春休み。東京の大学に通う
千代の実家は、新潟県の五泉市で古くから日本酒を造っている酒蔵「
だが家に帰ると、杜氏である父親は、飲んだくれて机に突っ伏したまま目を覚まさない。
どうやら父親は酒造りをおろそかにしていたためか、
蔵で祭られていた「酒造りの神」から怒りを買い、呪いを受けたのではないかとのこと。
そこに現れた、もう一人の酒造りの神。
「千代。父親にかわり、おぬしが杜氏となり最高の酒を造るのじゃ
呪いをかけた酒造りの神をギャフンといわせてやれ!」
父親を救い、崖っぷちの酒蔵を守るため、千代は戸惑いながらも
地元の神社で祭られている米の神、水の神、天狗をも巻き込みながら、
神様たちと、新潟の自然の力を存分に生かした、最高の酒造りを進めていく。
新潟の個人クリエイター・晋太郎が、かつて地元の酒蔵で酒造りに携わっていた頃の体験をもとに
2020年より創作・オンライン配信している、酒蔵と酒造りをテーマにしたコミックです。
第二話 米の神様がきた
「酒造りはチームワーク。まずは米に詳しい仲間を探すぞ!」
ちきさまの提案で、千代は近所の稲荷神社にいる、豊穣の神、ウカノミタマノカミ(うかさま)に協力を求める。
だが、うかさまは悲しそうに告げる。例年の異常気象、温暖化の影響で、去年の秋は米も不作だったこと。さらに、今世間で恐れられている未知ウィルス… このままじゃ、ふるさとの自然も、これまでの生活も壊れていってしまう…。
「米の質が悪いのに、いい酒なんでできっこない。」
落胆する千代。そんな中ちきさまは、「不作の年に腐造なし」という、酒造りに古くから伝わる言葉を教える―。
本作で本当に描きたかったこと。それは「日本酒、酒造り」だけじゃなく、「どう生きていくのか」。
ひとりぼっちの「寂しさ」と、どう向き合う?
大人になるにつれ、なんとなく「寂しい」と思うことはありませんか。何をして、どう生きていくのか。でも、眼の前のやるべきことに本気でとりくめば、新しい人とのつながりは生まれてくるのです。
「何かを始める」ことで生まれる、人とのつながり
崖っぷちの家業と父親を救うため、いやいやながら頭を抱えながら、千代は故郷の町で酒造りのため動きはじめる。仲間を探し、酒造りの水を探し…失敗して苦悩して。そんな中千代は、少しずつこの町の人とのつながりも生まれ始めていることに気付く。
コロナ禍で確信した、「不自然なことをしない」生き方
米、水、微生物。酒蔵は、自然のありがたさを実感できる場所。自然を壊してはいけないと、心から思える場所。人間活動による環境破壊と温暖化が、多くの問題を引き起こしている今、酒蔵という場所を通じ、自然と寄りそった生き方について考えてみませんか。