「三密と濃厚接触が売りだから」と愛好者 足立区のフィリピンパブでクラスター!
いつかはこういう報道があると思っていたが、やはりクラスターがフィリピンパブ(以下、ピンパブ)で起きた。報道では足立区としか書かれていなかったが、そこが竹ノ塚であることは、ピンパブ好きなら、すぐにピンとくる。
地域的なイメージと違い、意外に足立区はピンパブは少ない。かつては北千住に2軒あったが数年前に閉店。綾瀬や西新井にはスナック形式の店はあれど、ピンパブという形式の店はないはずだ。
というより、すべて竹ノ塚に一局集中しているのだ。15年ぐらい前に、ある男性誌で竹ノ塚には一体何軒のピンパブがあるのかというどうでもいい企画をガチで敢行したところ、実に当時で50数軒が営業していた。もちろん、中にはスナック程度の店もあったが、この多さはおそらく全国でも有数だろう。名古屋の池田公園もこれぐらいの数があるが、東日本では最大であることは間違いない。
当時、取材した一軒のピンパブのママさんがこんな話をしてくれた。
「もともとこんなになかったよ、確か一軒店を出したら、これが流行って、それが口コミでフィリピン人の間に広まり、いつの間にかこんなに増えてさ、ここ10年ぐらいじゃないかな。あと、この辺の警察が比較的寛大でさ、これも大きいね。多分、おまわりさん好きだったんだろうね」
案外言い得て妙で、ピンパブ全盛期の2000年代初期は錦糸町あたりのピンパブは警察、入管の人間も多く遊んでいて、事前に「来週手入れあるから気をつけろよ」なんてフィリピーナ(フィリピン人女性)に情報を教えていた。実はお上もピンパブ好きが多いのだ。
こうして竹ノ塚はいつの間にかリトルマニラと化した。あと、この近辺の家賃がかなり安いということも増殖させた要因だろう。
フィリピーナは概して数人の仲間とルームシェアで暮らし、ほとんどは母国に送金して家族を助けているので生活にゆとりはない。家賃が安いのはかなりメリットがあるのだ。なにしろ3DKでも7、8万の家賃で済むのだから都内では破格だ。
エリアで言うと、竹ノ塚ほどではないが、東東京はピンパブが圧倒的に多い。錦糸町、上野、亀有、小岩、立石、葛西、亀戸。間違っても西麻布や代官山には存在しない。この地域を分析するとピンパブに通う客層も自ずと見えてくる。
客層は圧倒的に高齢者と低所得者層が多い。定年過ぎた80代ぐらいの方もいる。そして高給取りではないブルーカラーの人種。IT関連やらYouTuberなど間違ってもピンパブにはいない。職人、自営業、タクシー運転手、時に輩。年金暮らしの爺さん。なぜブルーカラーの客層が多いのかというと、次のことも一因として挙げられる。
職人がそのままニッカを履いてきてもピンパブは入店を断らない。輩が肩を切って入店しても、よほどのことがない限り断らない。おっさんが寝巻きできても、ヤンキーがジャージで来ても、皆ウエルカムしてくれる。このコンプライアンスのなさが、さらに客層の幅を低いところで広げて行く。だから心地いいわけだが……。
竹ノ塚は、働くフィリピーナの住環境も良いし、年金や生活保護で暮らす低所得者層も多い、ヤンキーやら輩の類も多い。ピンパブが唯一の憩いの場となるのだ。キャバクラはこんなに懐が深くない。
この寛大さと、緩さに加えて、フィリピーナは同じ東南アジアの女性よりいろんな意味でフレンドリーで濃厚接触にもともと抵抗感がない。やはり先祖様にスペインの血が入っているからだろう。この密着度合いはキャバでは味わえない醍醐味で、ここにおっさんたちは勘違いも含めてどハマりしてしまう。
当然、コロナ感染しやすい。三密と濃厚接触がもともとウリで、それを求めに客はくるのだから。さらにピンパブはカラオケも定番。ここもキャバと違う。飛沫もそりゃ飛び交うだろう。
そういう意味でも、いつクラスターがピンパブで起きてもおかしくはなかったが、とうとうという感じで、ピンパブ好きとしてはやはり衝撃は大きい。報道された店の一軒は自分も何回も通っていたので、なおさらだ。コロナにより都内のピンパブは相当厳しい状況に追い込まれるだろう。
母国の家族のため懸命に働いていたフィリピーナやここにしか行き場のなかった客が一日も早く完治することを願うしかない。(文◎比嘉健二)