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転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第二章 少年期編

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第三十八話 襲撃事件その後4

 朝を迎え、食卓のテーブルを皆で囲む。

 エディンさん、レティアさんはもちろん、ダッシュさん、ヒミカさん、エナクもいる。


「今日から、学校が始まるから、また週末にこちらに来る予定になります。宿の修繕は依頼してあるので、出来上がったらこの屋敷に連絡がくると思います。来週まではゆっくりしていてください。何かあれば、執事のダルメシアに聞いてください」


 ダルメシアはカインの後ろに立ち一礼をする。

 皆は頷くが、相変わらずエナクは、カインがいなくなることが寂しいらしい。だが、カインは学生なので仕方ないことだった。

 食事を終え、挨拶をしたあと、エディンさんとギルドの執務室に直接転移することにした。ここなら直接でも問題ないと、エディンさんから言われたからである。


「カインくん、また近いうちにドリントルに行くことになると思う。その時はよろしくね」


 転移魔法で一瞬にして行けるということもあり、馬車に二日間も揺られて行くという苦行は、もう耐えられないようだった。


「そんなに多用していると、他のところに行けなくなりますよ」


 二人は笑いあったあと、カインはギルドから屋敷に転移した。

 一度、屋敷に戻り、制服に着替えた後、学園に向かう。

 休日はゆっくりと休むものだが、領地で色々とありすぎて、カインにとっては学園が一番の休息場所になっていた。

 まだ朝なのに机に伏せ手を前に伸ばし、疲れ果てた状態だった。


「週末に色々ありすぎた……。もう疲れた」

「もうカイン様ったら、そんなに疲れ果てた顔をして……」

「カインくん、まだ十歳とは思えないよ」


 心配そうに覗き込んでくるテレスとシルクがいたが、元気よく返事を返す余力は、あまり残っていなかった。手を上げて返答をしてからまた机に伏した。

 授業を受けていたが、カインはほぼ夢の世界へ旅立っていた。授業で行っていたことは、すでに理解している事であり特に問題はない。

 授業を行っている教師も、エリック公爵から学園長へ連絡がいったこともあり、特に気にしている様子もない。

 そして一日の授業が全て終わる。

 これから陛下と打ち合わせが入っている。


「テレス、今日は陛下とこれから打ち合わせなんだ、また乗せていってもらえないかな?」

「もちろんいいですわ! 私もカイン様と一緒にいれるのでうれしいです」

「テレスいいなぁ。私もたまにはカインくんと一緒の馬車で帰りたい」

「少し落ち着いたら、今度街に買い物に行こうよ!」


 シルクの少し寂しげな顔が気になったので、カインは二人に提案をした。

 その瞬間、二人の顔はパーっと花が咲いたように笑顔になった。


「絶対行きましょう! 楽しみにしていますね」

「それならいいかなぁ、約束だよ」


 笑顔のシルクに別れを告げ、テレスの馬車に乗って王城へ向かった。

 王城につくと、いつもの応接室に案内され、メイドから出された紅茶を楽しんでいた。


「待たせて済まんな」


 マグナ宰相と父のガルムが入ってきた。そして少し遅れて陛下が部屋に入る。


「ガルムから内政官については聞いた。人格的にも問題ないから、そのまま代官として就任させるように決めたぞ」

「もう王都に着いているので、もうすぐ来るはずだ。アレなら問題ないはずだ」


 まだ会ったことのない、代官となる人を想像しながら、四人で今後の対応について話し合った。

 扉がノックされ、メイドが新しい代官を連れてきた。

 部屋を通されてきたのは、青い髪をした、まだ二十歳前の青年である。

 そして、カインは目を見開き驚いた。



 入ってきたのは、ガルムの次男でもあるアレク・フォン・シルフォードだった。カインより八歳年上で十八歳になる。父親のガルムと同じ青い髪で、少しほっそりとした美男子である。元々、ジンの手伝いをするために、学園に通っていた時も、内政科を選択し街づくりや運営を学んでいた。

 アレクは入室し、まずは陛下や宰相に対し、姿勢を正したあとに頭を下げて挨拶をした。


「アレク・フォン・シルフォードでございます。ガルムの次男になります。この度は代官の打診をいただき、ありがとうございます」

「うむ。そちなら問題はなかろう。カインの非常識のストッパーになってもらえればと思う」


 陛下が、余計なことを言いながら、アレクに座るように促す。


「アレク兄様じゃないですか! グラシア領でジン兄様の手伝いをするって言ってましたよね」

「いやぁ、グラシア領は落ち着いていて、やることがあまりないんだよね。父上から話が来たときに、色々と仕事が出来そうな気がして、すぐにOKを出したよ」



 アレクはカインの隣に座って、協議がまた再開した。


「教会については、司教から新しく司祭が派遣されることになると思う。その時に教会の監査官も同行し、今までの帳簿関係を調べるそうだ」


 マグナ宰相から教会についての説明を受ける。


「冒険者ギルドについては、昨日ギルドマスターのエディンさんと一緒に、ドリントルに行きました。王都ギルドから一人派遣されてサブギルドマスターと監査官を受け持つそうです。ドリントルのギルドマスターについては、今回の件については何もしらなかったとのことですが、責任者として処分を受ける必要があると聞いています。ただし、現状は処分保留とし、今後の働きをもって処分内容を決めるとのことでした」


 カインは陛下たちに向かって、昨日の出来事を説明した。

 カインの説明で皆が頷く。


「すいません。少しいいですか」


 口を挟んできたのはアレクだった。


「昨日今日の話をしているのですが、ドリントルは王都から馬車で二日の距離にありますよね。距離が離れているのに、とてもタイムリーな話に聞こえるのですが……。しかも、今回、内政官から代官にという話は受けましたが、詳細は聞いておりません。街で何かあったのですか……」


 アレクの言葉に、皆がため息をつく。


「アレク、カインはな、かなりの規格外だ。今はなき伝説の魔法とされている転移魔法を取得し、一瞬にして王都とドリントルを行き来しておる。それにな、ドリントルの領主になった途端、ギルドの訓練場を破壊し、教会にケンカを売り、裏で糸をひいてた、前の代官と闇ギルドをまとめて倒してしもうた。今衛兵の詰所には、五十人以上が捕らえられている状態だ」


 ガルムは呆れながら、アレクに今まであったことを説明した。

 アレクは聞いている途中から、信じられないような顔をし、ガルムとカインの顔を見比べる。

 陛下含め、宰相もガルムの説明に同意し頷く。


「そんな……。可愛い弟だと思っていたら、そこまでやっていたとは……」


 さすがにアレクもカインの非常識さに驚いた。


「だから、ワシがさっき言っただろう。カインの非常識さのストッパーになって欲しいと」

「そういうことだったのですね……」


 陛下の言葉に、アレクは頷いた。カインとしては何が非常識なのか意味わからなかった。ただ、正しいことをしただけと思っている。領主としてドリントルの街を良くしていこうとした結果なだけだ。


「そんな、人を非常識の塊みたいな言い方をしないでください! ただ、悪い奴らを退治しただけですから」


「「「それはない!!」」」


 陛下、マグナ宰相、ガルムの声が重なった。

 自覚はないのに、非常識だと言われ、カインはガックリと肩を落とす。


「そういえば、カインよ。お前が王都にいる間、街は平気なのか? 闇ギルドの残党どもが領主邸を襲うかもしれんじゃろ」


 陛下からの質問に対し、カインは気にした様子もなかった。


「その件については、大丈夫です。強力な執事を雇いましたから。百人の襲撃があっても平気だと思います」


 淡々と答えたカインに、一同は冷や汗をかく。絶対にこいつは何かをやっていると確信を持つ。

 実際にカインは前回、召喚魔法で魔王を呼び出し、契約した前科があったからだ。


「――お主、また何か呼び出したのか……」


 陛下の冷たい声がカインに突き刺さる。

 その瞬間、カインは目を泳がせた。腹黒貴族と長年やりあっていた陛下や宰相は、その表情に気づかないはずがなかった。


「カイン! お前、絶対になにかやっただろ! 正直に言ってみろ!!」


 陛下は机を両手で叩いて、カインに詰め寄る。

 カインは皆からの冷たい視線を感じて、肩を落とし観念した。


「執事は僕が呼び出したわけではありません。最初、契約しているセトを領主邸のボディーガードに使おうと思ったのですが、忙しいらしく、代わりにセトの紹介で、将軍を引退した人に執事をしてもらうことになったのです」


「お主、セトと言ったな……。セトとは……前に契約した魔王じゃろ!! その部下の元将軍を執事として使ってるのか!!」


 カインの言葉に、陛下は魔王の部下を執事にしていると聞いて、さらに詰め寄る。

 宰相と父のガルムはすでに諦めた顔だ。


「あれだけ……、あれだけ非常識なことをするなと、何度言ったらわかるんだ!!」


 陛下は顔を真っ赤にし、最後は疲れ果てたように、席に力なく座った。


「――もう良い。ドリントルはお主の好きにしていいぞ。お主に真面目に話すのは疲れたわい。ワシは少し寝室に戻って寝る……」


 肩を落とした陛下は、無言のまま部屋を出て行ってしまった。

 ガルムと宰相は頭を抱えている。



「カイン、君がどんだけ非常識なのか、今日一日で良くわかったよ」


 爽やかな笑顔を向けてきたのは、アレクだけだった。


いつもお読みいただきありがとうございます。

平日の忘年会もあと数回こなせば落ち着くと思います。

執筆している時間があまりなく、毎日の更新は難しいかもしれませんが、週に3本は投稿していきたいと思っております。

これからもよろしくお願いいたします。

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