コロナと保健所 分担と連携で強化せよ
2020年7月22日 07時07分
新型コロナウイルス感染症対策の最前線に立つ保健所の体制強化が課題となっている。再流行に備えて、今ある医療資源をどう活用し、足りない機能を補うのか。役割分担と連携の強化が急務だ。
コロナ対策では保健所に業務が集中し、職員らを疲弊させた。背景にあるのは保健所の統廃合だ。
一九九四年の地域保健法制定により母子保健など住民に身近なサービスが市区町村に移され、保健所は専門的な業務を担う組織に変わり、削減も進んだ。設置数は二〇二〇年度で四百六十九カ所と約四割減。感染症への対応力は維持できていたのだろうか。
保健所の体制をどう強化しておくかは中長期の課題でもある。〇九年の新型インフルエンザの流行時には保健所の体制強化の必要性が指摘された。その教訓が今回、生かされているとは言い難いが、できる対策は考えておきたい。
保健所業務は市民からの相談、検査用の検体運搬、入院先の医療機関の手配、感染が疑われる人への健康観察など多岐にわたる。
保健所は、クラスター対策も最前線で担った。日本の対策には海外にない特徴があるという。
海外では、感染者を見つけるとこれから感染を広げかねない周囲の接触者を見つける疫学調査が対策の主流のようだ。
日本ではこれに加え、感染源を見つけるため、感染者がどこで感染したかの経路をたどる「さかのぼり調査」を同時に行う。長年の結核対策で培った手法だという。
ただ、新型コロナの感染者が増加した地域の保健所では限られた人員での対応を強いられた。感染源をたどる独自の対策が現場の努力で支えられてきた面は大きい。
今後は再流行に備えて「分担」と「連携」に知恵を絞りたい。
専門職員が疫学調査に専念できるよう、事務業務などを他の職員が分担してはどうか。自治体の他部署からの応援に加え、退職した人材の活用や、余力のある他の自治体からの応援も検討すべきだ。
保健所と外部機関との連携も重要だ。検査は医師会もすでに取り組んでいるが、感染者や検体の搬送などは消防機関、民間との協力も進める必要がある。
政府と自治体、医療機関などと各保健所との間での感染状況の情報共有も課題だ。感染を早期に把握し、対策を協議する仕組みも要る。その中心となるべき自治体の責任は大きい。保健所の体制強化のためには、政府も財政支援を惜しむべきではない。
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