挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第二章 少年期編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
74/225

第三十九話 優秀な人たち

 カインとアレクの二人は、王城を後にした。

 テレスの馬車で王城まできたこともあり、王城から馬車を出してもらい、屋敷まで送ってもらった。

 もちろん、いつもの近衛騎士団の馬車だ。


「いつもありがとうございます」


 カインは近衛騎士たちにお礼を言い、アレクと共に馬車を降りる。

 騎士はカインに手を振り、帰っていった。


「カインはいつも、近衛騎士に送ってもらっているのかい?」


「自分の馬車で行かない時は、いつも送ってもらっていますね。訓練に付き合わされることもありますけど」


「カイン、普通はね、近衛騎士団を送迎で使える貴族なんて誰もいないのだよ。近衛騎士団は王城の警備や王家の警護などを受け持っている。それを送迎で使っているとは……」


 アレクは額を手で抑え、ため息をつく。

 二人は屋敷に戻ったあとに、すぐに応接室で打ち合わせを開始した。

カインとしては、ドリントルの住民の戸籍を作りたいこと。スラム街の解体をし、職業につかせること。孤児のための施設を作りたいことをアレクに説明する。カインは前世の知識でも領地経営などしたことはないのだから、アレクに頼るしかない。


「住民がそこまで多くないドリントルなら可能だろうね。最初に説明受けたときは三千人と聞いている。あとはドリントルに行ったあと、調べながらやっていくよ。今日はこれからドリントルに行けるかな」


 アレクの問いにカインは頷く。


「代官邸をそのまま使ってもらって構いません。平日は学園に通うので、終わってから毎日領地に行くようにします」


「うん。それでいいよ。日中は僕のほうでやっておくよ」


 二人の打ち合わせが終わったあと、執事のコランにドリントルに向かう事を話し、そのまま転移した。

 二人の視界が一瞬に変わる。ドリントルの領主邸の執務室に一瞬で着いた。


「本当にあっと言う間に着くのだね。これなら王都とドリントルの行き来でも問題ないか」


「ドリントル領主邸にいる人たちを紹介しますね」


 そう言ったところで、執務室のドアがノックされた。

 部屋に入ってきたのは、ダルメシアだった。


「カイン様、お戻りになられたと感じましたので」


 さすがの魔王軍の元将軍なだけあり、気配察知は優れていた。


「あぁ、ダルメシア。今戻ったとこ。紹介するね、これから代官に就任することになった、アレク兄様だ」


 カインの紹介で、アレクが一歩前に出た。


「カインの兄で、アレク・フォン・シルフォードだ。ダルメシア、よろしく。それにしても随分優秀な執事だね」


「ただの現役を引退した爺でございます。アレク様、この屋敷の執事を任されております、ダルメシアでございます。もうすぐ夕食の支度も整いますので、ご一緒にいかがですかな。レティア様も先ほどギルドからお戻りになられましたし」


「ありがとう、一緒に食べるよ。アレク兄様のことをみんなに紹介したいしね」



「それでは、用意ができましたら、またお呼びいたします」


 ダルメシアは一礼したあとに、部屋を出て行った。


 そして、夕食の用意が整い、ダルメシアが呼びに来たので、アレクと一緒に食卓へ向かった。

 テーブルには、ダッシュ夫妻とエナク、レティアが既に席に座っていた。

 来週まで来る予定ではなかったカインが来たことで、エナクは喜んでいる。


「今回、この街の代官を勤めることになった、アレク兄様だ。これから隣の代官邸に住むことになる」


 まず、皆にアレクの事を紹介した。今後、レティアと共にこの街の監査を行っていく必要があるからだ。


「アレク・フォン・シルフォードだ。この度、この街の代官に就任することになった。以前はグラシア領で内政官をしていたから、ここにいるカイン子爵と共に、この街を良くしていきたいと思っている。皆、よろしく」


 このあと、各自が自己紹介を行い、食事を始めた。


「食事が終わったあとに、今日ギルドの監査をした事を報告させてもらってもいいかしら。まだ一日だけど、色々と出てきたわ」


 レティアは今日から冒険者ギルドのサブギルドマスター兼監察官として、前サブギルドマスターのベティの不正を調べている。


「うん、終わったらアレク兄様を含め、執務室で話をしよう」


 カインとアレクは頷く。

 エナクは良くダルメシアに遊んでもらっているらしく、とても懐いている様子だった。その状況をダッシュ夫妻が笑顔で見つめている。

 食事が終わり、執務室には、カイン、アレク、レティア、ダルメシアの四人が集まる。

 レティアが今日調べたことを報告してきた。


「まずは、この街のギルドは、一応税金を納めていることになっているわ。受領印をもらった資料が保管してあったわよ、エライブのサイン付きで。ただ、不明な依頼が代官から良く出ていたわ。指名依頼として、森の調査なのだけど、かなりの金額がでている。それも今回、捕縛されたAランクの冒険者たちに。報告書については、新人でも出来る森の入口あたりの調査だし、確実に金を裏から回しているようだったわ」


「税金については納めていると。エライブのサインということは、個人的に懐に入れているということだね。僕が来たときには、ギルドは税金を納めていないと言っていた。あと、国からの補助金については、冒険者ギルド、冒険者経由でわからない様にして、また戻していると」


 カインは腕を組んで考える。税金、補助金を考えると相当な金額になっていた。


「お話の途中、申し訳ございません。実は今日、代官邸の掃除をしておりましたら、執務室の横に、たまたま隠し部屋を見つけました。それでこのようなものが……」


 ダルメシアが出してきたのは、帳簿と、白金貨、金貨が入った袋だった。分けられて袋に入っており、数えてみると、相当量の金額になっていた。

 ダルメシアが出してきた帳簿を、アレクが目を通していく。

 読み終わった帳簿をテーブルに置き、アレクはため息を吐く。


「この帳簿に金の流れが書かれていたよ。まだそこまでは細かく見ていないけど。貯め込んだ金は、一部、闇ギルドを雇うために流れていて、それ以外はエライブ、ベティ、スタッグ、リックの四人で分けている。今まで横領した金額は、白金貨で五百枚以上あるね」


 白金貨五百枚とは、日本円にして五十億円にのぼる。国から出る補助金は、年間白金貨二十枚だ。それにギルドから納められた税金が年間白金貨十枚となる。どれだけの金額が横領されていたのがわかる。

 さすがにその金額を聞き、カインとレティアは驚いていた。そしてアレクは話を続ける。


「相当額の金額になっているから、隠蔽するために、領主が赴任してきても闇ギルド、冒険者ギルドで裏から圧力をかけてきていたのだろうね」


 カインがアレクの話に頷く。


「アレク兄様には、明日からこの街の問題点の調査をお願いしたいです。毎日、学園のあと、この街に来ることにしますが、基本的にお任せすることになると思います。街に出るときは、まだ闇ギルドの連中がいると思いますので、護衛をつけてください。レティアさんもギルド内は大丈夫でしょうが、領主邸までの行き来については、十分注意してくださいね」


 カインの意見に二人は頷いた。


「わかったよ、カイン。僕はこのままこの帳簿と街の収支を見比べてみる。週末までには調べておくから、また相談しよう」


「私のほうも、ギルドマスターが今までベティに任せっきりだった資料を調査してみるわ。他にも色々と出てきそうだし」


「恐れながら、カイン様、お二人には私の使い魔を付けるようにいたします。もちろん見えないように待機しておりますので、他の人にはわかりません。何かあれば念話で私に通るようにしてありますので大丈夫かと。実力もそれなりにありますから」


「ありがとう、ダルメシア。そのことは任せたよ。二人はこの街にとって重要だからね」


 カインの言葉に、ダルメシアは姿勢を正し一礼する。


「まずは、明日、詰所で四人を王都に移送する準備をする。主犯以外については、犯罪奴隷となると思う。カインは王都で奴隷商に話をしてきてくれるかい? 五十人位いるなら、それなりに準備をしてもらわないと困るからね」


「わかりました、アレク兄様。明日、学園帰りに寄ってみます。そろそろ僕は王都に戻りますね」


「アレク様は、すでに代官邸のほうでお泊りになれるように準備を済ませてあります」


 優秀な執事の案内で各自部屋に戻っていった。


「それにしても、アレク兄様もレティアさんも優秀だな。これでこの街を良くすることができそうだ」


 カインは一言呟き、王都の自分の屋敷に転移した。


いつもお読みいただきありがとうございます。

ついにストックが切れたこともあり、次話からアルファポリス様と同時投稿になります。

本業の都合上、毎日の投稿が難しくなり週に三本程度の投稿になると思います。

今後もよろしくお願いいたします。

  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。