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転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~ 作者:夜州

第一章 幼少期編

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第三話 勉強

シルビアはカイン付のメイド兼教育係となっており、文字も読めるということでいろいろと教えてもらった。


「カイン様、絵本をお読みいたしますね」


 精神的には高校生だが、文字がわからないので仕方なかった。

 前世の高校生だった頃の記憶を持ちながら、少女から絵本を読んでもらうという屈辱を味わいながらも、真剣に文字を覚えていった。

 文字を指差しながら読み方を聞いて、書き方を教わりながら、自分でも練習をしていた。

 この世界には、まだ綺麗な紙というものはなく、羊皮紙や布地、木板に書き込むのが主流になっている。その中でこの絵本は紙に書かれていることもあり、高級品だということが伺える。

 やはり精神と知識は高校生。しかも脳は三歳児ということもあり、勉強すればどんどんと頭に入っていく。一ヶ月を経過した頃には、文字については問題なくなっていた。


「カイン様。もう文字の読み書きは大丈夫ですね。三歳で完璧に覚えるなんて天才です! まだレイネ様もここまでは出来ておりませんよ」


「シルビアのお陰だよ。上手に教えてくれたから、すぐにわかったし」


 本命の本を探してもらうのに、カインはシルビアをまずはおだてた。

 シルビアはカインにおだてられて、頬に両手を当て照れていた。

 そしてここからが本番だ。


「そういえばシルビア。この国の歴史とか、魔法の本ってこの家にあるのかな?」


「この屋敷の書庫に、両方ともございますよ」


「両方ともあるの? それ、読ませてほしい。何冊か持ってきてくれないかな?」


「わかりました。昼食後にお持ちいたしますね、そんなに難しい本を読んでもわかりませんよ?」


 一般的に、魔法と歴史を読みたがる三歳時がいるわけがない。シルビアは疑問に思いながらも頷いた。

 この世界に転生して、一ヵ月。やっと魔法の本が読める。気持ちが高ぶってきた。

 あれから体調も万全で特に問題もなく、母親でもあるサラからも屋敷の庭内だけという条件で自由行動の許可をもらっている。


「魔法を早く使いたい。その前に、俺に魔法が使えるのかが心配だけどな……」


 昼食後、部屋に置いてある絵本を読んでいると、シルビアが魔法と歴史の本を持ってきてくれた。


「カイン様、この国の歴史と、簡単な魔法の本をお持ちいたしました」


「ありがとう。シルビア」


「歴史も魔法も難しいですよ。ステータス魔法はまだ使えませんし」


「いいんだ、シルビア。そのうち使えるようになった時のための知識だからね」


 シルビアから本を受け取り、さっそく題名を見てみる。


『エスフォート王国の歴史』

『魔法の手ほどき初級編』


 エスフォート王国とは、今、俺が住んでいる国の名前だ。

 王国が出来て約三百年、今の国王は十五代目になるらしい。

 初代国王は、冒険者から勇者となり、名をはせ村を起こし、そこから街、国へと一代で築いたらしい。ただ、どこの出身かは不明だそうだ。

 初代国王の名前が、ユウヤ・テラ・ヒラサワ・エスフォート。

 名前を読んで、思わず吹いた。


「これって、確実に日本人だよな」


 現在の国王はレックス・テラ・エスフォート。

 何代か前にヒラサワは抜いたそうだ。

 この国は貴族制をとっており、王族、大公、公爵、侯爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵、騎士爵に分類されている。大公は国王の兄弟のみとなっており、公爵から伯爵までが上級貴族、子爵から騎士爵までが下級貴族と大まかに分かれている。

 基本的に貴族は世襲制だ。但し、当主の家族は準爵という扱いになり、準爵の家族は平民となる。

 また、名誉貴族職と騎士爵は当代限りとなっており、家族は平民の扱いになる。これは貴族の家が増え過ぎるのを抑制するための政策となっている。貴族当主には国から給金が支給されることになっており、当主が増え過ぎたら国は破綻してしまうので仕方ないことだ。

 シルフォード家は辺境伯家となっており、上級貴族に分類されている。

 住んでいる屋敷が小さな城と言える程大きいこともあり、なんとなくカインも自覚していた。

 そしていよいよ魔法の本に手をかけた。


「やっぱり魔法はファンタジーだよな」


 本をめくり最初に書いてあるのは、一文だけだった。


『五歳の洗礼を受けて、ステータスに素養があれば読むべし』


 それまで魔法の使用が出来ないのかと思いつつページをめくる。


『体内の魔力を感じること』


 この世界の人間にある魔力袋は、へその近くにある丹田あたりにあるみたいだ。

 生き物の種類によって異なるそうだが。

 目を閉じて瞑想してみる。

 体の中を感じながら探っていくと、丹田あたりが熱くなってくる。


「これかな」


 魔力の流れを意識してみると、ゆっくりだが、体内のあちこちを巡っているのがわかる。


「なんか血管みたいな感じだよな」


 そういいながら意識していると、自分の意思で動くことがわかった。

 体の中をぐるぐると動かしながら、さらにページをめくっていく。


『指先に魔力を集めて、詠唱せよ』


「うーん。こんな感じかな」


 指先に魔力を集めるように集中し、ロウソクみたいなイメージで『火よ』と唱えた。

 五センチくらいのイメージのつもりだったが、指先から五十センチくらいの火柱があがった。


「うおっ! びっくりしたぁ」


 指先から出ている魔力を、拡散させ火を消した。


「魔法は使えることはわかったけど、部屋の中で火の練習は危ないな。今日のとこは、魔法の本を読むだけにしておこう」


 本を読みながらわかったことは、魔法属性の基本として火水風土の四元素があり、他にも無闇光空などがある。イメージに魔力をのせて発現するので、基本属性から応用したオリジナル魔法などがあるらしい。


「日本のラノベ知識のある、俺としてはたまらんな」


 先程使った魔法で、魔力減少の怠さを感じながら、また魔法の本に目を向ける。


「魔力操作と魔力量増加を伸ばすのは、どこかに載っているのかな」


 ページをめくりながら探していく。


『体内魔力循環を日々使うことによって魔力操作が上達する』

『体内魔力を使い切り、休息することが、魔力量の上限が増える。但し、上限は人により異なる』


「まずはこの二つがメインだな。まだ三歳だし伸び代は結構あるだろ。これからは魔力量を増やすこと、あと実験だな」


 ニヤニヤしながら目的のものを見つけられ満足する。


「カイン様、そろそろ夕食のお時間です」


 シルビアの声だ。窓を見ると夕焼けの光が差し込んでおり、いつのまにか夕暮れになっていた。

 魔法の本に集中しすぎたらしい。


「今いくよ」


 机に魔法の本をしまい、部屋をでる。

 ダイニングに向かうと、既にサラとレイネが待っていた。

 席につき待っていると、最後に父のガルムが入ってきて席に座る。


「それではマリンフォード七神に感謝をしていただこう」


 ガルムが最初にスープに口をつけたあとに、みなも食事を始める。


「カイン。最近は本ばかり読んでいるとシルビアから聞いているぞ。本は楽しいか」

「はい。父上。まだ外出できる年ではありませんので、外の知識を今から勉強するのも楽しいです」

「カインったらまだ三歳なのに、もう文字の読み書きを完璧にこなせるのよ」


 サラは笑顔で答えている。やはり自分の子供の頭がいいと思っているからだろう。

 そりゃいくら文字が違ったとしても、実際高校生の集中力はあるから頭には結構入ってくるよね。


「早く洗礼を受けて、魔法を使ってみたいです」


 実際はさっき使えたけれど。


「そうか。将来宮廷魔術師かな。カインは」


 父のガルムもワインを飲みながら喜んでいる。


「私だって、ものすごい宮廷魔術師になるわよ。カインの先輩になって待っているわね!」


 姉のレイネは魔法の素質があったようで、早く学園に入学して勉強したいみたいだ。

 この世界では十歳から十五歳の間を学園で過ごす。各領都に学園は設けられているが、一番レベルが高い学園は、王都にあるエスフォート王立学園だそうだ。そこを卒業すると、領都に戻って仕事を探しても、大歓迎されるということだ。



 そして二年が経ち、五歳の洗礼の時期を迎えた。


 魔法を知ってからの二年間、勉強に鍛錬、魔法の訓練をひたすら行った。

 散歩と言いながら、隠れて魔法の実験も行っていた。

 さすがに環境破壊のような魔法を使うと、バレてしまうので自重していたが、空に向かって風属性の魔法を放っていた。

 自己訓練については、自重という言葉を忘れていた。


「うん。俺は魔法使いになれる」


 そう思いつつカインは日々過ごしていった。



 そして洗礼を受ける日を迎えた。


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