第十七話:世界最強の暗殺者、レベル5と対峙する【八】
現在、この場を第三者視点から客観的に見れば――七大貴族ノーブルバースの御令嬢が、どこの馬の骨とも知れぬ男子生徒と親しげに食事をとっている。
これが注目を浴びないわけがなかった。
実際ルインの鋭敏な聴覚は、あちこちで繰り広げられる密談を拾っている。
「あのお二人……。もしかして、付き合っているのでしょうか!?」
「先ほど見られた気の置けないやり取り、あれこそまさに揺るぎない信頼の証! これはもう間違いないでしょう!」
「しかし、そうなると彼は、いったいどなたなのでしょう? 七大貴族ノーブルバースと釣り合う家格など、そうあるものではございませんが……」
「私も
女子生徒は興味津々といった様子で耳をそばだて、
「あんの野郎ぉ、俺たちのステラさんに色目を使いやがってぇ……ッ」
「久しぶりに……キレちまったぜ……っ」
「『監視』、『辱めた』、『責任』……!? く、くそったれぇええええ! 二人はいったいどんな関係なんだ!?」
「まだまともに授業すら始まってねぇのに……こんなの、許せねぇよなぁ!?」
男子生徒は嫉妬の炎をメラメラと燃やす。
突然降って湧いた
食堂にいるほぼ全ての生徒は、二人の方へ意識を向けていた。
「わ、私とルインが、か、かか、カップル……っ」
ステラは目をグルグルと回し、顔を真っ赤にしながら、あわあわあわとわかりやすく混乱する。
その一方でルインは、
「……」
特に気にした様子もなく、ただ黙々と箸を進めていた。
「あなたはどうして、そんなに冷静なの!? カップルだなんて噂されて、なんとも思わないわけ!?」
「俺は別に気にしない」
惚れた腫れたの噂話は、所詮一時の水物。
『人の噂も七十五日』、放って置けば勝手に鎮火していくだろう――というのが、本件に対するルインのスタンスだった。
「あなたが気にしなくても、私は気にするの!」
「それなら別の席に移ったらどうだ? そうすれば、変な噂も立たないだろう」
「う、ぐぅ……っ」
ノータイムで剛速球の正論を投げられた彼女は、言葉に詰まり――そのままおずおずと腰を降ろした。
「なんだ、移動しないのか?」
「ここで席を替えたら、なんだかルインに誘導されている気がして嫌なの……」
「そうか、残念だ」
「やっぱり私を追い払おうとしていたのね……っ。残念だけど、その手には乗らないわよ!」
ステラは妙な対抗心を燃やし、不動の構えを見せた。
その後、
「……」
「……」
二人の間に無言の時間が訪れる。
ルインがただ黙々と食事を続ける一方で、ステラはチラチラと彼の様子を窺いながら、なんとなく居づらそうにしていた。
「……ねぇ」
「どうした?」
「ずっと黙ったままだと、なんか気まずいじゃない。……ちょっとは気を利かせて喋りなさいよ」
「ふむ……今日はいい天気だな」
「えぇ、そうね。お日様が気持ちいいわ」
会話のワンラリーを終えたルインは、まるで『役目は果たした』と言わんばかりに黙り込み、残り少なくなった魚の煮つけに箸を伸ばす。
「……」
「……」
訪れるは、再びの沈黙。
「……ねぇちょっと、ここからどうやって話を広げるつもり? もしかしなくてもあなた、私と話を続ける気ないでしょ?」
「バレたか」
「くっ、ムカつく……! あっさり認めるところが、三割増しでムカつくわ!」
「すまないな。正直なところ、あまりこういう『普通の会話』は得意じゃないんだ。よかったらお手本を見せてくれないか?」
これはルインの嘘偽らざる本心であった。
暗殺者にとって、コミュニケーション能力は必須と言っても過言ではない。
違和感なく潜伏先に溶け込むため、ターゲットと友好関係を築くため、上官と信頼関係を築くため、会話スキルは様々な場面で重宝される。
そして当然ながら、世界最高の教育を受けた彼のコミュニケーション能力は非常に高い。
ただしそれは、先にも挙げた業務上の会話――『目的のある会話』にのみ発揮されるものだ。
今のような完全にプライベートの雑談――『なんの目的もない雑談』は、少し不得手とするところだった。
「まったく、仕方がないわね。それじゃ……好きな食べ物は何かしら?」
「ふむ、まるでお見合いのようだな。俺の言えた義理ではないが、話題としては『天気』並のチョイスだと思うぞ?」
「う、うるさいうるさい! 私はこれまで女子校通いだったから、あまり男の人と話したことがないの! だから、その……好きな食べ物は!?」
「その話題は続けるのか……」
そうして二人は散発的に会話を交わしながら、なんともぎこちない昼食をとったのだった。
「――なぁ、ステラ」
「ん、なに?」
「さっきから気になっていたんだが……。口の端に芋がついているぞ」
「~~ッ!? そ、そういうことは、もっと早く教えてちょうだい!」
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