香港立法会選挙 中国は出馬干渉するな
2020年7月22日 07時07分
九月の香港立法会(議会、定数七〇)選挙の立候補者受け付けが始まった。民主化運動を主導した対中強硬派も出馬する。中国は香港国家安全維持法(国安法)をたてに出馬干渉すべきではない。
立法会選は地区別の直接選挙枠と業界別の職能代表枠で、各三十五議席を争う。民主派の目標は計七十議席の過半数獲得である。
二〇一六年の前回選では、民主派は民意を反映しやすい直接枠で十九議席を獲得。一方、業界団体代表ら一部住民しか投票できない職能枠は親中派に有利で、民主派の獲得議席は十一議席だった。
民主派は過半数獲得のため、直接枠での躍進を目指し独自の予備選を実施した。金融界などの有力者が香港締め付けを強める中国政府に一層なびく現状に対し、「国安法反対」の訴えを届けやすい直接枠で民主派候補の共倒れを防ごうという戦略であった。
予備選では、雨傘運動などを率いた民主活動家の黄之鋒氏らが立法会選への出馬資格を得た。
だが、気がかりなのは、中国当局が民主派有力候補の立候補資格の取り消しや、当選後の議員資格剥奪などの暴挙に出る可能性が少なくないことである。
実際に、前回選から香港政府への忠誠誓約が出馬届け出の条件とされた。就任時の宣誓内容が規定に反するとして、当選後に資格を剥奪された民主派議員もいる。今回は国安法に忠誠誓約が明文化され出馬基準がより厳格にされた。
国安法は、国家分裂や政権転覆を狙う行為などを犯罪とする。最高終身刑の過酷な法であるのに、施行直後には「香港独立」と書いた旗を所持していただけの男性が同法違反容疑で逮捕された。
これでは、立法会選挙に向け、民主派候補らが「どんな訴えや公約が違法になるか不安だ」と漏らすのは、当たり前である。
昨年の逃亡犯条例反対デモは時に香港警察が抑制できない激しさになっていた。とはいえ、国際的に強い批判を浴びた天安門事件のような直接武力鎮圧を避けたいのが中国の本音でもあろう。
中国政府は「(国安法)立法は純粋に国内問題だ」と強調した。これは、中国の治安体制に香港を「合法的に」編入したのだから、かりに民主化を弾圧しても外国は口だし無用との主張だろう。だが、それは「一国二制度」を踏みにじるものだ。法の解釈や運用も中国の胸三寸とあっては、とても「法治」とは呼べない。
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