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転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第二章 少年期編

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第二十八話 ドリントルの暴れん坊領主1

 ガルムの馬車で家まで送られてきたことにより、カイン邸の門番は驚いていた。


「おかえりなさいませ、カイン子爵様」

「ただいま」


 門番の二人に手を振りながら中に入っていく。

 扉を開け、中に入るとシルビアが待っていた。


「お帰りなさいませ、カイン様、今日帰ってくるのか心配でしたよ」

「学園行かないと、テレスとシルクから文句を言われるからね」

「たしかに心配されて、毎日こられますからね」


 シルビアの答えに無言でカインは頷いた。

 部屋に入り、革鎧を脱ぎ平服に着替える。

 その日は屋敷で食事を済ませゆっくりと休んだ。



 部屋に差し込む日の光を浴びて目が覚める。


「今日からまた学園か、頑張らないとな」


 食事を食べいつものように学園に登校していく。

 授業を受け、テレスやシルクと話しをしながら日々が過ぎていく。


 そしてまた明日から二日間の休みとなった。学校から帰ってきてすぐに、冒険者の格好に着替え、旅装を整える。


「コラン、シルビア、またドリントルの街に行ってくるので家のことよろしくね」


 カインの言葉にコランとシルビアの二人が頷く。


「いってらっしゃいませ。そのうち私たちもまた連れて行ってくださいね!」

「家のことは、私たちで管理しておりますので安心してください」


 二人に挨拶をして、その場で『転移』を使った。


 二人だけには、転移魔法を使えることを、先週打ち明けたのだ。さすがにいちいち王都の門を出ていたのでは面倒なこともあり、屋敷から直接ドリントルに飛べることを知った二人は驚いていた。

 試しに、二人の肩に手を当てて『転移』を使ったら、問題なく使えたので、一瞬だけドリントルに連れて行ったのだ。一瞬で視界が変わったことに驚き、二日の距離を一瞬で転移したことに、さらに二人は驚いた。シルビアに関しては目を輝かせ、もっと色々なところに連れて行ってほしそうだったが、さすがに多用するのは断った。

 転移魔法に関しては、空間魔法の素養があり、尚且つ、相当な修行が必要とされており、伝説級の魔法となっているため、現在使用できる魔導師は確認できていないとのことだ。


 視界は一瞬で変わり、ドリントルの街の入口近くに転移する。


「一週間ぶりだな。今週も色々と調べないといけないけど、もう夕方近いし明日からだな。夕飯はっと……たまにはエナクの顔でも見に行くか」


 門でギルドカードを提示しそのまま門を潜り、猫の和み亭に向かった。

 宿の扉を中に入っていくと、相変わらずエナクがホールを動き回っていた。


「いらっしゃーあ、あっ! お兄ちゃん! いらっしゃい」


 エナクはカインに気づいて、お客さんにプレートを出したあとにすぐにこっちにきた。


「カインお兄ちゃん久しぶり! 今日は、ごはん? とまり?」


 エナクはおしりの方から出ている尻尾が、ゆっくりと振られている。


「今日は泊まらせてもらうよ。夕飯もお願いね」


「はーい! この前の部屋空いてるからそこに泊まっていいよ。あれからお母さんも元気なんだ! ハイ、301号室の鍵ね。本当は特別室だから銀貨二枚だけど、空いてるからお代は大銅貨六枚でいいよっ」


 カインはその場で大銅貨を払い、鍵を受け取った。


「すぐに夕飯できるから、着替えたら降りてきてね」


 エナクはお代を金庫にしまうと、そのまま手伝いに戻っていった。

 夕暮れときもあり忙しそうにしていたので、カインはそのまま階段を上り、前回泊まった部屋に入った。荷物は全てアイテムボックスに入っているので、着替えただけだ。平服に着替えた後、部屋を出て食堂に向かった。


「あ、カインお兄ちゃん、もう用意できてるよ! お父さん、お母さん、カインお兄ちゃん来たよー?」


 エナクが呼んだこともあり、厨房から二人が出てきた。


「いやー、カイン様また来てくれてありがとうございます。カイン様のおかげでヒミカもこのとおりすっかり良くなりました」

「カイン様、ありがとうございます。あれから具合も完全に良くなったので、こうしてお店をがんばれてます」


 ダッシュとヒミカが厨房から出てお礼を言いに来てくれた。


「ヒミカさんも具合が良くなってよかったですね。そのうち教会も少しよくなるといいんですが……」


 カインはまだ行っていない教会のことを考えながら返事をした。


「そういえば、先週新しい領主様が就任されたと聞きました。今までの領主様では何も変わらなかったのですが、今回、少しは良くなるといいんだけどな……」


 ダッシュの話にカインは苦笑いした。さすがにこの場で「領主です」とは言えなかった。


「そうですね……。きっと変わってくれるといいですね……」


 カインにはそう答えるのが精一杯だった。


「今日は、いいミノタウロスの肉が入ったんですよ。なかなかBランクの魔物の肉は手に入らないので、ステーキを焼きますね。口の中でトロけるほど美味い絶品ですよっ!」


 ダッシュはカインが来たことで喜んで厨房に戻っていった。


「あらあら、あなたったら……。カイン様、もう少しで出来ますから少し待っててくださいね」


 一言だけ言ってヒミカも厨房へ戻っていった。

 カインはカウンターに座り、先に出されたフルーツジュースを飲んでいた。

 エナクは冒険者が数人いることもあり、ホールを一生懸命回って飲み物を出している。

 その姿を遠目で見ながら、時間を過ごしていた。


「カイン様お待たせしました。ミノタウロスのステーキです」


 ダッシュがわざわざ持ってきてくれた。カインの目の前に置かれたステーキは肉厚があり、食欲をそそるソースがかけられていることで、その匂いがカインの鼻をくすぐった。


「ありがとうございます。さっそくいただきますね」


 カインはナイフを一口大の大きさに切り分けて、フォークで刺し肉を口に放り込む。噛めば噛むほど肉汁が湧き出て口の中が旨さでいっぱいになった。


「これは美味いっ!!」


 パンを肉汁のたっぷり入ったソースにつけて食べても格別だった。

 夢中で食べていると、また四人組の少し柄の悪い冒険者らしき客が入ってきた。


「おぅ、邪魔するぜっ」


 ずかずかと店に入っていき、自分の思ったところのテーブルを囲んだ。


「おい、とりあえずエール四つもってこい」


 すでに冒険者たちは少し酔っているようだった。

 エナクは「ハイッ」って返事をし、厨房にオーダーしていた。

 そして両手に一つずつの二つのジョッキを持ってテーブルに運んでいた。

 二往復してやっとジョッキを置くことができたのだが、それでも酔った冒険者たちには遅かったと思われたようだった。


「おせーよ」


 そう言って、酔っ払い冒険者の一人が、エナクの後ろから蹴りをいれた。


「痛っ」


 エナクはまだ小さいこともあり、勢いよく転んだ。


「ぎゃははは、このガキ転んでるぜ」

「足どっかに引っかかっちゃったのかなぁ」

「「ぎゃはははは」」


 大笑いしている冒険者をよそに、カインは立ち上がった。

 冒険者たちの柄が悪いこともあり、エナクに気を向けていたからすぐに気づけた。

 カインはすぐにエナクの元へ向かった。


「エナク、大丈夫だったかい? 『ヒール』」


 カインは倒れているエナクを起こしてあげ回復魔法を唱えた。

 エナクはその瞬間に白い光に包まれた。

 光が収まると、エナクの痛みは消えていた。


「あれ? お兄ちゃん、もう痛くないよ」

「うん、それならよかった。ちょっと用事ができたから待っていてね」


 カインはエナクを立ち上がらせ、蹴り飛ばした冒険者のほうを向いて睨みつけた。


「お、ガキ同士仲良くやってるか! こっち見てないで二人でママゴトでもしてろよ」

「「「ぎゃははははは」」」


 カインの視線に気づいた酔っている冒険者は、カインとエナクの二人の姿を見てさらにからかった。


「おまえ……エナクに向かって蹴りを入れたな……」


 カインは冷たい視線を向けながら話かけた。


「おい、ガキ、俺たちはBランクだ。口の利き方に気を付けろよ? 教育すんぞ」

「「「ぎゃははははは」」」


 蹴りをいれた冒険者の一言で、他の仲間が大笑いしている。

 カインはその四人に向かって、ゆっくり歩いていく。

 それに気づいたエナクが、カインの袖を引っ張り止めようとする。


「カインお兄ちゃんダメだよ。相手はBクラスの冒険者だよ」

「大丈夫だよ。こんな酔っ払いの雑魚冒険者より、僕のほうが強いから平気だよ」


 カインはエナクの方を向き、頭を撫でてあげる。

 しかしその一言で、酔っ払いの冒険者たちが殺気立つ。

 そして四人の冒険者が、ジョッキをテーブルに叩きつけ立ち上がる。


「ガキには教育が必要みたいだな……」


 四人の冒険者の表情は先ほどまでとは、まったく違っていた。

 カインはゆっくりと四人に向かって歩き始める。

 周りで飲んでいる他の客も、その様子に喉を鳴らす。

 そしていきなりカインが消えた。 


「「「「えっ」」」」


 周りの客は、いきなりカインが消えたことに驚いた。

 その瞬間に、四人の冒険者たちは外に投げ出されていた。


「「「「「えぇぇぇぇっ!!!!!」」」」」


 カインは一瞬にして、風魔法を使い、入口の両開きの扉を風圧で開いた。

 そして、一人一人の手首を持ち、外に向かって順番に投げ飛ばしたのだ。

 あまりの速さに誰も目で追うことができず、他の人たちからは一瞬で、冒険者が外に投げ出されたとしか見えなかった。 

 いつの間にか外に投げ出された本人達が、一番驚いていた。




「この店で暴れたら迷惑がかかるでしょう。外に行ってお話しましょうね」


 そしていきなり現れたカインは、外に投げ出した冒険者たちに向かって黒い笑みを浮かべた。


いつもありがとうございます。

第36話までは1日2回 7時、18時に更新予定になります。

よろしくお願いいたします。

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