挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第二章 少年期編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
71/225

第三十六話 襲撃事件その後2(12/9修正)

 変更事項

 長距離瞬間移動(ロングワープ)

 短距離瞬間移動(ショートワープ)

 上記2点を『転移』に統一いたします。

 前話までの修正は、今後、行っていきますので、ご理解お願いいたします。


 カインは街中を通り抜け、冒険者ギルドに向かった。

 冒険者ギルドは、昼時ということもあり、閑散としている。

 冒険者たちは日中、依頼に出ているので、混む時間は朝と夕方だ。

 カインは、レティアさんを見つけて、カウンター越しに声をかけた。


「レティアさん、こんにちは。これからエディンさんと会えないかな?」


 レティアは、カインに気づき微笑み返す。


「カイン様、こんにちは。今日は、ギルドマスターは執務室におりますので、確認してきますね」


 レティアは、隣に座っている受付嬢に一言伝言し、奥へと消えていった。

 待っている間、カインは依頼の掲示板を眺める。王都ということもあり、討伐よりも護衛の依頼が主となっていた。

 討伐の依頼を探していると、レティアが迎えに来た。


「カイン様、ギルドマスターがお会いになるそうです。ご案内いたします」


 レティアに案内され、エディンの執務室に向かう。

 ノックをし、扉越しから許可の声が聞こえると、扉を開けて中に入っていった。


「カインくん、今日はどうしたのかな」


 カインは勧められたソファーに腰掛けて、前日までの出来事を説明した。

 話が進むにつれ、エディンの額にはシワが寄っていく。手は怒りによって強く握られている。


「カインくん、申し訳ない。そこまでひどい状態だとは思わなかった。リキセツは脳筋だがまっすぐな性格なのは知っている。だから、優秀なサブギルドマスターをつけていれば平気だと思っていたのだが、まさかそのサブギルドマスターが不正をしていたとは……」

「それで、ギルドの立て直しで、誰か優秀な人をつけていただけないかと、相談にきました」


 カインは、リキセツのことは嫌いではない。まっすぐな性格なだけで、優秀な助手がつけば、問題ないと思っていた。


「わかった。すぐに王都のギルドから手配しよう。わたしも一緒に同行する。これに関しては、王都本部のギルドマスターとしても容認できることではない。用意出来次第、今日にでも向かうことにする」

 エディンさんの顔は真剣だった。それほどまでに怒っているのだろう。


「エディンさんは王都から離れても大丈夫なのですか」


 王都本部のギルドマスターとは、その国で展開されている冒険者ギルドの総括でもある。そんな人がドリントルの街へ向かうにあたり、数日、王都を空けることになってしまう。

 カインは秘密の話を打ち明けることにした。将来の義理の兄ということもあり、信頼をしているからだ。


「エディンさん、実は提案があります。ただし、これに関しては内密でお願いします」

義弟(カイン)くんのことだからね、それに関しては約束するよ」


 エディンが納得してくれたこともあり、カインは頷いた。


「実は――」


 カインは転移魔法により、一瞬でドリントルに行けることを説明した。


「それはありがたい! それにしても、伝説と言われている、転移魔法まで使えたとはね。それなら、今日中にドリントルに行ける。出来れば、新しいサブギルドマスターも連れて行ってもらえないかな? 口外禁止については徹底させる」

「わかりました。では、人選が終わったらすぐにでも」

「二時間後に、また迎えに来てくれるかな。それまでに用意しておこう」


 カインは最後にエディンと握手をし、執務室を退出した。

 他に用事もなかったので、一度、屋敷に戻ることにした。

 扉を開けて中に入ると、コランとシルビアが恐縮した表情で立っていた。


「カイン様、さ、先ほどはすいませんでした。まさか聞かれていたとは」

「カイン様、申し訳ございません」


 二人して、頭を深々と下げて謝ってくる。


「うん? 別に構わないよ。年頃だし、二人だったら問題はないよ。ただ、今は領主として大事な時なんだ。だから少し待っててね」


 カインが怒っていなかったことに、二人は胸を撫で下ろす。

 シルビアは、カインが産まれてまもなくしてからカインの世話をしている、カインにとって特別なメイドだ。

 だからこそ、気持ちを打ち明けたことで、解雇をされるかもしれないと思っていたコランは、安心した。


「結婚していい時になったら、僕から言うよ。僕もお祝いだすから」


 カインは、二人に伝えると、二人共、顔が真っ赤になっていた。


 カインは執務室の机に座り、決済が必要な書類に目を通していく。

 さすがにコランは優秀なので、書類が良くまとまっており、問題なく次々に印を押していった。

 全ての書類に印を押し、椅子に寄りかかり、腕を上げて身体を伸ばす。


「やっと終わったぁ。そろそろギルドに行く時間かな」


 決済を済ませた書類をまとめ、完了の箱に入れていく。

 カインは立ち上がり、再度身体を伸ばすと、執務室を出た。

 コランとシルビアには、ギルドに向かった後、今日はドリントルに泊まることを告げた。

 屋敷を出て、貴族街を抜けていく。冒険者ギルドについた時には夕暮れ時となっていた。

 ギルドに入ると、なぜかレティアさんが、不機嫌そうにホールで待っていた。


「カイン様、お待ちしておりました。ギルドマスターがお待ちです」


 レティアの案内で、エディンの執務室に向かう。レティアはいつもと違い、無言のままだ。

 ノックをし、確認したあとに扉を開けた。

 カインはエディンの対面のソファーに座る。そして、なぜかレティアがエディンの横に座った。

 すでに、ソファーの横には、大きな荷物が置いてあった。 


「レティアにドリントルに行ってもらおうと思ってな。冒険者ギルドでもサブギルドマスターになるためには、それなりの経験が必要となる。レティアはこの王都ギルド本部のチーフも務めているくらいだから、問題はないと思ってね」

「改めて、レティアです。この度王都ギルド本部から、ドリントルのサブギルドマスターになることになりました。えぇ、わたしは独身ですし、寮住まいですからね。どこに行くのもすぐですよ」


 レティアはカインに自嘲気味の挨拶したあとに、横を向き、エディンを棘のある視線で見ている。

 エディンは、異動させても問題ない人を選んだみたいだな。それにしてもレティアさんがチーフだと知り、カインは驚いた。


「僕もレティアさんが、ドリントルのサブギルドマスターになってくれるなら、心強いです。知っているので話しやすいですし。レティアさんよろしくお願いしますね」

「カイン様、こちらこそよろしくお願いいたします。精一杯頑張ります」


 やっと先ほどより表情が和らいできた。


「カインくん、こちらは用意できている。出来れば早く行きたいんだが」

「では、行きましょうか。レティアさんの荷物は、僕が預かりますね」


 カインはアイテムボックスの中にレティアの荷物を入れる。


「カイン様はアイテムボックスまでお持ちなのですね……」


 レティアの呟きを流しながら、二人に近づくように伝える。

 二人の肩に手を置き、魔法を唱える。


「では、行きますね。『転移』」


 一瞬で視界が変わり、気づいた時にはドリントルの門の近くだった。

 二人とも初めての転移に、驚きを隠せない。


「これが伝説の転移魔法か……」

「本当に一瞬ですね。今まで馬車で移動していた時間は、なんだったんでしょうか」

「ほら、皆さん行きますよ」


 カインを先頭に門に向かっていく。

 門の衛兵にカインは声を掛けた。


「お疲れ様、通っていいかな」


 カインを領主だと知っている衛兵は、緊張気味に答える。


「これは、領主様、後ろのお二人は……」

「後ろの二人は、王都のギルドマスターのエディン殿と、ギルド職員のレティアさんだ」


 二人が身分証明書を提示する。もちろんギルドカードだ。職員用のギルドカードは、魔力を流すと名前などの他に、ギルド職員という表示が出てくる。


「確認させていただきました。ドリントルへ、ようこそ」


 身分証を確認した衛兵は、礼儀正しく頭を下げる。

 その横を三人が通り過ぎ、街へ入っていく。

 街並みを見た二人は、思ったよりも賑やかになっていることに感心をしていた。


「やはり、冒険者の街ということもあり、賑やかだね」

「わたしも、もっと酷いのかと思っていました」


 二人に街を案内しながら、冒険者ギルドまでついた。


「この街の冒険者ギルド会館は立派だね。さすが登録人数が多いだけあるな」


 エディンは建物の外観を眺めながら、そう呟いた。

 中に入ると、夕方ということもあり、冒険者たちで溢れていた。奥の酒場についても混んでいることが良くわかった。

 扉が開いたことで、冒険者たちの視線がカインに集まる。

 その中には、先日の訓練場での出来事を、観覧席で飲みながら観戦していた冒険者たちも多数いたらしく、カインの顔を見るなり腰を抜かして後ずさる。

 知らない冒険者たちは、逆にその姿を見ながら、指をさして笑っている。

 そして、三人を品定めする冒険者たちもいた。知らない人からすれば、子供とエルフと綺麗な女性のパーティに見えなくもない。

 カインを含め、三人はそのまま中に入っていき、カウンター越しに声をかける。

 対応したのは、以前にも声を掛けたことがあるオーラだ。


「すいません。ギルドマスターと面会したいのですが」

「はい。カイン様ですね、ギルドマスターにすぐに聞いてきます」


 名前を名乗る前に返された言葉に、カインは驚いた。

 声を掛けられたオーラは、笑顔で奥に消えていった。その姿を、他の受付嬢が悔しそうな顔をしながら見ていた。

 少し待っていると、奥からすごい勢いで、ギルドマスターであるリキセツが出てきた。


「これはカイン様! お待たせいたしまし――」


 カインの横には、もちろんエディンがいる。リキセツはエディンの顔を見て、一瞬にして固まった。


「と、と、統括!?」

「やぁリキセツ殿、久しぶりだね。色々と話をしにきたよ」


 エディンが来たことによって、リキセツは直立不動でピクリとも動かない。

 元Sランク冒険者のリキセツでさえ、エディンには頭が上がらない。

 周りの冒険者や受付嬢たちも、リキセツの動揺ぶりに驚き、視線が一箇所に集まる。


「王都のギルド統括であるエディン様が、なぜドリントルまで!?」

「それはもちろん、義弟(カイン)くんに聞いたからだよ」

「応接室にご案内いたします。こちらへどうぞ」


 にっこりと笑うエディンに、リキセツは冷や汗をかきながら、カイン以上にエディンに対応していた。

 リキセツを含めた四人が、奥へ消えていったことで、周りにいた人たちが、一斉に騒ぎ出す。


「なんだ、あいつらは!? あの、鬼のリキセツがあそこまでヘコヘコするなんて」

「あのガキ、何者なんだっ!?」

「あいつは悪魔だよ。あのガキが訓練場を、あそこまで破壊したんだぞ。まさに『銀髪の悪魔(シルバーデビル)』だよ」


「「「「マジかっ!?」」」」



 受付嬢たちは、リキセツではなく、エディンとカインの話になった。


「あ、あれって……。王都のギルド統括マスターのエディン様よね、王都で一度だけ見たことあるわ。それに後ろにいたのは、王都ギルドでチーフのレティアさんだったよね。そんな人と一緒にいるなんて……」


「「「「カイン様って、いったい何者!?」」」」


 カインたちがいないところで、ギルド内の話は、盛り上がっていくのだった。

 そしてカインの知らない間に二つ名がついた瞬間だった。


いつもお読みいただきありがとうございます。

12月10日より1日1話更新となります。その後、重複投稿しております、アルファポリス様と同時間投稿になります。よろしくお願いいたします。


三十五話のコランとシルビアの会話を修正した関係でこちらも直しております。

  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。