朝鮮日報

【社説】政権を批判して対抗すると起訴、有罪、逮捕、免職、許可取り消しされる国

 韓国統一部が北朝鮮に対するビラまきを主導してきた脱北者団体に対する設立許可を取り消したことについて、国際社会から非難が相次いでいる。米国の北朝鮮人権委員会事務総長は「災いのような決定だ」とし、「韓国はこれまでのような民主国家なのか」と問い掛けた。北朝鮮自由連合のスザンヌ・ショルテ代表は「文在寅(ムン・ジェイン)大統領が南北の住民よりも北朝鮮の金(キム)氏の独裁政権のことを心配しているもう一つの事例だ」とし、「韓国の自由民主主義を徐々に崩壊させている」と指摘した。米国務省が北朝鮮の人権と知る権利を強調し、「北朝鮮への情報流入を拡大する」と表明したことも韓国政府の措置に対する批判的な遺憾表明と受け止められる。両団体はそれぞれ16年、4年にわたり北朝鮮にビラを飛ばしてきたが、北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長が先月、「ごみどもを掃除しろ」といらだちを見せると、韓国政府はそれまでの立場を覆し、許可取り消し措置を取った。今回の出来事は東洋大総長がチョ・グク前法務部長官の不正を暴露した後、教育部が総長を免職させ、故人である父親の理事長就任までさかのぼって承認を取り消させたことを思い起こさせる。

 政権の逆鱗に触れ、公権力による攻撃を受けた例はそれだけではない。国会を訪れた大統領に向かって靴を投げて抗議した北朝鮮人権団体の代表は公務執行妨害および建造物侵入の疑いで逮捕状が請求された。それが身柄を拘束するだけの行為だろうか。それに先立ち、大学キャンパスに大統領を風刺する壁新聞を張った20代青年も建造物侵入の罪で有罪判決を受けた。大統領の側近を捜査していた検察指揮部は人事異動から1年もたっていないポストから丸ごと飛ばされ、そのうち見せしめ扱いされた1人は文在寅支持層が展開した作戦に巻き込まれ、司法処理の危機に追い込まれている。与党は5・18民主化運動(光州事件)に対し、虚偽事実を流布すれば刑務所送りにする特別法の制定を目指している。人生を台無しにしたくなければ黙っていろという脅迫だ。

 大韓民国は今や大統領を批判したり、政権ににらまれることをしたりすると、許可や承認の取り消しといった行政措置で生存権を脅かされるだけでなく、刑務所送りになることを心配しなければならない国へと変貌しつつある。韓国は民主主義国家なのかという疑問が浮かばざるを得ない。こんな事態を招いた大統領は「我が国の民主主義はさらに大きく、さらに強固に成長している。他人をうらやむ必要がないほど成熟した」と話している。

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連ニュース
あわせて読みたい