イギリス政府、香港市民の特別ビザ公表 海外市民旅券の保持者に
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中国政府は香港に対する国家安全維持法を施行。イギリス政府はこれを機に対応に動いた。写真は21日に香港市内のショッピングモールを制圧する機動隊
イギリス政府は22日、約300万人の香港市民がイギリス市民権を獲得できるようになる条件を公表した。中国政府が香港に対する厳しい国家安全維持法(国安法)を施行したのを機に、イギリスは対応に動いていた。
プリティ・パテル英内相は、1997年の香港返還以前に生まれた香港市民が持つことができるイギリス海外市民(BNO)パスポートの保持者と、その扶養家族は、来年1月からイギリスの特別査証(ビザ)を申請できるようになると発表した。
パテル内相は、イギリスは香港市民の「自由を守る」という「約束を果たす」と述べた。
中国政府はこれまでにもイギリスに対して、内政干渉を控えるよう警告している。
中国外務省の趙立堅報道官は5月の時点で、香港のBNO旅券保持者は全員が「中国国民」であり、イギリスの動きは「国際法違反」にあたると反発していた。
特別ビザを取得するには
BNO旅券を持つ人はすでに、査証なしでイギリスに6カ月滞在できる。
イギリス政府の今回の決定によって、今後は2回に分けた30カ月の長期滞在か、5年間の長期滞在について、許可を申請することができるようになった。さらにこの後、市民権の申請に道が開かれることになった。
BNO旅券の保持者が特別ビザで渡英する際には、BNO旅券を持たない伴侶や18歳未満の子供を含む扶養家族の同行が認められる。
1997年以降に生まれた人はBNOパスポートを持つことができないし、子供に継承することもできない。ただし、BNO保有者の子供で1997年かそれ以降に生まれ、18歳以上の人は、家族の一員ならばBNOを申請できる。
特別ビザによる長期滞在を希望する場合、就労や不要で、最低収入の条件もない。ただし、BNO保有者はイギリス政府による補助金支給の対象にはならず、生活に必要な経済力を確保する必要がある。
結核陰性の証明が必要とされ、重大犯罪の有罪歴があってはならない。ただし、犯罪歴が香港での反政府デモ関連のみだった場合は、この限りではない。
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なぜイギリスは香港市民に特別ビザを
香港はかつてイギリスの植民地で、1997年に中国に返還された。
イギリス政府と中国政府は香港返還前の1984年、「一国二制度」を維持することで合意。英中共同声明と呼ばれるこの合意には、香港では2047年まで、集会結社の自由や表現の自由、報道の自由など基本的人権が保障されるという約束も含まれていた。
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しかし、中国政府は6月30日に国安法を施行。イギリスはこれによって、香港市民の基本的人権が侵害されるおそれがあると懸念を表明している。
新法には、以下の内容が含まれる。
- 中国中央政府と香港の地方政府への「憎悪を扇動」する行為は違法
- 公共交通機関の損傷を含む様々な行為はテロリズムとみなされる
- 捜査機関は事件容疑者を盗聴することができる
- 中国が「非常に深刻」とみなした事件の審理は、中国大陸の裁判所で、非公開で行う
- 警察に要請されればインターネット・プロバイダーはデータを警察に提供しなくてはならない
中国政府は、2019年から香港で相次いだデモを防ぐため、国安法が必要だと主張している。
しかし、同法の法案が示されて以来、香港内外で危機感が高まり、香港の自治権が損なわれると批判の声が上がっている。