モモンガ冒険譚!!   作:ブンブーン

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オリジナルのアイテムや設定が出てくるので苦手な方は回れ右をどうぞ。


第2話 モモンガの拠点作成

「ここを拠点地とする。」

 

 

陽の光が薄らと空を照す明朝、モモンガは整列するアンデッド達の前に立っていた。

 

 

「今から拠点作成を開始する。各班、割り当てられた役割をキッチリとこなすように。」

 

 

表情は無いがその口調から意気揚々と宣言するモモンガの言葉にアンデッド達は静かに頷き返した。

 

あの後、モモンガは洞窟へ戻ると死んだトロールやオーガ達、更には彼らに喰われ犠牲となった骨だけの死体を使って夜通し『アンデッド作成』のスキルを使いアンデッド化させていた。理由は勿論、ここを拠点とする為の整備作業を手伝わせる為である。

 

 

ウォートロール・ゾンビが1体。

トロール・ゾンビが10体。

オーガ・ゾンビが10体。

 

スケルトンが30体。

死者の大魔法使い(エルダーリッチ)が10体。

死の騎士(デス・ナイト)が5体。

 

 

後は周囲の警戒役として死霊(レイス)骨のハゲワシ(ボーン・ヴァルチャー)を計10体を配置。加えて探知・索敵魔法も展開していく。

 

 

「理想的な拠点を作るぞー!えいえい、おー!」

 

 

モモンガが拳を空へ突き出しながら掛け声を掛ける。アンデッド達も「オォォォ…!」と不気味な声を上げながら創造主であるモモンガの動きに合わせて拳を突き上げる。因みにスケルトンは声が出ない代わりカタカタと顎骨を鳴らしていた。

 

主な班分けとして洞窟内と洞窟周辺の2班に分けられた。洞窟内はエルダーリッチとスケルトン15 体。外をゾンビ達とスケルトン15体にデスナイト5体で行う。

 

デスナイトには周辺の木々や草花を刈るよう指示を送り、ゾンビとスケルトン達が刈られた木々を片付ける流れとなっている。創ったアンデッドは創造主であるモモンガの命令に忠実である事は判明しているが、それが事細かな命令でも可能なのか不可能なのか?そして、想定外が起きても応用は出来るのか…それを確認する上で今回の作業は重要と言える。

 

 

「防御に特化したデスナイトにこんな命令は贅沢な気もするが、だからこそ与えられた命令がどこまで遂行可能なのかを確認する必要はある。」

 

 

特に戦闘に関してはユグドラシルとの違いを確認しておかなければ、いざと言う時に使い勝手を間違っては元も子もない。モモンガの中では使役アンデッドの性能確認は最優先事項の一つとなっている。

 

デスナイトはモモンガお気に入り使役アンデッドの一種でもある。身長2.3mのアンデッド騎士で右手には赤黒いオーラを纏わせたフランベルジェ、右手には体の2/3を覆うタワーシールドを持つ。黒色の全身鎧には血管のような真紅の紋様があちこちにあり、鋭いトゲが所々から突き出ている。靡かせる漆黒のマントはボロボロでその風貌に良く合っている。顔の部分が開いた兜は悪魔の角を生やし、顔は腐り落ちかけた人間の顔で、ポッカリと空いた眼窩の中に生者への憎しみと殺意、殺戮への期待が焔々と赤く灯っている。

 

レベルは35だが戦士系としての実力は25レベル程度と大した強さでないが、防御だけで言えば40レベル相当に匹敵する。それでもモモンガの様なカンストプレイヤーからすれば雑魚も同然。では何故モモンガのお気に入りなのか?それは、デスナイトには『どんな攻撃でもHP1で耐える事が出来る』と言う特殊技術(スキル)を有しているからである。他にも召喚者のヘイトを肩代わりして相手を引き付ける囮役の能力と、数に限りはあるが殺した相手と同レベルのアンデッド…『従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)』を生む。

 

要約すると盾役として非常に優れている。

 

 

(さて、頼むぞ〜デスナイト!)

 

 

モモンガは《飛行(フライ)》で浮かびながらデスナイト達の作業を空から見守る。内心ドキドキしていたが、その不安は杞憂に終わった。

 

 

ズバッ!ズバババッ!!

 

 

デスナイトは見事な剣技でそれなりの太さのある木々をまるで小枝の様に次々と切り倒していた。

 

 

(おぉ〜!良いんじゃないか!)

 

 

木を切り倒す…この命令は問題なくこなせている。一方、トロールゾンビ達やスケルトン達も切り倒された木々を次々と運び指定した丸太置き場へと運び積み上げて行く。

 

少なくともこれで使役アンデッドは単純な命令であれば問題なく行える事が改めて分かった。

 

問題は次だ。

スケルトンやゾンビ達にはある命令を下している。

 

 

(指定した長さの丸太はAの、それ以外の丸太はBの丸太置き場へ運ぶ…これはどうだ?)

 

 

結論から言うとこれも問題は無かった。

ゾンビやスケルトンも流れ作業の様にきちんと指定した場所へ運んでいた。これも大きな収穫だ。少なくともある程度の違いや差異は認識出来ると言う事だ。これで多少大雑把な命令も与える事が出来るだろう。

 

次はデスナイトだ。

斬り倒す木々は洞窟を中心とした半径約100mまでという指示を出していたがこれはどうだろうか。

 

此方も結果から言うと問題無しだった。

100mまで木を切り倒しながら進むとそこでピタリと作業を止めた。どうやって100mを測っているのかは不明だがこれも嬉しい収穫だ。

 

そしてもう一つ分かったことは木を切り倒す作業を終えたデスナイトはその場から動くことは無かった事だ。周りには未だ切り倒した木々や草花を片付けるゾンビやトロール達が作業を続けていたが、それには目もくれずにただ黙って佇むだけだった。

 

 

(ふむ、与えられた命令以外は実行しないのか。応用が効かないと言えば悪いが、命令に忠実と言えば聞こえはいい。)

 

 

逆に言えば命令さえ有ればその通りに実行し続ける事が出来る。モモンガは今回の出来事や分かった事を頭の中でメモを取った。

 

 

「思ったより早かったなぁ〜。よし、じゃあ次だ!」

 

 

モモンガは『下位アンデッド作成』を発動させた。

 

 

「『骸骨の森祭司(スケルトン・ドルイド)』。」

 

 

ドルイドの能力を持つスケルトン系のアンデッド。レベルは20。アンデッドでドルイドの能力を持つモンスターの種類は多くない為、地味に貴重な存在と言える。外見は古びたローブを纏った骸骨でその骨の体に幾つもの蔓が絡み付いている。その骨の手に持つ木の杖は先端が瘤でボコボコしている。

 

召喚したのは3体。スケルトン・ドルイド達は召喚者の前で地面に膝を付けて恭しく首を垂れている。既に地面へ降りていたモモンガは3体に命令を下す。

 

 

「刈った後の大地を整え、芝生を敷くのだ。」

 

 

スケルトン・ドルイド達はコクリと頷く。返事が無い…というよりも出来ないのだが少し不安になったモモンガは「本当に大丈夫?出来る?」と問い掛けるが、スケルトン・ドルイド達はコクコクと頷くだけだった。

 

じゃあ大丈夫かと作業に取り掛かる様指示を送ろうとするが、思い出した様にモモンガはもう一つ命令を下す。

 

 

「それからあの洞窟の入り口の形を変える事は…可能、か?」

 

 

不安げに聞くがスケルトン・ドルイド達は自身ありげに頷く。「本当に大丈夫?出来る?」と問い掛けるが、力強く頷いた。

 

 

「こ、こういう感じできるか?」

 

 

モモンガは棒切れを使い地面に描いた。スケルトン・ドルイド達は揃ってその地面に描かれた絵に顔を覗かせる。絵を完成させるとモモンガは目で「分かる?出来る?」と尋ねる。3体はやる気満々で頷いた。

 

 

「じ、じゃあ……宜しく。」

 

 

スケルトン・ドルイド達は一斉に行動を開始した。尊くも偉大なる御方が望むべくモノを捧げる事が出来るよう失敗など許されない、誉高きその役目を果たすために。

 

 

(活き活きしてるなぁ〜…アンデッドだけど。)

 

 

スケルトン・ドルイドが信仰系魔法を発動させると大地がうねり始めた。地上でいまだ作業中の者達も同じ様に揺れるが特に支障も無く作業を続けている。切り倒されて残った切り株が沈み、根の張った植物は瞬く間に地面に吸収される。暫くしない内に洞窟周辺は平坦な大地へと変わった。石ころ一つ落ちていない洗練された地面にモモンガは満足に頷いた。

 

 

「おぉ…!これは凄い。」

 

 

ユグドラシルとは違うドルイドの能力を間近で見たモモンガはもっと細かな魔法の実験検証を行う必要があると思った。ユグドラシルではただのシステムと設定で実際にその魔法やスキルの効果が起きる起きない程度しか無かったのだが、この異世界では魔法やスキルは本物で使い様によっては様々な応用に活かせると実感できる。デスナイトの様に使役アンデッドも例外ではない。

 

モモンガはまた一つやる事が増えたが、気が滅入る事は一切無い。寧ろワクワクとドキドキが多い。

 

 

「次に芝生だが…うぉ!?」

 

 

モモンガは驚きのあまり《飛行》を発動させて地面から少し浮いてしまう。

 

 

整地された土のみの大地からニョキニョキと植物が生え始めたのだ。それは広範囲に拡がると瞬く間に芝生が完成した。森祭司系職業のみが使える信仰系魔法《植物の成長(プラント・グロウス)》は『植物を成長させて相手の行動を阻害し自身の森祭司の信仰系魔法の威力を10%向上』というものだ。

 

 

「こんな応用が使えるのか……いや、命令したの俺だけど。」

 

 

早く魔法の実験を行いたいが今は拠点造りと気持ちを再度切り替える。次にスケルトン・ドルイドは《大地の波(アース・ウェイブ)》を発動させて洞窟の入り口の形を変え始めた。周りの大地が波を立てる様に洞窟入り口へ次々と盛り上がり、さらに大地はうねりを上げてその形状を徐々に変えていく。

 

完成したのは小高い丘。そこに整えられた洞窟の入り口があった。丘の上にも芝生が青々と生えており、洞窟の内部まではまだ手付かずだが外見だけで見れば穴蔵形式の住居として活用出来そうだった。

 

イメージとしてはギルドメンバーの1人、ブルー・プラネットさんと一緒にシアタールームで観た映画に出てくる小人族の住処をモデルにしていた。ファンタジー映画の王道とも言えるアレは現在でも評価は高い。モモンガはどうせならファンタジーな感じが良いと思い、それをモデルにしたのだ。

 

モモンガは完成された洞窟の外見にえらく感動した。ただ地面に切り開かれた様に開いていた洞窟がここまで見事に整うとは思っても見なかった。明らかに自身の絵よりも洗練されている。

 

 

「素晴らしい!素晴らしい出来だぞ!」

 

 

喜ぶ主人の姿、そしてお褒めの言葉にスケルトン・ドルイド達は恐れ多くも感動と感激に満ち満ちていた。だが、媒体を持たない召喚モンスターは一定時間が経つと消滅する。

 

スケルトン・ドルイドは恭しく頭を下げたまま消滅した。

 

モモンガは消え行く彼らに「ありがとー」と手を振りながら見送ると、亜空間へ手を入れてそこにある無限の背負袋からあるアイテムを取り出した。

 

 

「『トレントの苗』。」

 

 

取り出したのは一見すると小さな木の苗。

それを出来上がった洞窟の丘の上へと登り、その頂上に植える。すると、苗は瞬く間に根を張り始め、立派な木へと成長した。洞窟の丘には至るところに根が張られており多少の衝撃を受けたところでビクともしないだろう。

 

 

「ほう、『長寿の魔樹(エルダー・トレント)』か。大当たりとまではいかないが外れでもないな。」

 

 

モモンガが取り出したアイテム『トレントの苗』は、森林地帯で使用すると若木(ヤング)古代(エンシャント)の盾役トレントをランダムで召喚するもので、ユグドラシルでは中盤まで偶に使っていたアイテムだ。

 

 

「エルダー・トレントならレベル60以下のモンスター程度、問題なく対処出来るだろう。他にも何重にもトラップ魔法を仕掛ければより安心、だな。」

 

 

トレントの苗を使ったのはモモンガが留守の間にその洞窟を守る為の番人を付けるためだった。最初はウォートロール・ゾンビのグを門番にしようと思っていたが、流石に30強程度のレベルでは些か不安が残る。

 

 

「そうだ。ウォートロール・ゾンビも強化しないとな。あんな装備とも言えない代物ばかりじゃあ……折角のコレクションだ。アレを一式装備させてみるか。」

 

 

モモンガは無限の背負袋に手を伸ばすが、まだ洞窟内部が途中であった事を思い出し、その手を引っ込める。

 

 

「お前達は周囲を警戒しつつ、丸太を使って3つほど小屋を作るのだ。」

 

 

デスナイト達は頷くと早速作業に取り掛かり、モモンガは洞窟の中へと足を運んた。

 

 

 

 

ーーーーーーー

洞窟の中は既に作業に取り掛かっていた死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)らの魔法によって、酷い腐敗臭は殆ど気にならなくなっていた。

 

エルダー・リッチは第二位階魔法『風波(ウィンドウ)』による換気と各1体に持たせていた、お香型のマジックアイテムにより嫌な臭いを消していたのだ。スケルトン達はせっせとガラクタや瓦礫を洞窟入り口付近へ運んでいく。

 

 

「おぉ〜、臭いが消えるだけでこんなにも快適な空間になるのか。」

 

 

エルダー・リッチ達の働きを素直に褒めたモモンガはかつてのユグドラシル時代を思い出しながら洞窟内部を改めて眺めた。

 

 

(アインズ・ウール・ゴウンが出来るもっと前、ナインズ・オウン・ゴール時代だったなぁ〜……まだ俺はエルダー・リッチにすらなってない骸骨の魔法使い(スケルトン・メイジ)で、他のメンバーもレベルも経験も低くて、種族も弱かった。唯一突出して高かったのが『たっち』さんだったな。)

 

 

『たっち』とは、モモンガがユグドラシル初心者時代…異形種狩りプレイヤーに狩られている所を助けてくれた白銀の全身鎧を纏った聖騎士のプレイヤー。プレイヤーネームは『たっち・みー』。当時はまだ『ワールドチャンピオン』の称号を持つ前だった。まさに正義が鎧を着た様な人で、『困っている人が居たら、助けるのが当たり前』を信条としている。

 

そんな強くて、真っ直ぐで、眩しい人に強い恩義で憧れを抱いたモモンガは彼と行動を共にする事になる。その後も、同じく異形種狩りにあっていた異形種プレイヤーを助けては仲間に引き入れていった結果……クラン:ナインズ・オウン・ゴールが出来上がった。

 

 

(あの頃はまだ皆、たっちさんに頼りっきりで何とか強くなろうと努力しても直ぐに異形種狩りプレイヤーに見つかって襲われるから、なかなかそれも出来なくて……それでも皆で協力し合って…死に物狂いで頑張った結果………アレが手に入ったんだよな。)

 

 

モモンガが言うアレとは、クラン時代に皆で最初に手に入れた世界級(ワールド)アイテム。

 

 

「『支えし神(アトラス)』……あの時は本当に嬉しかったなぁ。」

 

 

世界級アイテムはユグドラシルに存在する全アイテムの中でも頂点に位置するアイテム群で、総数約200種類。一つ一つがゲームバランスを崩壊させかねない様な馬鹿げた効果を持つ。このアイテムの効果に争う術は通常方法では存在しない。同じ世界級のアイテムを所持又は装備しているか、ワールド系統の職業を修めた極めし者達のみが使える特別なスキルを絶妙なタイミングで発動させることでしか防ぐ術はない。

 

『支えし神』の入手難易度は世界級の割に特別高いわけではなかったが、強ければ手に入るモノでもない。ただ『運』が良かったのだとあの時は思った。

 

 

(初めての世界級アイテム。本当に、本当に嬉しかったなぁ。興奮冷めやらない状態で夜通し語り合ったっけ……4時起きだったけど。)

 

 

その後、ナインズ・オウン・ゴールは世界級アイテム入手を記念して拠点を作ろうという話になった。拠点に選んだ場所は中級エリアにある『魔窟』という洞窟型ダンジョンだ。攻略適性レベルは65だが、たっちがいれば怖いものはなかった。ダンジョンボス討伐も難無く終えて、そこを拠点とした。クリア特典とかは中級エリアなので出なかったのが少し残念だったが、初めての拠点に凄く盛り上がった。

 

ここから自分たちの伝説を作ろう、とー

 

事実、後に伝説となるのだが、この拠点は長くは続かなかった。

 

 

(アレは今思い出しても苦い思い出だな。)

 

 

それは上位ギルドが自分たちの拠点に侵攻して来たのだ。自分たちは必死に対抗したが、相手はカンストレベルのプレイヤーで数も多い。唯一、たっちさんは善戦していたが、数の暴力に敵わず敗北してしまった。結果として拠点にあった資材財宝は勿論、初めて手に入れた思い出の世界級アイテム『支えし神』も奪われてしまった。

 

後に分かった事だが襲撃してきたギルドは、ユグドラシルのランキングで30位以内に入る当時はイケイケのギルドで『異形種狩りを是とする』…自分たち異形種からすれば最悪のギルドだった。

 

ちょっとした異形種の拠点を見つけては襲撃する事を楽しむ連中に、皆が歯噛みしたものだ。たっちさん自身、拠点や皆を守りきれなかった事に酷くショックを受けていた。

 

自分たちはたっちさんの強さに甘えていたのだ。

その日以降、二度とたっちさんの足を引っ張らないように皆で必死に強くなろうと努力したものだ。自分は元よりロールプレイ重視構成である為に純戦闘構成のプレイヤーと比べると戦闘では一歩劣る。が、それでも培ってきた経験と技術は相当なモノで戦闘向けプレイヤーにも劣らないと自負している。

 

仲間も増え、装備を整え……そして、挑んだ『ナザリック地下大墳墓』。9つの世界を持つユグドラシル、その内の一つである『ヘルヘイム』において最高難易度のダンジョン。一瞬たりとも油断出来ない無慈悲な強さを持つボスモンスター達に加え、時間制限付きという鬼畜っぷりは皆で絶叫したほどだ。それでも皆で協力し合いながら一つ一つの階層を突破、そしてーー

 

 

(ナザリック地下大墳墓初見攻略…!あの時の感動はまさに人生の最絶頂だった。そして、出来上がったのが…『ギルド:アインズ・ウール・ゴウン』。)

 

 

後にユグドラシル十大ギルド拠点の一つとして数えられ、ギルドランキングも全盛期で第9位という結果を残している。異形種のみで構成された唯一のギルドで、その強さ、悪逆非道なやり方から最悪のDQNギルドの異名で恐れられていた。

 

 

(色んな人達からも恨まれてて、俺なんかギルド長故に魔王ロールも結構やってたからユグドラシル非公式の真の裏ラスボスって呼ばれててたなぁ。)

 

 

かつてのような弱者ではなく強者となったモモンガ達は御礼参りとして、弱かった頃に何度も襲ってきた人間種ギルドやそのプレイヤーが所属するギルドへの襲撃を仕掛けたのだ。

 

まず先に狙ったギルドは例の…『支えし神』を奪ったギルドだ。あのギルドは現在、当時の栄光など見る影もない程に弱体化していた。ランキングも圏外で、ギルドメンバーも最大100人いたのが今では10人しかいない。だが、その10人の中に当時のたっちさんを打ち破った……例の襲撃班のリーダー格はいた。

 

そうと分かればいざ襲撃。

 

ナザリックには及ばないが上位難易度の要塞型ダンジョンを拠点とするだけあってその罠の数は尋常ではない……筈だった。

 

襲撃したらあら不思議。

罠が殆ど作動しない。それどころか60レベル以下にしか効果の無い、下級〜中級トラップばかりである。裏攻略サイトでは厄介と言われていた100レベルのNPC達の存在も確認出来ない。

 

拍子抜け過ぎて逆にこれこそが罠と考えてしまった。

 

あっという間に最奥まで辿り着くと玉座の上に立て掛けられていた、モーニングスターを模ったこのギルドのギルド武器があった。肝心のプレイヤー達はそのギルド武器を守るように亀甲陣形の様に固まっていた。その姿はあまりにも情けなく、かつての威厳は微塵も感じられなかった。

 

それでも容赦無くモモンガ達は復讐を果たした。

 

リーダー格にキッチリと落とし前を付けた後、ギルド武器を破壊。それによりギルドは完全に崩壊した。

 

御礼参りも無事に済んだ事で皆が歓喜に沸いたが、あの弱体化ぶりはあまりにも妙だった。あの時からまだ1年程度しか経ってない間に何が起きたのか。気になったモモンガは別ギルドにいた同じ異形種プレイヤーから話を聞くことに成功した。

 

 

「近いうちにどっかのギルドがトドメ刺すんじゃないかと思ってたけど、君達がやったのか。ハハハ!いい気味だぜ、アイツら!あ、ゴメンゴメン。あのギルドは、1年前までは飛ぶ鳥落とす勢いで力を増してて、10位以内に入るのも時間の問題じゃないかって言われてたけど……調子に乗ってたんだな。ランキング5位の最上位ギルドの1つに喧嘩吹っかけたんだ。ほら、その5位のギルドって異形種も何人かいたじゃん?その結果、見事に返り討ちにあった挙句、持っていた財宝や希少アイテム…世界級アイテムも全部も奪われたらしい。そこへ畳み掛けるようにあのギルドに恨みを持つ他のギルドが徒党を組んで一斉に襲い掛かってきたんだ。単なる復讐ってやつさ。」

 

 

それからも何度も何度も襲撃を受けて、メンバーも減って、ランキングも大幅に落として……漸く、拠点再生の目処が立つ位の資材が集まったって頃に…

 

 

「俺たちが来たってわけですか。」

 

「そういうこと。確かー…『支えし神』だっけ?それも戦利品に持っていった5位ギルドも別の最上位ギルドとの戦闘で幾つか世界級を奪われたって聞いたよ。今はどこにあるんだろうな。」

 

「本当…そうですね。ありがとうございました、色々。」

 

「いやいや、こっちこそアイツらをコテンパンにしてくれてスカッとしたよ。」

 

 

結局『支えし神』は見つかる事はなかった。

それでも新しい世界級アイテムを次々と見つけて、手に入れて、1500人の討伐隊を撃退して、ユグドラシル全体で伝説にまでなって……

 

 

「本当に…誇らしかったなぁ…。」

 

 

でも年月が経つにつれてユグドラシルも過疎化が進み、1人…また1人と引退して行った。そして、気が付けばー

 

 

「ええい!!こんな暗いことばかり考えるからダメなんだ!!」

 

 

モモンガは首を振りながら陰鬱な考えを振り払った。アンデッドの精神抑制もこの時は一定内なのか起こらない。実に腹立たしい。こういう時こそ抑制して欲しいというのに。

 

何か気を紛らわせるにしても洞窟掃除は使役アンデッドで事足りている。でも何もしないでいるとまた余計な事を考えてしまいそうになる。

 

無限の背負袋から、あるアイテムを取り出した。

 

『掃除婦の箒』と呼ばれるギャグアイテム。

掃いた箇所から半径2m以内に《清掃(クリーン)》と同じ効果が自動で発動する。更にこれは『杖』に分類される。勢いよく振るうと《衝撃波(ショック・ウェーブ)》の追加効果が発生するアイテムだ。

 

 

「よし!俺も掃除するぞ!…む?なんだお前ら?」

 

 

その言葉を聞いた使役アンデッド達はギョッとした。このような役割は自分たち下僕の役目であって、偉大なる創造主がやるべき仕事ではないと思ったからだ。スケルトンとエルダー・リッチ達はアワアワと慌てながらモモンガを静止しようとする。

 

 

「なーに、大丈夫だ!こうだろ?」

 

 

モモンガは箒をザッと掃いた…つもりだった。

 

 

ビュオォォォ!!!

 

 

「あ。」

 

 

箒で地面を掃いた瞬間、《衝撃波》が発動した。纏められていたゴミ類が勢いよく四散する。洞窟内は再びゴミだらけ…いや、最初よりも少し悲惨な汚れ具合になってしまった。

 

「ごめんなさい」と土下座するモモンガに「お、オ顔をお上ゲくだサイ!」と必死に懇願するアンデッド達(スケルトンは喋れないから顎骨を鳴らすだけ)は、偉大なる創造主の頭をこれ以上下げさせてはならないと思いながらも無理やり頭を起こすのは不敬に当たるのでは?という葛藤故に大いに慌てふためく事となった。




ワールドを冠する称号って、チャンピオン、ディザスターの他にもあるのでしょうか?

ギルド:ワールド・サーチャーズは単なるギルド名なのか、それともユグドラシルの世界を狭めた探究者として運営が贈った群で1つの称号なのか。

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