コネクテッドTVやオンラインラジオなどの新しいメディアが次々に登場する中、マーケターがブランドの価値を守りながら広告戦略を多様化させていくために必要なことは何か。DSP大手のThe Trade Desk(以下、TTD)で北アジア担当シニアバイスプレジデントを務めるトロイ・ヤン氏が語った。
今の日本のアドテク業界が抱える根本的な問題は「アドネットワーク」と「プログラマティック広告」が混同して語られていることにあります。
両者は似て非なるものです。アドネットワークとは複数の媒体(Webサイト)に一括で広告を配信できるネットワークを組み、アドサーバを持ち、複数サイトへの広告の一括配信を行う仕組みのことです。これに対してプログラマティック広告は、データに基づいて「いつ」「どこで」「誰に」「どんなフォーマットで」広告を見てもらうかを精密にコントロールできる仕組みのことです。アドネットワークは結局のところ複数広告枠の集合にすぎず、売る側と買う側の思惑が100%一致するとは限りません。これに対してプログラマティック広告では、個別の広告インベントリー(在庫)ごとに自動的に取引が行われ、より柔軟でニーズにあった運用が可能になるのです。
両者が混同して語られる本質的な原因は、メディアプランニングという概念の欠如でしょう。本来メディアプランニングとは、ブランディングを見据えたマーケティングの目標ありきで、どのメディアを選んでどのように組み合わせていくかを考えることです。しかし現在は「Facebook」「Instagram」「LINE」などの定番ツールを入れておけばOKという風潮がまん延しているように思います。もちろんそれらの選択肢にも良さはありますが、それだけで満足するのは、例えるならば、回転ずしを食べた経験だけでおすしを語るようなアンバランスな感じがあるわけです。
データに基づいて「いつ」「どこで」「誰に」「どんなフォーマットで」広告を見てもらうか精密にコントロールできるプログラマティック広告は、本来ブランディングにこそ適した手段であるはずですが、これらの誤った認識によってそのメリットを生かしきれていない現状があります。
こうした中、純広告をプログラマティック広告に移行したいという先進的な広告主もいます。というのもプログラマティック広告であれば、PMP(プライベートマーケットプレース)で純広告と同じ品質を担保しながら、かつデータを活用してアドトラッキングもできるようになるからです。これまでバラバラのフォーマットで上がってきていたレポートを、原稿も含めて一元管理できるようになるというメリットもあります。広告主にとって効果と効率が両立するこのような状況は、理想の形といえるのではないでしょうか。
純広告をプログラマティックにすることは、いわゆるアッパーファネルの施策にもDSPを使ってもらえるようになるわけですから、業界全体としても望ましい展開のはずです。
こうしたメリットの認知を進め、業界全体が次のステップに進むためには、広告主とエージェンシー、テクノロジーベンダー、そしてメディアが一体となって考える必要があります。小さな誤解を一つずつ解いて啓蒙していくことは、われわれのミッションでもあると考えています。
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