったと述べた。
「困難で大胆な目標を打ち立てる一番の意味は、全員に対して『これが目標だ、各自がやるべきことをやって、全員で実現しよう』と目的を共有することにある」